世界史の誕生 (ちくまライブラリー 73)

著者 :
  • 筑摩書房
3.89
  • (5)
  • (7)
  • (5)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 63
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480051738

作品紹介・あらすじ

地中海文明と中国文明の運命を変え、東洋史と西洋史の垣根を超えた世界史を可能にした、中央ユーラシアの草原の民の活動。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 20年以上前に書かれた本ではあるが、今読んでも十分に勉強になる。

    日本では歴史(教育)が日本史、世界史(東洋史、西洋史)と分かれていて世界全体の流れが把握できないと主張する著者が、改めてその大きな流れを整理したもの。エッセンスは序章と最終章に示されている。

    耳慣れない地名や部族名が出て来て十分に理解できているのか甚だ自信はないが、要するにユーラシア大陸の歴史は中央アジア辺りの遊牧民族によって形作られ、現在もその残滓を受け継いでいるということだ。ロシア然り、中国然り、イラン然り、インド然り、トルコ然りである。

    中国は最近でこそ大国然としているが、自分たちが受け継いでいると主張する清国はモンゴルの国であり、中国地域はその支配を受けているに過ぎなかった。その中国が現在チベットを支配しているのは純粋に侵略であり、歴史的領土であると主張するのは夜郎自大と言わざるを得ない。
    長い中国の歴史の中で、他民族の支配を受けずにいた期間は決して長くない。現中国共産党政権は、正にその敵を討とうとしているのか。

    百年単位で見れば、ユーラシア大陸で国境というか民族の居留地が安定したことはほとんどない。第2次大戦以降固定化されたかに見える国境も、またいつか変わるのだろう。

  • 中国北部および中央アジアに次々と現れる遊牧民が歴史に与えた影響が大きいことを改めて知った。

    ・匈奴:農耕民との交易のために秦の中国統一に対抗する必要からモンゴル高原を統一。前200年に漢の高祖を包囲、和睦して以降、中国皇女の嫁入りと中国からの毎年の贈物、君主同士の兄弟格の交際が13世紀まで定例化した。南北に分裂した後、北匈奴は鮮卑に討たれ、行方知れずになった。
    ・鮮卑:五胡十六国の乱を平定して中国を統一。
    ・突厥(トルコ):555年に柔然を滅ぼした後、故郷のジュンガル盆地からモンゴル高原に移動。東西に分裂後、唐に滅ぼされた。682年に第二次トルコ帝国を建設。
    ・モンゴル:11世紀の頃はバイカル湖の東に遊牧。モンゴル高原東北部のタタル部族を完全に滅ぼして、1206年モンゴル帝国を建国。
    ・黄金のオルド:チンギス・ハーンの長男ジョチにカザフスタンが与えられ、チンギス・ハーンの後継者オゴデイ・ハーンはジョチの次男バトゥの部隊を率いて、キプチャク人、ルーシ、北コーカサスの諸部族を征服した。現在のタタル人、カザフ人、ウズベク人はジョチ家とともに移住したモンゴル人の後裔。

    ・スキュタイ:ドン河からドナウ河までの草原で千年近く繁栄した後、ゴート人に滅ぼされた。
    ・フン:匈奴。5世紀半ばに消滅。
    ・アヴァル(烏丸):柔然にモンゴル高原から追い払われた後、6世紀半ばに北コーカサス、ドナウ川流域に進出してスラブを征服。796年にフランクに討たれたが、9世紀末にハンガリー人が移動してくるときまで、この地に住んでいた。
    ・スラブ:ドニェストル河上流域に住んでいたが、フン人消滅後に四方に広がった。アヴァルとともにバルカン半島、ヴォルガ川上流、エルベ河に進出した。
    ・ブルガル:北コーカサス草原の遊牧民で、679年にドナウ川下流域のスラブ人を征服し、ブルガリアを建国した。
    ・ルーシ:スカンジナヴィアから移住したノルマン人で、9世紀にリューリクが東スラブ人とフィン人の土地に建国。ブルガリアでできたキリル文字でスラブ語が書けるようになったため、スラブ人の言葉を話すようになった。1237年にモンゴル軍が侵入して以降、ハーンに臣従する「タタルの軛」の時代が500年間も続き、ロシア文明の基礎となった。シベリアの進出は1581年に始まり、1649年にオホーツク海とベーリング海に到達した。実行したカザク(コサック)人はロシア正教に改宗したモンゴル人。1613年にリューリク家でもモンゴル人でもないロマノフ朝が建国。1783年にクリミアを併合して黄金のオルドが滅亡した。
    ・オスマン帝国:オスマン家は13世紀にアナトリアに入って駐屯したモンゴル軍の出身。

  • フェニキア人がつくったカルタゴを日本になぞらえている。地中海を瀬戸内海に置き換えての論理展開は説得力がある。要するに、人間が考えつくことには限界があるということだ。視点が中国中心であり、新羅には重きを置いていない。この著者の他の本も読んでいるのだが、アメリカ型のストーリー展開である。世の中は論理展開がすべてであるという思想だ。歴史がない国家は西部開拓のように常にフロンティアを追い求めるしか無いのだ。逆に歴史がある国家は、その解釈にとらわれてしまう。その知識量に関しては圧倒されることは確かだ。

  • 200707

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

東洋史家

「2018年 『真実の中国史[1840-1949]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岡田英弘の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×