恋するコンピュータ (ちくまプリマーブックス 117)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480042170

感想・レビュー・書評

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  • (2015.04.30読了)(2003.04.20購入)
    IT関連の仕事をしていて、定年退職してしまったら、IT関連の書籍を手に取ることが少なくなってしまいました。本棚の目につくところに飾っておいて、やっと手に取りました。
    17年前に出版された本になるのですが、興味深く読むことができました。
    2014年12月に
    「アイの物語」山本弘著、角川文庫、2009.03.25
    を読んだのですが、SFの世界では、「恋するコンピュータ」は、実現している感じです。
    将棋の世界では、コンピュータと人間は互角に戦えているか、コンピュータの方が優勢のようです。
    人間のような思考ができて、人間の要望に柔軟に対応できる人工知能をどうやって作るかというのが、この本の主題ですが、女性が書いているだけあって、子供が生まれてことばを獲得して行く様子が、人工知能を考える上で、参考になるという話が、非常に興味深いものでした。

    【目次】

    恋するコンピュータ
    私を見ていて
    ものごとを見つめるという技術
    ふたたび、恋するコンピュータ

    花の音を聴く
    脳を刺激する言葉たち
    存在を主張する音
    音韻の魔法
    言葉の奥にあるもの

    青い風
    恋するコンピュータ、みたび
    花雪姫と呼んであげる
    言葉のジレンマ

    日常よくある不安について
    現状を維持するための不安
    新たな何かを生み出すための不安
    知識獲得エンジン

    鉄腕アトムなんかいらない
    誕生前言語フレーム
    恋するコンピュータ、よたび

    記憶メカニズム
    記憶の痛み
    老いて死ぬことの素敵

    どこからきたの?
    知性を誘発するもの
    恋するコンピュータ、さいごに
    あとがき

    ●データと情報(19頁)
    コンピュータに載せられるのはデータにすぎません。データに人間の思いが添えられたとき、あるいは人間の思いに照らしてデータが再構築されたとき、データは初めて情報になるのです。
    ●音(50頁)
    すべての存在には、音があります。そして、その音は、その存在のかたち(有り様)によく似合う音なのです。
    ●グループウェア(56頁)
    ネットワークの技術が進むに及んで、欧米ではグループウェアという言葉が使われ始めました。この言葉が輸入されて初めて、日本のエンジニアたちが、コンピュータは「ひたすら計算する機械」「データをしまっておく金庫」だけでなく、情報を共有してビジネスを活性化するための道具だったことを知ったのでした。
    ●会話(81頁)
    会話は、語り手が自分の脳に描いたイメージを、相手に押し付ける作業ではありません。相手の脳に描いてもらいたいイメージがあって、これを喚起するために言葉を紡ぐこと、それが会話です。
    ●類似認識(109頁)
    初めて出会った事象を認識するとき、私たちはまず、既存の知識のなかで最も類似した枠組みを探し出します。類似認識は、共通認識と差分認識から成り立っています。
    ●抽象化(132頁)
    息子が三歳のときでした。
    「ママ、徳島って何?」
    「それは浅草(自宅)とか栃木(実家)みたいなさぁ」
    「ああ、町の名前ね」
    ●物理学(134頁)
    物理学が教えてくれた宇宙の果ては、文字どおりの物理的なものではなく、視覚認識の限界点なのでした。そう考えてみると物理学は、ミクロからマクロまでの視覚認識を究極にまで広げるための学問であり、哲学とは案外近しい存在なのかもしれません。
    ●感覚器(134頁)
    脳が感覚器の情報を受容するためには、私たちは、感覚器に刺激を与えた対象物と関係をもたなくてはなりません。口に含み、手に取り、声を出し合って快感・不快感を確かめなければならないのです。
    ●陣痛(153頁)
    「陣痛の合間の無痛時間にいかにリラックスするかがお産をスムーズに進めるコツです。次の痛みにおびえてリラックスできないと母子ともに疲れてしまいます。ここで、何もかも忘れてリラックスし、深い呼吸をして、赤ちゃんに十分な酸素を送ってあげてください。
    ●深呼吸(181頁)
    生理的な機能や根気、集中力が、呼吸によって供給される豊富な酸素でアップするのは納得できるとして、なぜ思慮深さや法活力という知性の領域にまで影響が及ぶのでしょうか。

    ☆関連図書(既読)
    「第五世代コンピュータ」ファイゲンバウム・マコーダック著、TBSブリタニカ、1983.08.01
    「第五世代コンピュータ」元岡達・喜連川優著、岩波書店、1984.10.05
    「第五世代コンピュータ」那野比古著、教育社、1985.05.30
    「第五世代コンピュータへの挑戦」渕一博著、三田出版会、1990.07.25
    「人工知能」スレイグル著・南雲仁一訳、産業図書、1972.01.19
    「人工知能の衝撃」那野比古著、日本経済新聞社、1984.08.24
    「知能ロボットの驚異」那野比古著、日本経済新聞社、1985.09.10
    「人工知能」長尾真著、新潮文庫、1986.04.25
    「パソコンAIのすすめ」那野比古著、電波新聞社、1986.12.25
    「AI 人工知能のコンセプト」西垣通著、講談社現代新書、1988.10.20
    「秘術としてのAI思考」西垣通著、筑摩書房、1990.01.30
    「人工知能と人間」長尾真著、岩波新書、1992.12.21
    (2015年5月1日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    こんなコンピュータはいいが?言語を理解し気持ちを察して、あなたと軽やかに交歓する。考え迷い、類推して、あなたを幸せにしてくれる最もすてきな情報を提供する…。AI研究の立場から、ヒトの快・不快といった情動、言葉や知識獲得のメカニズムを見つめる著者が、科学に母性や感性を取り入れながら展開する、やわらかな思考の冒険。

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著者プロフィール

黒川伊保子(くろかわ・いほこ)
1959年長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業。
(株)富士通にて人工知能(AI)の研究開発に従事した後、コンサルタント会社、民間の研究所を経て、2003年(株)感性リサーチ設立、代表取締役に就任。脳機能論とAIの集大成による語感分析法を開発、マーケティング分野に新境地を開いた、感性分析の第一人者。また、その過程で性、年代によって異なる脳の性質を研究対象とし、日常に寄り添った男女脳論を展開している。人工知能研究を礎に、脳科学コメンテーター、感性アナリスト、随筆家としても活躍。著書に『恋愛脳』『成熟脳』(新潮文庫)、『人間のトリセツ ~人工知能への手紙』(ちくま新書)、『妻のトリセツ』(講談社+α新書)、『定年夫婦のトリセツ』(SB新書)、『息子のトリセツ』(扶桑社新書)、『思春期のトリセツ』(小学館新書)、『恋のトリセツ』(河出新書)など多数。

「2022年 『女女問題のトリセツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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