味覚日乗 (ちくま文庫 た 40-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 189
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480037206

作品紹介・あらすじ

手を変え品を変えるのが料理ではない。季節の材料を選び、日々とどこおりなく、心をこめて作ることの大切さ。そして年中行事を商売の色にそめず、年ごと同じものを作りつづけることが、人の心に与えるやさしさ。春夏秋冬、季節ごとの恵み香り立つ料理随筆。現代に蔓延する「面倒くさい病」を防ぎ、日々のあたりまえの食事を手で生み出す呼吸を格調ある文章で綴る。

感想・レビュー・書評

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  • この本の中に紹介されている暮らし方は美しく真っ当だ。
    ただ、この本が上梓された頃よりなお、今の方が日常に
    これを手本と出来ることが減ってきて、読んで切歯扼腕。

    これを現在でも保てるとおっしゃるなら、それは相当
    恵まれていらして、料理研究家でも何でもない私達には
    手がとどかないことも多い。

    しかし、それでもまだ、ここ二書かれていることを
    出来る範囲でいいから実行することは出来る気がする。

    根気がいる?大変そう?難しい?
    そうだ。確かに私もそう思うけれど。

    季節への心配りや日々の食事への意識の持ち方。
    言葉遣いや身仕舞いは…今一度確かめていい。

    それに、こんなにも手間暇はかけられないというなら
    せめて母の、祖母のしてくれたことをこの本に沿って
    思い返して見たらどうだろう。

    案外共通点も多かったのは私だけかしら。
    身近な女達が自分にしてくれたことと考えれば
    その部分だけでも自分が振り返って実行したらいい。

    かなり気軽に出来はしないか。

    簡単パパッっと。
    コンビニごはん。

    そんな言葉を体験を、受け入れながらどこかで

    これはおいしくないし
    どこかカラダやココロにあやういことをしてる。

    手抜き以前の危なさで、取り返しがつかなくなりそう
    と感じてはいないか。

    親がしてくれたことに感謝と
    立ち返りたい思いはないか。

    その本能的な危惧感を放っておかないで
    自分が無理なく出来ることからやっていかないと。

    専門家だから。
    育ちが違うから。
    私とは違うから。

    言い訳をしているといつか身体から大きな要が抜けて
    死んでしまう気がして仕方がない。

    文明の利器や時短調理を批判しているのではない。

    ざざっとやっておけばいい。
    どかんと食べて、さっと簡単に満腹になれば。

    ということの裏に
    優しくない、刺す味がある気がする。

    成人病になるなるとか、言葉で弄んでいるどころか
    こころまでどこかおかしくなりそう。

    その前に。
    私とあなたが出来ることを。
    ちょっとずつでいいから。

  • ふむ

  • 辰巳芳子 著「味覚日乗(みかくにちじょう)」、2002.5発行(文庫)。日乗とは、平凡な日常を書き重ねるという意味だそうです。料理という切り口で、人間の食事、人間の暮らし、自然と四季、地球全体を大観小察されています。

  • 辰巳芳子さんのとても丁寧なお料理作りと、季節感を大事にするところがとても素敵です。
    どれも食べてみたいです♪

  • 「人が愛ゆえに、作ったり食べさせたりする日々。過ぎてしばえばなんと短いことでしょう。」辰巳さんの綴る、日々の食事についての背筋の伸びるエッセイです。

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 母が読んでたので、拝借して読了。

    丁寧に暮らすことは、それを続けることも大事。

  • 春夏秋冬の風土を味わうことを綴った本。料理は、やはり美味しくなれと心をこめて丁寧に作るもんですね。心身乱れている時に料理すると、それなりになってしまうのも納得するもんです。

  • ずいぶん前に購入したものだけど、読み通せないまま放置してた。当時のわたしには渋すぎるお料理だったのと、写真なしでは想像しづらいのとで苦痛だった。
    このたび、映画『天のしずく』を観て再び手に取る。不思議なほどするする、するする、と一気に読めた。イメージしづらいところもあったけど、それほど気にならず。
    渋いと感じていた食材・料理に対する関心が年齢とともに高まっていることと、読書体験と料理の知識が少しは増した成果か。
    小川洋子さんが言っていた、「本は、いつもあなたを傍らで待ってくれている」を実感。

    映画の中に出てきた事柄がここにもおさめられていた。
    ・母・浜子さんの玉子焼き「心臓焼き」
    ・おにぎりの中に梅干を入れるのは矛盾しているとのお話(p100)
    ・「梅仕事」のこと
    その他いろいろ。

    辰巳さんは、単に伝統的な食を守るべしという保守的な料理家ではない。
    むしろ常に新しい視点を持ち、自分の頭で考えること、アンテナを鋭敏に張ること--そうして結果的にものごとの本質を見極めることが大事だとおっしゃっている。
    だから最後の対談は、単に今の食のあり方を嘆くばかり…な内容になってしまっていて、残念だった!
    下記のような引用文が辰巳芳子さんの素晴らしさなのになあ。

    「たっぷりめに作った素材を、自分の勘考力で上手に展開させてゆく--四人前を単位とする、すじ切り料理指導に馴らされた方々にはとまどいのもとかもしれませんが、展開方式に目をむければ、家庭の台所に光がさし込むかもしれません。放送も出版も、料理を、もっと台所仕事を全体の枠でとらえ、仕事全体と労苦を分かつ視点で、世に貢献してほしいもの。」(p207)

    「視点というものはつい固定化してしまいますが、ものと、もの事の本質を見つめれば、弾力性はおのずから備わるもの。ものともの事の本質は瞬間的につかめるはずのものだと思います。これが困難になる始まりは、よもぎ餅でいうならば灰汁のかわりに、簡便の故に、重曹に手を出すようなことが度重なると、人間のアンテナは鈍麻してしまいます。しかも劣弱となったものが次の世代に伝わるのです。」(p234)

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    ●スーパーミールというファストフードを食べてみたいなぁ。
    ●藤田千恵子さんという方の「あとがき」も素晴らしい。

  • 料理研究家の著者が綴るエッセイ。
    しかしこの著者、我々が通常想像するような、料理を技術あるいは技能としてとらえ、そのノウハウを紹介する類の人ではない。

    食べることは命であり、料理は愛そのもの。一方で作る人にも事情はあるから、ある程度のところまでは手間についても考えなければならない。
    そして、健全な食を通じて人は自然と調和し、健やかに穏やかに暮らすことができる。

    こうしたところが著者の主張のエッセンスであると理解している。


    本書は著者の住む鎌倉で発行されている新聞に連載されたものをまとめて刊行されたもので、季節ごとの章に分かれ、それぞれの季節の情景やその時の心持などを記しつつ、料理のことに触れていく。決してレシピ解説などにはならず、「こういうときはこんなふうにした○○を食べる」といった具合。言葉はきわめて美しい話し言葉で、合間合間にお小言も入り、さしずめ少し厳しいおばあちゃんが、まだ幼い自分に家の手伝いをさせながら季節について教えてくれているかのようである。

    ただ、ところどころに中途半端に化学物質の名前が出てくることには白けたものを感じてしまう。せっかくすばらしい信念や実績をお持ちの方なのだから、付け焼刃の知識をひけらかすことなどせず、ご自身の伝えたいことのみに絞った語りがなされれば、少々のお小言も有り難く感じるというものではないかと思う。

  • いつもながら、背筋をしゃんっとさせられる辰巳さんの文章です。
    そして考えさせられることも多い。
    食べるということと生きるということのこの難しさと単純さ。

    ただレシピ本ではないので、その辺を期待したらがっかりします。
    まったく書いてないわけではないですが。

    氷りだしの煎茶はぜひ夏になったらやってみよう、と、思います。

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著者プロフィール

料理研究家、エッセイスト。1924(大正13)年生まれ。料理研究家の草分けだった母・辰巳浜子のもとで家庭料理を学ぶ一方、西洋料理の研鑽も重ねる。父親の介護を通じてスープに開眼する。鎌倉の自宅や周辺の施設でスープ教室を主宰し、高齢者や病気の方へスープを提供できるよう指導している。「大豆100粒運動を支える会」会長を務める。 著書に『辰巳芳子の旬を味わう -いのちを養う家庭料理』、『辰巳芳子 慎みを食卓に -その一例』(ともにNHK出版)がある。

「2020年 『辰巳芳子 ご飯と汁物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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