春は鉄までが匂った (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480039477

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わる前に返却期限が来たので一旦返却。
    町工場でものづくりをする人たち。どんな大企業の製品でも、彼らがいるから出来ていたりすることを忘れちゃいけないし、下請けを簡単に切ったり低賃金でこき使ってはいけないと思うのに、現実は一次産業の待遇はさほどよくないように感じる。

    全然手を動かさない完全ホワイトカラーの自分が言うのもなんだが、なんだかなぁ。

  • 働くということは自分のいやらしさと向き合うこと。いや~痺れますね。
    これが絶版か~。ブックオフありがとう。ドンピシャで置いてあったから、天啓でした。

  • 昼休みに毎日ちょっとずつ読み進めた。
    仕事の合間に読むのに、小関智弘の本はちょうどいい感じだ。働きながら書く人の文章は、共感できるところも多い。

  • しつこく 時間をかけて
    「春は鉄までが匂った」を読んだ。

    どんな顔をしている人物かわからないが、
    実に弛みない生活をしている。
    どこに そのよさがあるのかわからないが
    職人の基質がしたたかに生きている。

    こんな風に農業を見つめることができれば、
    もっと面白いことが展開できるだろう。
    そんな風に読むことができた。
    生活に対する姿勢がなんとも言えずよい。
    そこには 職人としてのメッセージがきちんとある。

    町工場が、円高不況のために倒産していく。
    主要な大きな会社は、海外に下請け工場をつくり、
    日本の町工場が消えていく。

    コンピュータの導入により鉄工所の、
    職人がいらなくなるともいわれた。
    職人が消えていくことは、
    その技術も消えていくことである。

    しかし、そのような消えていく町工場の中で、
    職人気質をもった人間が、したたかな眼で、
    職人の夢をもちながら生きていこうとしている作品。

    現在の農業にも同じ問題が起こっている。

    「人の嫌がるような仕事、おいそれとは
    やれないような仕事を喜んでやってのけるような
    工場にしてみたらどうだろう。」

    「師と士の距離がどんなものかは知らないが
    士が 手に変わったとすれば、
    師と手は親戚ということになる」

    「挑戦というのは、結果は未知ということです。」

    「町工場的な思考で、無駄のない労働、贅沢なんてもの、
    粋だなんてものの許されない労働。
    労働の中に人間味を見いだすことはできるはずだ。」

    とにかく「魂の入ったものをつくる。」
    「職人かたぎってものをほめるわけじゃないんですが、
    仕事を教えるのに、知識ってものは
    使わなくても教育できたんですねえ。
    心があったとでもいうんですか。」

    「発見はあるが 発明がない。
    熟練工的な思考の持つ保守性。
    生活の知恵にもたれて、大きな展望を見失いがちな弱点」
    それに対して
    「町工場的な思考で ムダのない労働 贅沢なんてもの、
    粋だなんてものの許されない労働が
    どんなものかを見つめたい。
    労働の質や形態にかかわらず、
    労働の中に人間味を見出すことはできるはずだ。」

    「経済オンリーの拝金主義、合理化だの利潤だのいって
    そんなところに文化の発展が 人間の幸せがありますか。」

    「仕事のほかに趣味を持つということ。
    それを通して、審美眼を養う。
    それは必ず仕事のなかにかえってくる。
    美的な感覚が満たされないようなものには、
    どこか 合理性がかけている」

    このような言葉の中に、職人としての誇りが
    静かに横たわっている。

    「犯罪捜査の鉄則に現場100回という言葉があるという。
    犯罪現場を100回調べろ。
    そうすれば必ず糸口は解ける」
    ということから、
    「製造過程で問題があれば、そこで、
    100回以上調べることだ。」という。

    職人の仕事は、あくまでも観察する力にある。

  • 非常に読後感が良い本。著者のやさしい視線に包まれて幸せな気持ちになる。町工場の厳しい現実も書かれているが職人の矜持を保つ姿に力を貰える。

  • 町工場で生きる貧すれど鈍せぬ男達のルポ。

    小関さんの眼差しに人としての温もりを感じるのは、自身も町工場で生きる旋盤工であるからこそ。
    ものづくりに人生のすべてを捧げた先達の声が詰まっています。

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著者プロフィール

1933年、東京生まれ。
都立大学附属工業高校卒業後、旋盤工として町工場に勤務する。
そのかたわら、執筆活動をつづけ、作品を発表する。
◎おもな著書
『大森界隈職人往来』(朝日新聞社、81年)--第8回日本ノンフィクション賞
『粋な旋盤工』(風媒社)、『春は鉄までが匂った』(晩聲社)、『羽田浦地図』(文芸春秋)ほか

「1985年 『鉄を削る 町工場の技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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