老人力 全一冊 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.40
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本棚登録 : 369
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480036711

作品紹介・あらすじ

老人力とは何か?物忘れ、繰り言、ため息等、従来ぼけ、ヨイヨイ、耄碌として忌避されてきた現象に潜むとされる未知の力。20世紀末に発見され、日本中に賞賛と感動と勘違いを巻きおこし、国民を脱力させた恐るべき力。あの笑えて深い名著が正続2冊あわせて文庫に。

感想・レビュー・書評

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  • 赤瀬川さん、今回も救ってくれてありがとうございます。心の軽くなる一冊でした。

    老人力とはいわゆるボケのことだが、彼曰くこのボケで物忘れをすることでなにか新しい情報が入りやすくなったり、変に嫌なことを覚えてなくてよかったり、また身体がちゃんと動かないことでの力が少し抜けるとか、自分のミスで予定したことに空洞ができることでその空間に余裕ができたりと、見方次第で物事を面白おかしくポジティブに捉えている。

    またライカや侘び寂びも老人力の部類だとすると急に愛着の湧く存在になるからいい。

    老人力を余裕を生み出す良さがあり、ときには切なくも愛おしくも感じる力でもある。

    書籍の最後に関係者へのお礼を述べている中で三度の飯は妻と書いてある、あの書き方は最高。文章内では家の人などと書いているのに、さらっと入れる愛を感じるラブレターの書き方ベスト1である。

    流石、路上観察記録をずっと続けていらっしゃる方である。東海道五十三次を歩いてみて、面白看板を見つけて講演会までするなんて、いい趣味だなぁ。憧れる生き方だなと思う。

  • タイトルで手に取ってしまった。
    駐輪禁止の立札の前に止めるたくさんの子供連れを見て、
    正直、日本に未来はないなと思っている。
    老後に関しては不安しかなく、早く老衰したいとさえ思ってしまうようになった。
    赤瀬川源平という名前は知っていたけど、
    現代芸術なるものが好みに合わないので素通りしていた。
    でも、誘いに負けてしまった。

    老人力とは、人生の酸いも甘いも噛み分けた後の
    ゆるゆるでいいではないか、と楽しめる心境で、
    まだまだ若い者には負けんぞという、年寄りの冷水的な頑張りでは
    ないらしい。

    そういったことを、中古カメラに例えたりして、
    繰り返し語っているが、途中からもう話題が尽きた感が否めないのが残念。

    老人力の講演会は、ご年配の方が多かった様だけど、
    読んだ感想としては、定年前の50代(ラッキーな人)、60代の方が読んでみて、
    きたるべき定年後ライフを楽しみにするのが良いかも。

  • 「物忘れはをするのは力だ」というところから始まった「老人力」について、様々なテーマごとに老人力にまつわるエピソードを綴る。

    寡聞にして知らなかったのだが、1990年代の終わり頃に「老人力」ブームが有ったそうな。発症者は著者の赤瀬川原平、発見者が南伸坊。おう、よく読んでた人らじゃないか。というのも、「トマソン」をはじめとした、路上観察学会であり、街角考現学のメンツである。両方当然読んだ。ただ、何かって言うとジョーダンに持っていきがちな南伸坊に比べ、赤瀬川原平は、弾けているか内にこもっているかの両極端で、こもるタイプは苦手だったのだな。

    本作は、割と軽く綴られているし、なんでそういう方向に進むかなという部分もあるので、割と読みやすい。途中で「路上観察」らしい、一言を添えた写真が入っているのも、読みやすさに良い意味で効いている。

    老人力と関係ないが、夜眠れない話などは、私小説を書く際の参考になる。長らく寝かせていたが、こういうタイミングで読んだのは良かったと思う。

    でもまあ、カメラの話はちょっとやりすぎかな。コンピューター、インターネット、デジタルを、必要以上に嫌うスタイルは、あまり好きではないな。そういう世代の人なのだと言われたらそうなんだけど。

    「『老人力』の言葉の乱れ」という項が、メタ視点で非常に良い。これはちくま文庫版にしか含まれないのだろうし、そこは単行本よりも絶対に良い。

  • 2018年11月18日、読み始め。
    2018年11月24日、91頁まで読んだ。

  • 何かを忘れるということはマイナスの作用でしかないのか。
    自分の嫌なことがあって、その嫌なことが頭から離れないのなら、それは忘れたほうがプラスになる。
    老人力は力を抜くエネルギーの事だという。
    自力だと一向に自分に力がいってしまう。しかし、他力をつかうと他の人にエネルギーが循環する。昨今では誰も信用できない世界になりつつあるから、この考え方は誰かを信用するための力なのかもしれない。
    頭が固いと身体も自然と固くなる。固さは丁度よく保っていなければならないのだが、固すぎる。その調度よさをこの本はしめしてくれているのかもしれない。
    頭の柔らかい、老人がゆったりとしているような文体で、その力を解明してくれる一冊。

  • 老人力とはいいものだ。素朴で、カラッとしたポジティブさがある。「老い」という不可避なものを前に、抗うでも自虐するでもなく、受け入れ培っていってしまう。一番いいなと思ったのは「老人力」という言葉が免罪符になって失敗をしても、自分を責めるでなく仲間と一緒に笑い飛ばせてしまうこと。老いを原因とする失敗に限らず、いつもきっちり正しくやれることなんてまずない。責任逃れの意ではなく、そういうこともあるよね!って寛容になれて許しあえる「老人力」のような言葉が、老若男女問わず使える単語としてほしいと思った。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/763890

  •  
    ── 赤瀬川 原平《老人力 20010901 ちくま文庫》全一冊
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4480036717
     
    ── 赤瀬川 原平《老人力 19980901 筑摩書房》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4480816062
     
    (20201129)
     

  • 最初の1/4くらいは、すごく面白いんだけど、だんだん失速してきて、最後の方は老人力関係ない単なるエッセイになってしまった。
    老人力っていう発想自体面白くて、人生で初めて老人力付けたいって思ってしまった。

    老人力のエピソードとして、
    分裂病の人が診察を受けてて、最初はたいそう暴れたけど、話を聞いてたはずの先生が寝ちゃって、諦めて入院を決めた話が面白かった。老人力すごすぎ。

  • 2002.9.5~ 11 読了

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著者プロフィール

赤瀬川原平(あかせがわ・げんぺい)
1937年横浜生まれ。画家。作家。路上観察学会会員。武蔵野美術学校中退。前衛芸術家、千円札事件被告、イラストレーターなどを経て、1981年『父が消えた』(尾辻(★正字)克彦の筆名で発表)で第84回芥川賞を受賞。著書に『自分の謎(★正字)』『四角形の歴史』『新解さんの謎(★謎)』『超芸術トマソン』『ゼロ発信』『老人力』『赤瀬川原平の日本美術観察隊』『名画読本〈日本画編〉どう味わうか』。また、山下裕二氏との共著に『日本美術応援団』『日本美術観光団』『京都、オトナの修学旅行』などがある。2014年逝去。

「2022年 『ふしぎなお金』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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