情痴小説の研究 (ちくま文庫)

  • 筑摩書房 (2001年10月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784480036674

感想・レビュー・書評

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  • 2001年(底本1997年)刊行。明治時代からの情痴小説(主として初老の男性が、これも主として若い女性、多くは玄人に対して、邪な愛を持ちつつ、それに狂い、あるいは悶々とする様子を描く小説)を解読するもの。著者の些かの上から目線、情痴小説を教訓化しようとする点に辟易。個人的には小説を教訓として読む態度は持ち合わせていない。むしろ、解説にある、恋愛の不自由さ、タブーがなくなりつつある現代においては、恋愛に狂うことが少なく、情痴小説の核が成り立たなくなっている、という説明が一番腑に落ちた。

  • 「情痴小説」とは、分別あるべき中年から初老にかけての男が色香に迷って理性を失う物語を扱った小説のことです。本書は、徳田秋声から渡辺淳一まで33人に及ぶ「情痴小説」の系譜をたどり、そこに描かれた男たちの「ダメ男」っぷりを明らかにしています。

    なお「解説」を担当している清水良典は、田山花袋、徳田秋声、近松秋江など明治・大正時代の情痴小説に比べると、現代の渡辺淳一に近づくほど、「小説の力が薄れ退屈になっていく感が強い」と述べていますが、どうもありきたりな指摘のような気がします。立原正秋や渡辺淳一が、明治・大正時代の作家たちとスケールの大きさに違いがあるというのは、いまさら指摘されるまでもないことで、むしろ近代日本文学の幹を形成している私小説を、現代の渡辺淳一まで至る「情痴小説」という系譜のもとで見なおす視座を設定したところに、本書のおもしろさがあるように思うのですが。

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著者プロフィール

1946年生まれ。東京都出身。明治大学文学部卒。エッセイスト、文芸評論家、編集者。本名:目黒考二(めぐろ こうじ)。ジャンルごとに異なるペンネームを使用。私小説の目黒考二、ミステリー文学評論家の北上次郎、競馬評論家の藤代三郎(ふじしろ さぶろう)など。2000年まで「本の雑誌」の発行人を務める。 2011年「椎名誠 旅する文学館」の初代名誉館長に就任。主な著書に『書評稼業四十年』『冒険小説論』『息子たちよ』『余計者の系譜』『エンターテインメント作家ファイル108 国内編』『感情の法則』『記憶の放物線』などがある。

「2021年 『阿佐田哲也はこう読め!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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