贋作吾輩は猫である―内田百けん集成〈8〉 ちくま文庫 (ちくま文庫 う 12-9)
- 筑摩書房 (2003年5月1日発売)
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- Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480037688
感想・レビュー・書評
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贋作という形で、夏目漱石の吾輩は猫であるの続編として描かれた小説。
解説で、漱石の猫にはある二つのアイデアが、隠されているということが書かれていて納得。そのアイデアとは、次の二つ。
1.人間でないものの眼から人間を見て、人間というものの奇怪さ、滑稽さ、醜悪さに気がつかせるという、いわば『不条理の眼』とでもいうべき視点の設定。
2.日本の文学史のなかで、高貴な愛玩動物か怪異の元という、2パターンで描かれていた猫を、普通の家族としてあつかったこと。
この、贋作でも、同じくこの2つアイデアが十分に活かされている。
そして、じゃりん子チエの小鉄とジュニアも、実はこうしたアイデアを具現化したキャラクターなのだということに気がつく。家族に属する普通の猫の不条理の視点から人間の業を描くことは、文学、滑稽小説の伝統、王道としての様式なのだということを教えて頂いた。詳細をみるコメント0件をすべて表示