シェイクスピア全集28 尺には尺を (ちくま文庫 し 10-28)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480045287

感想・レビュー・書評

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  •  人間にはたくさんの欲望があり、そのうちの一つである性欲とは、人間の根源的な欲望である。しかし、この欲望は、時に誤った方向へと転換すると、痛い目にあう。本作は、情欲が原因で死刑を宣告される人物と、その妹の動向が見どころである。公爵の代わりとして、一時的に任命されたアンジェロは、禁欲的で、世間から好意的に見られた。ところが、いったん権力の座につくと、次から次へと厳格な法を整備する。このように、本作は、欲望に関する対立構造に忠告すると、それぞれが、なぜこのような振る舞いをするのか、その人物ならではの事情を想像できる。人間とは一貫した性格を持ちえず、矛盾を抱えながら生活する。このように、人間の限界、脆弱さが、読んでいくとわかる。

  • 2023年の国立劇場公演を見て、公演の元となった小田島雄志訳も読んだが、最新の解釈なども知りたくて、新しい松岡和子訳も読んでみた。
    小田島訳でもそうだったが、長年死文化していた姦淫罪をアンジェロが原理主義的に有効化したこと自体は、公爵自身の思惑どおりであることが書いたものを読むとより明確で、しかも公爵は今までの運用を転じて自分が厳格化すると自分の圧政に見えてしまうから、自分が姿くらましている間に代理のアンジェロにやらせようと明言している、とんでもない卑怯者。そんな公爵は、アンジェロが婚約者にした非道い仕打ち(持参金失ったら相手を誹謗中傷して相手のせいにして婚約破棄)のことを熟知していながら、自分の代理にしている。支離滅裂でなければ、アンジェロを陥れようとしているのか。そんな人非人の公爵がラストで脈絡なく研修修道尼のイザベラに求婚する(気の早さと強引さはアンジェロと同じだが、ヤリ捨てではなく結婚しようとするところは大きな差)のはグロテスクでたまらない。しかもイザベラは、処女を犠牲にするくらいなら兄の死刑が執行されても仕方ないと思うほど自らの処女性を重視している。国立劇場演出でも、イザベラは、ええええ? 何これ? という体で観客席に驚愕と困惑を示しながら公爵に引きずられて退出する幕切れだったが、客席では笑いが起こり、演出の意図通りとはいえ、あんまり笑えねーグロさだと感じずにいられなかった。訳者があとがきで、弁が立つこと(沈黙は修道会の戒律の1つ)や、自分の貞節を犠牲にすることを求める兄への怒りをマタイ書の「兄弟に対して怒る者」云々を引いて、褒められたものでないと批判するのは、イザベラにとって厳しすぎると感じた。また、マリアナは神父姿の公爵と以前から何度か会っている風なのは一体どうしたことか、注記がほしかった。公爵は前からおしのびで変装してマリアナに会いに行っていたのか? 何のために??

  • 「マクベス」には劣ると思うが面白かった。
    公爵がよく分からん。途中から全部公爵の筋書き通りに話が進んでいき、最後にはどんでん返しがあるのかと思いきや、ない。
    シェイクスピアは皮肉っぽい人物だと勝手に思い込んでいたので、高い地位と権力のある人物に物語の主導権まで握らせちゃうのなんで?となった。

  • 翻訳でこれをもとにした実験が記載されていたので読んだ。最後がもっと説明があってもよかったような気がするが、起承転結がはっきりとしている。

  • セキララすぎる欲望をぶつける人ばっかりな話orz なんとなく“男はみんなこうしたもの” って気もします・・ラストは結婚式なのですが・・式の後の人生は・・墓場かも・・ ひどいけど 実際にありそうで 恐ろしい話でした。

著者プロフィール

1564-1616。イギリスの劇作家・詩人。悲劇喜劇史劇をふくむ36編の脚本と154編からなる14行詩(ソネット)を書いた。その作品の言語的豊かさ、演劇的世界観・人間像は現代においてもなお、魅力を放ち続けている。

「2019年 『ヘンリー五世 シェイクスピア全集30巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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