若きヴェルテルの悩み (ちくま文庫 け 3-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480037732

感想・レビュー・書評

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  • 切ない切ない恋の物語inドイツ。それは悩むよなぁ。と、共感しつつ読み進んだ記憶が。

  • ?君は自殺したいと一回でも思ったことがあるか?私は無い。一回もない。ちょっと今すぐに消え入りたいと願ったぐらいで。?若きヴェルテルの悩みを初めて読んだ頃、私も間違いだらけの恋愛事件に巻き込まれて息も絶え絶えになっていた。ちなみにこの本はナポレオン一世も北アフリカで愛読したぐらいなのだから、男専用のY本なのである。そして若い精液臭いうら若き青少年によく似合う一冊である。できれば薄い文庫本で尻のポケットに入れるために表紙なんかうっちゃっておいてなるべく乱暴に取り扱うことを推奨する。?ヴェルテルはロッテという乳臭いちょっとした美人に懸想し、彼女の身辺を這いずり回る。現代的にいえば、ストーカー行為でもあり、もっとドライに言えば、女に振り回されているだけの青年の煩悩が、思い余って、己を破壊することに成功するというだけの筋書きで実に単純な小説である。煩悩だらけで集中力の足りない青年諸氏にはもってこいの娯楽作品だ。ヴェルテルは死ぬ。死ぬというよりは、おっちぬ。しかも卑怯で、あまり効果の無い死に方で。ゲーテもこの小説を書いた頃は若かったのであろう。疾風怒濤の精神でもって恋に破れた者がそのままの情熱をもってして死を選択する。しかし、現実の女性に置き換えて欲しい。こんな男のために心中する女はあっても、後追い自殺をする女などがいるはずもないのである。婚約者のアルベルトが心配したのは、実はロッテの身ではない。ロッテは自殺などできない。そんなことはアルベルトは知っていた。しかし、アルベルトがロッテの身をあんじた、という表現で小説は終わる。これは一体どういうカラクリであろうか。?つまりこういうことではないか。ヴェルテルは最初から、アルベルトを含めたロッテを愛していたのであり、もっと突き詰めて言えば、寧ろ、ロッテではなく、アルベルトに対する焦げんばかりの情熱が憐れなるヴェルテルを死においやったのではないか。ヴェルテルは死ぬ。ヴェルテルは恋に破れて死ぬ。どう考えてもロッテを愛する男のすることではない。初めから自殺願望が濃かった人間が良い動機を得て行動したようにも考えられる。なぜヴェルテルは死にたかったのか。それは未熟だからだ。女ってものを、恐れていたからだ。本当はロッテをこれ以上なく嫌悪しているのがこのゲーテ……ではなくてヴェルテル小僧なのだ。そしてアルベルトに対する巨大なコンプレックスと愛。本当はアルベルトをより愛した男色家ヴェルテル!?読書を終えた我々百万のか弱い青年の群れはほっと胸を撫で下ろしながら、この残虐なロッテという女に、やっぱりヴェルテルの代わりにぽっとなりながら、夕刻の暮れ行く空を眺めて女々しい思いに囚われる。そして鏡に映った己のアルベルト顔をそっと覗きながら、気味の悪い表情でにっと笑ってみせるのだろう。

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