万葉集

  • 筑摩書房 (1994年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784480056061

感想・レビュー・書評

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  • 『万葉集』において「歌」という文芸のジャンルが形成されたという観点から、そこに収められている歌を読み説く試みがなされています。

    「写生」という理念を掲げて近代短歌の創成をおこなった正岡子規は、近代的な文芸としての『万葉集』の魅力を発見しました。もちろんこんにちでは、『万葉集』をもちあげて『古今和歌集』を貶める子規の見かたがそのまま受け入れられているわけではありません。それにもかかわらずわれわれは、近代文学に特有であるはずの普遍的な性格を『万葉集』のうちに見いだそうとする傾向を、いまもなお捨ててはいません。たとえば、天皇から東国の庶民にいたるまで、さまざまな身分や境遇の人びとの率直な思いが『万葉集』の歌に見てとることができるといった言説は、ひろく受け入れられています。

    本書の議論は、こうした『万葉集』の見かたを解体するものということができます。現代のわれわれが『万葉集』の歌に、東国の庶民の心理をじかに感じとることができるように感じるのは、そこに採用されている歌が、中央の貴族たちのまなざしによってとらえられたかぎりでの、東国の庶民の心理だからなのです。そして、こうした普遍性を可能にしているのが、「歌」という文芸のジャンルであり、『万葉集』においてまさしくそうしたジャンルが形成されたのだと著者は論じています。

    『万葉集』の歌に古代日本のロマンを求める読者の憧憬に水を差すような内容をふくんでいますが、著者のねらいはもちろんそのようなところにあるのではなく、文芸のジャンルがわれわれの思考や感情のありかたにどのように影響しているのかということを明らかにし、文学の成立根拠をも問いなおすような見かたを開くところにあるのではないかと考えます。

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著者プロフィール

1943年東京生まれ。東京大学大学院博士課程修了。博士(文学)。武蔵大学名誉教授。著書に『古代和歌の発生』(東京大学出版会、1988年)、『神話・物語の文芸史』(ぺりかん社、1992年)、『古代都市の文芸生活』(大修館書店、1994年)『和文学の成立 奈良平安初期文学史論』(若草書房、1998年)、『平安京の都市生活と郊外』(歴史文化ライブラリー、吉川弘文館、1998年)、『物語文学の誕生 万葉集からの文学史』(角川叢書、2000年)、『誤読された万葉集』(新潮新書、2004年)、『日本文学の流れ』(岩波書店、2010年)ほか。

「2015年 『文学はなぜ必要か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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