- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480038630
作品紹介・あらすじ
元気はつらつとした知性をもつエリザベス・ベネットは、大地主で美男子で頭脳抜群のダーシーと知り合うが、その高慢な態度に反感を抱き、やがて美貌の将校ウィッカムに惹かれ、ダーシーへの中傷を信じてしまう。ところが…。ベネット夫人やコリンズ牧師など永遠の喜劇的人物も登場して読者を大いに笑わせ、スリリングな展開で深い感動をよぶ英国恋愛小説の名作。オースティン文学の魅力を満喫できる明快な新訳でおくる。
感想・レビュー・書評
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1775年〜1817年に生きた女性作家ジェーン・オースティンの小説。古い時代の小説だから文章が硬いのかと思っていたら、冒頭「金持ちの独身男性はみんな花嫁募集中にちがいない。これは世間一般に認められた真理である。」ハハッ、なんか女性週刊誌みたいなノリだね。
「近所に金持ちの独身男性が引っ越してきた」とすぐに張りきり、「五人娘の誰かを嫁に」と目論んで「あなた、ご挨拶に行かなきゃ」と夫をせかし、「ディナーに招待しなきゃ」「舞踏会に招待されるかも」とそれだけが生きがいのベネット夫人。
ベネット家の長女ジェインは美しく、実際に例の“金持ちのイケメン独身男性隣人”ビングリー氏を夢中にさせ、「二人の結婚は近い」と囁かれるが、身分違いの結婚はありえないと考えるビングリー氏の姉、妹や親友から有難迷惑な邪魔が入る。
舞踏会やディナーで臆面もなく娘の自慢話ばかりするベネット夫人。器量が悪い分、音楽でいい所を見せようと下手なのに歌の披露を止めない三女メアリー。素敵な軍人との出会いばかり考えている四女と五女。美しく心のきれいな姉の幸せを心から祈り、馬鹿な母と妹達の行動を恥ずかしがっている、人間観察力豊かな次女エリザベスがこの小説の主役。エリザベスの目を通した、周りの人間たちの馬鹿で下心ありありの行動が面白い。いつの時代も一緒だ。
女たちは財産のある男との結婚のことばかり考えていて、ここに出てくる男性は仕事らしい仕事は何もしていなくて(財産で暮らしていて)、「貧乏な男はお金持ちの女性と結婚しなければ」というのが一般常識で、何故か「貧乏だから頑張って働こう」という意識は全然なくて、退屈ばかりして、トランプばかりしていて、今に生きる私から見て魅力的な男性はいない。
が、五人姉妹の父、ベネット氏の言葉はいつもウィットに富んでいて面白い。例えば、全く空気の読めない馬鹿だけど、財産のあるコリンズがエリザベスにプロポーズしたのを母親が両手を挙げて喜んだが、エリザベスが断ったことを怒り、
「このプロポーズを断ったら私はあなたの顔を二度と見ません。」
と言ったことに対し
「エリザベス、困ったね。お前は両親のどちらかと縁を切らなくてはならないぞ。この縁談を断わったら、お母さんはお前の顔を二度と見ないと言ってるが、お父さんはお前があんな男と結婚したら二度とお前の顔を見たくない。」。
どうやら、ジェインとビングリー氏の結婚が駄目になったようだと分かったとき
「どうやらジェインは失恋したようだね。おめでとうと言ってあげよう。若い娘の好きなものは恋愛だが、二番めに好きなのは、時々ちょっとした失恋をすることだ。失恋はなかなかロマンチックだし、女の勲章みたいなものだ。」。
馬鹿だけど、その社会で生き延びようと強かに生きる女たちが嫌いにはなれない。愛はないけれど、オールドミスにはならず、まあまあの暮らしを得るためにコリンズと喜んで結婚したシャーロットのことも私は憎めない。ジェンダー平等という言葉も今の世にはあるが、いつの世にも男性には男性の悩みが女性には女性の悩みがあり、そんな中で、器量とか能力とか財産とか自分の強みは強みで、ちゃんと使って、弱みは弱みで上手いこと補って生きていこうと強かに考えて生きる人間の姿はある意味愛らしいな。この時代に女性にしか書けないものを書いたジェーン・オースティン氏も魅力的。
最後にグッと惹かれたのはダーシー氏。大金持ちで無愛想で高慢ちきでエリザベスはすごく嫌っていたけれど、その彼女にまさかの告白。「自分より随分身分が下の女性だから悩んだけれど、それでもどうしてもこの気持ちは抑えられない」と正直すぎて失礼の上塗りで、エリザベスを益々怒らせる告白だけど、それでも一生懸命また、正直過ぎる手紙を必死で渡す。冷たい印象の彼がこんなことするのが、読者には魅力的。それにダーシーって私に似てると思うのさ。金持ちじゃないし、性も違うけど。
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イギリス古典であり『高慢と偏見』なんてお堅いタイトルなので長い間敬遠してたけど、読み始めたら止まりませんでした。ひと昔前に毎月楽しみにしていた長期連載・恋愛少女マンガのような、拗れに拗れていく展開が待ち受けています。
とにかく一癖もふた癖もあるような人物たちが、あちらこちらから登場しては場を引っ掻き回していきます。彼らのおかけでまとまりそうなお話もまとまらない……そんな、てんやわんやな印象をこの上巻では持ちました。
とは言うものの、主な登場人物の男女4人だけでは、それこそ抑揚のない堅~い暗~いお話になりそう。だからこそ、そこに花を添えていると思えば、長所よりも短所が目立ってしまうそれらの人々には愛着が湧くもの。
心優しいジェイン、聡明なエリザベス。彼女たちにはハッピーエンドになってほしい。身分違いの恋、大嫌いな相手からのプロポーズ……幸せへの道は紆余曲折。辿り着く先に待つものは?下巻が楽しみ。 -
今さら初めてのジェイン・オースティン。文庫で読めるものだけでも各出版社さまざまな翻訳者で4~5種類出ているので、まずどれをチョイスするかで迷ったのだけど、やっぱりちくまが一番無難かなということでこちらを。正直、今までタイトルの印象だけで「昔の上流社会の気取った恋愛のお話なんでしょ」と思っていたら、とんでもなく面白くてビックリ。語弊を承知であえて言うけど、これほぼ少女マンガだよ!200年前の英国版「花より男子」だよ!(笑)
主人公はベネット家の五人姉妹の次女、快活でしっかり者のエリザベス(リジー)。長女のジェインだけは美貌の上に天使のように優しいけれど、三女メアリーは姉妹の中では唯一不器量でガリ勉キャラ、四女キティと五女リディアはそこそこ可愛いけど頭からっぽで男のことしか考えていないコギャルでトラブルメーカー。
姉妹の母親は現代文学ならとんだ毒母なくらいこれまた頭からっぽ(失敬)の俗物なのだけど、彼女を筆頭にジェイン・オースティンの描き出すダメなキャラクターというのは、あまりにもダメすぎて腹を立てるのもバカらしく、いっそギャグなの?と思うくらい極端にデフォルメされているので1周まわって笑うしかなくなってしまうのが凄い。姉妹たちの従弟にあたるコリンズ氏なども、あまりの空気の読めなさに、イラっとするのも時間の無駄、作者はこの妙ちきりんな男を大変楽しんで書いているのだろうなというのが伝わってきてつい笑ってしまう。
そんなわけで、庶民の娘つくしちゃんならぬリジーが、大金持ちのイケメン道明寺ダーシー氏と出逢うも「なんて高慢ちきで嫌なやつ!」と嫌っているのに、典型的なツンデレキャラである道明寺ダーシー氏のほうは、そんな飾らない庶民の娘リジーつくしにいつのまにか夢中になり、思い切って一方的にプロポーズするも、「はあ!?あんたみたいな高慢男を好きになるわけないでしょ!」と撥ねつけられるところで上巻終了。-
こんばんは。談話室でコメントいただきありがとうございます!
「200年前の英国版花より男子」に笑ってしまいました。まさしくその通り(笑)
...こんばんは。談話室でコメントいただきありがとうございます!
「200年前の英国版花より男子」に笑ってしまいました。まさしくその通り(笑)
yamaitsuさんの本棚は文学が充実していてすごいですね!私もこれからいろんな作品を読んでいきたいので、レビューなど参考にさせていただきたいと思います。2017/10/13 -
こんにちは!
ジェーン・オースティン、ブロンテ姉妹ってどっちも「女には相続権がない。財産を守るには男と結婚するかない。自立するには家庭...こんにちは!
ジェーン・オースティン、ブロンテ姉妹ってどっちも「女には相続権がない。財産を守るには男と結婚するかない。自立するには家庭教師になるしかない」みたいな時代背景のようですが、
嵐が丘やジェーン・エアは不遇だったり悲壮な決意をしたり堅かったりドラマチックだったりしているのに、
こちらの姉妹はなんかの~んびりしていますよね(笑)
オースティンのほうが一世代前くらいのようですが、ブロンテ姉妹の時にはイギリスはもっと女性に生き辛くなったのか、単純に作者たちの性質の違いなのか(笑)
オースティンもブロンテ姉妹も「牧師の娘」ということで、一般中流階級より結婚結婚財産財産ってしなくても生きられたから小説書けたのかなーー。2017/10/13 -
マヤさん>>
こんにちは(^o^)こちらこそコメントありがとうございます!
海外文学、読むと案外難しくないものも多いですよね。やっぱり長...マヤさん>>
こんにちは(^o^)こちらこそコメントありがとうございます!
海外文学、読むと案外難しくないものも多いですよね。やっぱり長年読み継がれているのは単純に面白いからなんだなって思います。
こちらこそこれからよろしくお願いいたします(^^)/
淳水堂さん>>
こんにちは!
確かにブロンテ姉妹作品の悲壮感・ゴシック感に比べたら、ベネット家の姉妹はわりとのほほんですね(笑)やはりキャラの差でしょうか。でも作者たちはそんな時代でも作家になったのだから凄いですよね。
余談ですが海外ドラマの「ダウントン・アビー」に途中からはまって見ていたのですが、こちらは「高慢と偏見」よりは100年くらい後の英国貴族、やっぱり女性に相続権がなくて3人姉妹の長女が相続権のある遠縁の男性といがみあったり恋したり・・・という話でした。100年経ってもまだそんな感じなんだ、とビックリしました(@_@;)2017/10/16
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19世紀を代表する女性作家の一人。それどころか、イギリスを代表する作家の一人かも。現代のロマンスものの元祖でもあるジェイン・オースティン。
近年出たパロディを紹介する前に再アップ。
ジェイン・オースティンの中でももっとも有名で、愛された作品がこれです。
5人姉妹の次女で利発なエリザベスは、名家の主で印象的な男性ダーシーに出会うが、とっつきにくいダーシーの言動に反発、さらに噂を吹き込まれて、すっかり誤解してしまいます。
一方、最初は気づかなかったエリザベスの生き生きした魅力に目を離せなくなっていくダーシー。
誤解も含めたエリザベスの強烈な拒絶に遭い、生まれて初めて自分の傲慢さを改めようとし始めます。
18世紀末から19世紀初頭にかけてのイギリスの現実を踏まえて、紳士階級だが貧しくなりかけている一家の娘たちと友人それぞれの恋模様を面白おかしく描いています。
女性が家を継ぐことが出来なかった時代。しかも細かい身分制度が厳然とあり、地代収入があることがステイタスな身分の女性が体面を保てる職業もほぼ存在しなかった。
日本で言えば~江戸時代に下級武士が暮らしに困る、みたいなものかな。
オースティン自身は恋愛経験はあるが破れて独身のまま、作家という異例な成功を成し遂げていくわけです。
作者がよく知っている世界の中で起きる出来事を丁寧に描いてあり、引き込まれていきます。
当時の風習は知らないことばかりでも、細かく観察して辛辣に描き出される困った人や嫌なヤツは抱腹絶倒。あるあるな感じを覚えますよ。
人情の機微も心の動きも、いつの時代も変わらないものがあるようですね。
出会った途端に誤解からけんか腰の男女がしだいに恋に落ち、時間をかけてついに障害をも乗り越えるという恋愛物の王道を極めた作品。 -
辻村深月さんの「傲慢と善良」は、ジェイン・オースティンの「高慢と偏見」のオマージュと聞き、「高慢と偏見」が気になってはいたものの、洋書ものだったので躊躇したままでした。(翻訳本にニガテ意識があるため)
先日、図書館のオススメコーナーで、ちくま文庫の「高慢と偏見」上下巻が平置きされており、手にとってみたところ、活字も大きめで翻訳もとても読みやすく、「これなら読みきれそう」と、すぐ上下巻を借りました。
読み始めてみたところ、なんというおもしろさでしょう!
登場人物たちそれぞれの個性がとても際立っていて、人間の滑稽さ、愚かさがおもしろさへと昇華しています。
そして人間の見方とは、こうも人によって違うものなのか、その人がもつ思惑や印象で、容易に「偏見」が生まれていくさまが鮮やかに書かれていて、驚きました。
登場人物たちは中世のヨーロッパの方々なため、耳慣れない称号や愛称で呼ばれており、少々混乱はしますが、冒頭に登場人物を文字で紹介したページがあるので、そこと言ったりきたりしながら読み進めました。
上巻の終わり方も「ええっ?!」というところで終わっていて、しかもその場面を想像するとだいぶ胸キュンしてしまいまして…
高慢と言われているあのダーシーがですよ?
あのダーシーが、エリザベスに?!
ああ、これ以上は語れない…ごめんなさい…
読みおえてすぐに下巻を手にとったことだけは、お知らせしております。
手に取るときはぜひ上下巻セットを、強くオススメ致します。-
こゆきうさぎ@148センチの日常さん、はじめまして。
このちくま文庫版、わたしもとても読みやすかったです。
こゆきうさぎ@1...こゆきうさぎ@148センチの日常さん、はじめまして。
このちくま文庫版、わたしもとても読みやすかったです。
こゆきうさぎ@148センチの日常さんの胸キュン、すごくわかりますよ!
わたしもそうでした。
たしかに上下巻をセットでスタンバイしておかないと後悔しますね(*^^*)2021/01/21 -
地球っこさん
コメントありがとうございます(o^^o)
共感していただけてうれしいです!!
下巻は冒頭から手紙の内容を読み解くくだりで、エ...地球っこさん
コメントありがとうございます(o^^o)
共感していただけてうれしいです!!
下巻は冒頭から手紙の内容を読み解くくだりで、エリザベスと共に混乱しつつキュンキュンしてしまい、大変でした(笑)
こんなにおもしろい翻訳本に会えたのはひさびさです!
翻訳物は本当に翻訳の仕方で印象や読みやすさが全然ちがいますが、このちくま文庫の「高慢と偏見」は“名著”ですね。
上下巻で借りておいてよかったーと思いました(^_^)ノ2021/01/21
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1813年初出。この年代で「普通に楽しめる小説」ってそれだけでもすごい。
当たり前ですがイギリスです。「源氏物語」などと違って、「複製され商品化される前提で出された小説」というのは要するに産業革命がなされて都市労働者、消費者、商業ブルジョワジーがいないとそもそもマーケットが無いので。
その古さでしかも恋愛心理小説、「夏目漱石も参考にした」らしいという興味でいつかは読もうと思っていた本。
面白かったです。
要は労働者の中の最上流階級の娘エリザベスと、大貴族ダーシーの「身分違いの恋愛」物語。ハッピーエンドです。
これが疾風怒濤の破天荒ロマンではなくて、当時の経済的な常識とか社会的な見え方、世間体なども踏まえたでティール豊かな小説で、なるほど夏目漱石や丸谷才一に繋がるな、と。
こういうことに戦争をぶち込んで、社会階級の習慣を超えて「人間としての真実」みたいな探求を持ち込んで、エンタメとしてのスケール感をブローアップすると、トルストイの「戦争と平和」(1867)になるし、「世間体とは何か?消費社会の自己実現とは?」という方向にシニカルに深く向かうと「ボヴァリー夫人」(1857)になる。更にはアメリカ的な大らかさ(大雑把さとプロテスタント的な肯定感)と個人主義・家族主義、の津波を浴びると「若草物語」(1868)になるとも言えます。
古典は現在へのヒントに満ち満ちていてとにかくワクワクします。ただ、「中世」を纏っている本ってやっぱり寄り付きづらいんですよね。
本と小説の「近現代」を押し開いた作品の一つだなあ、という楽しみかたも加味して満足でした。
どの翻訳で読むか悩んだ末に筑摩を選択。比較してないから比較論はできませんが、割りと不満なく読みやすい文章でした。 -
前回読んだのが、2017年の大島一彦訳で中公文庫。
今回読んだのが、2003年の中野康司訳でちくま文庫。
「高慢と偏見」はいくつも翻訳が出ていて、どれを読めばいいか迷うのだが、そのガイダンスとして、こちら(http://www.squibbon.net/archives/10235279.html)を大いに参考にさせてもらった。
それによれば、今回の中野訳は、非常に読みやすいけど「くだけすぎ」という評判のようだ。
たしかにそういうところはあるが、気にはならなかった。 -
恋愛小説が苦手な自分でも読めたことに嬉しく思った。
若い頃に読んでおけば良かったなーという思い。
皮肉がピリ辛、時々ユニークで登場人物も個性がはっきりしている。
とても読みやすくて読み進めるごとにオースティンの良さが染み渡る。
かなり計算された物語に驚いた。
ポイントごとに見つける皮肉は少し宝探し的な感じで、見つけると少し嬉しくなる。
難しいということはなく、ただ本当によく練られてるなという印象。 -
オースティン、これほどおもしろいとは、
エリザベスの会話力(主にダーシーとの)がすごい
日本語訳の秀逸さ
スラスラ読める
ああ、ほんとに喜劇ですね。新訳で読まれたんですね。私は、岩波文庫で読みましたが、訳が酷くて、読むのに苦労しました。さ...
ああ、ほんとに喜劇ですね。新訳で読まれたんですね。私は、岩波文庫で読みましたが、訳が酷くて、読むのに苦労しました。さすがに二度目は、中野好夫訳の新潮文庫を買って、読みました。こちらはよかった。
「ミスター・ビーン」の国の喜劇は自分たちをシニカルに笑うのが得意なんですね。
「ミスター・ビーン」の国の喜劇は自分たちをシニカルに笑うのが得意なんですね。
うわあ、ミスター・ビーンですかあ!懐かしい。映画も見に行ったんですよ。ローワン・アトキンソンさん、どうしてるかなあ。
うわあ、ミスター・ビーンですかあ!懐かしい。映画も見に行ったんですよ。ローワン・アトキンソンさん、どうしてるかなあ。