ニーチェ入門 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
3.60
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本棚登録 : 1233
レビュー : 96
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480056085

作品紹介・あらすじ

ルサンチマンの泥沼のなかで「神」や「超越的な真理」に逃避するのか、あるいは「永遠回帰」という「聖なる虚言」に賭け、自らの生を大いに肯定するのか?二十世紀思想最大の震源地ニーチェの核心を果敢につかみ、その可能性を来世紀に向けて大胆に提示する、危険なほどに刺激的な入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 竹田青嗣 「 ニーチェ 入門 」

    ニーチェの思想の特徴〜キリスト教批判、ルサンチマン批判、ニヒリズム、超人、永遠回帰〜を わかりやすく説明した本。

    ニーチェ=ナチズム=危険思想という先入観がなくなる。ニーチェ思想を ポストマルクス主義としてアプローチし、権力の解体を思想基盤としている点に、人間的で 現実的な思想性を感じた。

    「ツァラトゥストラ」「権力の意志」は読んでみたい

    ニーチェ思想=権力の解体
    *マルクス主義、キリスト教、ソクラテスを批判〜それらにより 知や認識が絶対化されると 権力を支える道具になる
    *ルサンチマン(弱者の心)の批判
    *ニヒリズムの克服→ ニヒリズム=神なる超越的根拠の喪失

    ニーチェのディオニュソス的人間観
    *秩序化、形式化された世界にカオスを賦活
    *生の是認=人間は 欲望の本性(生への意志)によって 苦しみを作り出す〜この欲望以外に 人間の生の理由はありえない
    *文明は新しい矛盾をもたらしたが、否定すべきでない→人間存在の本質=矛盾を引き受けつつ生きようと欲すること
    *悲劇=矛盾に関わらず 人間は生を欲すること

    ニーチェの批判対象
    *マルクス主義=私的所有と自由市場の廃止→巨大な権力国家を作ってしまった
    *ソクラテス=知識と理性により思考→真理に達する→真理こそ ヨーロッパの形而上学を貫く最大の迷妄

    歴史の目標を人間以外のものにおくことへの抵抗
    *キリスト教=最後の審判、カント=永久平和、プラトン=イデア などが 歴史の目標〜実存しないものを目標とすることに抵抗
    *ニーチェの歴史の目標=より高い人間(種)の創出

    キリスト教批判
    *人間の理想の原型=キリスト教が作った→キリスト教の人間観=ニヒリズム(虚無への意志)
    *キリスト教は 自分を思うことは悪。まずは神、次に隣人を思う
    *神という超越的理想を向こう側に立て、自分の無価値を確かめる→生を否定する意志こそキリスト教のニヒリズムの本質

    「事実なるものはない、ただ解釈だけがある」
    *絶対的な見方、完全な観点は存在しない

    超人
    *キリスト教、哲学の人間のこれまでの理想には ルサンチマンを内包している→生の否定
    *神の死=人間的価値の抹消→ニヒリズム
    *ニヒリズムを徹底して ニヒリズムを克服するしかない=新しい価値の根拠、新しい価値の目標を打ち立てる
    *新しい価値の根拠=力への意志。新しい価値の目標=超人の創出

    ルサンチマン批判
    *平等主義、平均化思想→他人の幸福を妬む心性→隙さえあれば 自分が上に立ちたい社会→人間の凡庸化
    *弱者に必要なのは より高い人間の生き方をモデルとすること

    永遠回帰
    *永遠回帰の思想=無神論的宗教であり、物理学的形而上学
    *世界は同一の状態を永遠に反復している→世界は神によって創造されたとするキリスト教的世界観の否定
    *世界は始まりも終わりもなく、目的も意味もない。ただ存在しているだけ→ニヒリズムの徹底により 理想への回帰を封じる

  • 自己への愛を通してはじめて他者を愛することができる

  •  ニーチェの名前をよく目にするようになったので、少しは知っておいた方がいいかと思い、本の帯にある「最も読まれている入門書です。」という言葉にひかれて買いました。

     さて、著者は、恐らく大変分かりやすくニーチェの思想を解説してくださっているのだと思いますが、残念ながら、私にはほとんど理解できませんでした。もちろん、まだ1回読み終わっただけですので、再度、再々度と読み直せば、もう少し私の理解が進むのかも知れません。しかし、予備知識のない身には、理解するには厳しい内容、というのが率直なところです。

     そもそも、ニーチェの時代と今の我々とではおかれている環境があまりにも違います。ですから、同じことを考えたとしても、受け止め方に相当違いがあるはずです。p.157に、こんなことが書かれていました。『ところで、現在のわたしたちにとっては、これがなぜそれほど戦慄すべきものであるか受け取りにくい面があるかもしれない。というのは、無宗教が常識になっている社会の現代人なら、誰でもうすうすは、「世界の外側」に「超越的な意味」など何も存在しないし、したがって「死んだらそれきり」であるという感覚をもっているからだ。』これは、「永遠回帰」について説明されている途中に出てくるものですが、キリスト教的な考え方が支配的な当時と、無宗教が常識になっている現代とでは、発想が違って当たり前だと思うのです。ですから、発想のベースが違うので、理解が難しいのです。多分。

     とはいえ、道徳に対する考察や、永遠回帰、あるいは美や芸術における「力の意志」という発想は、新しい視点に気付かされた瞬間もありました。これであきらめるのではなく、もう少し探究してみたい気分ではあります。せっかくの10連休ですので、普段は読むことがないであろう本に挑戦できたのは、よい収穫でした。

  • 永遠回帰のとこわかりづらい

  • もちろん難しかった。けど最後まで読み通すことは出来た。竹田先生の著作との相性が良いことは分かった。難しいけどすこし読みやすい。先生曰く「哲学」や「思想」が「善きこと」を求める努力で、その「善きこと」への志を持つなら、是非とも一度はニーチェ思想の深い森の中を通ってみることをすすめる。とあるのでオレはようやくその森の存在を知ることが出来たのだと思う。その森は、きっと想像以上に深くて広大で鬱蒼とした暗くてイヤなところだろうけど、途中で急に湖が出てきたり、屋敷があったり見たこともない鳥が啼いていたりしそうだ。そこにはきっと色んなまだ見ぬ未知の世界が広がっている。そこで迷って森から出られなくならない様にパンくずを落として注意しながら探検を続けたい。探検しながら自分なりの地図を、思想の地図を描けたらこれはとっても嬉しいことだなあ。きっと。

  • <blockquote>社会主義は、資本主義のいわば「金儲けゲーム」を取り払ったその代わりに、専制的な「権力ゲーム」の社会を作り上げてしまったのだ。/マルクス主義思想は、もともと「いかに国家の権力を死滅させるか」という課題を中心の目標としていた。それが、権力を死滅させるかわりに、自由主義国家以上の極端な権力ゲームの国家をつくってしまった。 p12</blockquote>

    <blockquote>「知」や「認識」が何らかの仕方で絶対化されると、それは「権力」を支える強力な道具になりうる。ニーチはキリスト教に対してそのような「正しさ=真理」の危険性を指摘したのだが、ドゥルーズをはじめとするポスト・モダニストたいてゃ、そこに20世紀の「知」と「権力」の問題を読み解く重要なキーを見出したのだ。 p17</blockquote>

    <blockquote>ヨーロッパ独自の人間の価値観、それは「何のために生きるか(苦しむか)」という問いに対して「一つの意味」を与えつづけてきた。「神のために」、あるいは「あの世の生のために」という意味を。これが「禁欲主義的理想」だが、「あえてこれをはっきりと規定するなら」それは「虚無への意志であり、(略)生のもっとも基本的な諸原則にたいする反逆」だと言える。 p98</blockquote>

    <blockquote>「解釈」とは、世界が何であるかについていわば任意の「物語」を立てることである。(中略)そしてその中で、いわばもっとも力をもった(説得性をもった、または権力をもった)「解釈」がこれまで「真理」と呼ばれていたにすぎない。 p114</blockquote>

    <blockquote>では「解釈」の本質は何か。それは「価値評価」にほかならない。「価値評価」は何を根拠としているのか。生命体の、それと意識されることも明示されることもない「保存・生長の諸条件」を原則とする。「すべての生あるもの」はこの「保存・生長」を不断の要請として自らに課している。これをニーチェは「力」と呼ぶ。/この力が世界をさまざまに「解釈」する。その根本は、何が「有用」で、何が「不可欠」で何が「利益」かということだ。だからこそさまざまな「生」の数だけ、さまざまな「真理」が存在することになるのである。 p117</blockquote>



    【目次】
    1.はじめのニーチェ
     生涯
     ショーペンハウアーとワーグナー
     『悲劇の誕生』について
     『反時代的考察』について
    2.批判する獅子
     キリスト教批判 『道徳の系譜』について
     「道徳」とルサンチマン
     「真理」について
     ヨーロッパのニヒリズム
    3.価値の顛倒
     「超人」の思想
     「永遠回帰」の思想
    4.「力」の思想
     徹底的認識としての(認識論の破壊としての)「力への意志」
     生理学としての「力への意志」
     「価値」の基本理論としての「力への意志」
     実存の規範としての「力への意志」

  • TSa

  • なんという本だろう。衝撃を受けた。今までニーチェと言えば「神は死んだ」といったフレーズだけでろくに理解も(今も理解はしていないが)しておらず素通りしていたがそれは大間違いだと気がついた。
    ニーチェの指摘したヨーロッパの病理がまさかキリスト教という宗教から生まれていたことや、真理を求めるといった普遍的に正しいと思われるような姿勢が逆に人間の弱さといった部分を、まさにルサンチマン的な態度であるということは衝撃を受けた。ルサンチマンやニヒリズムといった概念は薄く知っていたが、それが今現在の社会において特に色濃くなっているところにニーチェが指摘した病理の深さが図られる気がした。徹底したニヒリズムの先にある力への意思というものがなく、安易に何か絶対的なものや主導してくれるものに飛びつく様はトランプなどが人気になってしまう要因なんだと理解できた。しかしニーチェをこの本で学んだが、永遠回帰の部分と力への意思の部分は難解であり未だ咀嚼しきれていない。今度は道徳の系譜にチャレンジさしてみたいと思う。

  • ニーチェの本を読んだのはこれが初めてであったが、とても読みやすく、考えさせられ、面白かった。何度も読み返して更に深い内容の本を探してみたいと思った。
    ニヒリズムの徹底としての神学世界観の否定は非常に共感できるもので、現代のポストモダニズムがこの考え方を土台にしているのは、今を生きる人々は特に日本では誰もが意識せずに受け入れている事実なのではないかと思う。ナチズム・ファシズムの根拠にもなりがちな「超人の思想」に関しても丁寧な解説があり、筆者の独自の解釈も但し書きを踏まえながらきちんと書いているのでとても安心して読み進めることが出来た。これは多くの人に読んでほしい本。

  • ある企業の経営者が影響を受けた本との事で興味を持ちました。2001年宇宙の旅よく分からないままでこの歳になってしまいましたがこれでやっと分かりました。現在の混沌とした世界情勢を考えるうえでも役立ちます。

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著者プロフィール

1947年生まれ。哲学者。早稲田大学政治経済学部卒業。現在、早稲田大学国際教養学部教授。主な著書に、『プラトン入門』、『言語的思考へ』、『人間的自由の条件』、『完全解読 カント『純粋理性批判』』、『完全解読 フッサール『現象学の理念』』ほか多数。

「2017年 『ハイデガー入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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