- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480056146
作品紹介・あらすじ
「忠臣蔵」事件とは一つのコードネームである。時代は元禄の末。歴史では赤穂事件といわれる江戸城内の刃傷・浅野内匠頭の切腹・その遺臣団の吉良邸討入りと続く一連の出来事は、やがて国民伝説にまでなった。事件は当初から文学化されて世間にひろまった。その文学性のオーラを取り払ったら、そこに何が見えてくるか。史実は時として文学よりも深い光を放つ。この一冊は史料から聞こえてくる元禄武士のなまの肉声を聞こうとする。
感想・レビュー・書評
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赤穂浪士討ち入り事件の史実を解明している本です。
この事件にかんする一般の人びとの知識は、事件が歌舞伎や浄瑠璃の題材としてとりあげられたことで、すでに多くの脚色を受けたものになっています。そこで、事件の史実を明らかにしようとするばあい、そうした脚色された常識を払いのけて、一次史料にもとづいてなにが事実であったのかということをしらべる必要があります。
ところが著者は、この事件を記した一次史料のなかにも、それぞれの立場からの先入観が入り込んでおり、ばあいによってはたがいに矛盾する点が存在していると指摘します。そして、まさしくそのようなところに、この事件の「生々しい灰色のリアリティ」を読みとることができると著者は考えています。
こうした観点から、事実そのものだけでなく、事件についての史料を記した人びとの肉声にせまることが、本書の目的とされています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
赤穂浪士の討ち入り事件を、ことの発端となった刃傷事件から討ち入り後の沙汰に至るまで、どちらか一方に肩入れすることもなく数々の文献を基に、その背景や関係者達の思惑を分析している。
刃傷事件→四十七士達の葛藤と結束→討ち入り→切腹、で赤穂浪士達は本懐を遂げた、というのが一般的なイメージになるが、戦国時代を終えて太平の世になって久しい時期に起きた血生臭い事件だ。吉良上野介が「襲われて死ぬまで、何故自分が狙われなければならないのか理解できなかったのでは」という分析が興味深かった。
どの立場でこの一連の事件を見るかによって解釈がだいぶ異なってくる。映画とTVドラマで忠臣蔵をしっかり見たことがないので、一度くらい見ておき、その作品はどんな解釈で描くのかを確認してみたいと思った。