- Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480036933
感想・レビュー・書評
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あちこちに書いたエッセイを集めたものなので、本全体としては、繰り返しが多かったりとややだるいのだけど、翻訳者としての心構えを書いた(訳者は役者のフレーズの出てくる)第一部は、何度読んでも背筋がしゃんとする。左開きの実践編は、偉大な先輩の芸談を伺うにも似て、これまたひとつの道標のような。
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SF、ミステリーを中心に翻訳家として活躍する著者が、仕事のこと、
読書の楽しみ、日常生活について等を綴ったエッセイである。
翻訳小説を読み漁っていたのは10代後半から20代前半にかけて
だった。近年は小説自体に食指が動かなくなったので、年に
数冊読めばいい方か。
そんな翻訳小説時代でも本書で頻繁に取り上げられているクィーンや
クリスティ、ドイルというミステリーの王道(?)は読まなかった。
著者は『アンネの日記』の完全版も翻訳しているのだが、生憎と私は
この作品も読んでいない。アンネ・フランクについては子供向けに
書かれた本を、小学生の頃に読んだくらいだ。
なので、各作品について書かれた個所は分からぬことが多かった。
取り上げられている作者のファンであったなら、もう少し面白く
読めたかも知れぬ。
亡き山本夏彦翁が岩波文庫収録の翻訳小説に関して、外国語は知って
いるが日本語を知らぬ者が訳しているから難解になるのだと語って
いた。本書でも著者が似たようなことを語っている。
近年はノンフィクションやルポルタージュばかりを読んでいるのだが、
確かに日本語の破綻した翻訳書に出会うことが多い。翻訳には外国語の
素養だけではなく、日本語の文章力も必要だと実感するね。
でも、本書の著者のように日本語の知識が十分にあっても難解な漢字を
多用するのもどうかと思うけどね。 -
スティーブン・キングをはじめとして200冊以上の洋書を訳してきた著者が語る、翻訳者としての本音と翻訳業界の舞台裏。
本来なら”原文”という名の主人に仕える召使い、”作者”という名の主役の脇に控える黒子でしかない翻訳者を敢えて
「訳者は役者」
と豪語し、原文の文字と行間の狭間でもがき、苦しみ、そして舞台(=訳書)では観客(=読者)を魅了してみせる強さと誇りがありありと綴られています。
翻訳の世界を志す人ならもちろん、何気なく訳書を読み流していただけの人にも是非、おすすめしたい一冊です。