忠臣蔵: 赤穂事件・史実の肉声 (ちくま新書 14)

著者 :
  • 筑摩書房
3.27
  • (1)
  • (3)
  • (10)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 52
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480056146

作品紹介・あらすじ

「忠臣蔵」事件とは一つのコードネームである。時代は元禄の末。歴史では赤穂事件といわれる江戸城内の刃傷・浅野内匠頭の切腹・その遺臣団の吉良邸討入りと続く一連の出来事は、やがて国民伝説にまでなった。事件は当初から文学化されて世間にひろまった。その文学性のオーラを取り払ったら、そこに何が見えてくるか。史実は時として文学よりも深い光を放つ。この一冊は史料から聞こえてくる元禄武士のなまの肉声を聞こうとする。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 赤穂浪士討ち入り事件の史実を解明している本です。

    この事件にかんする一般の人びとの知識は、事件が歌舞伎や浄瑠璃の題材としてとりあげられたことで、すでに多くの脚色を受けたものになっています。そこで、事件の史実を明らかにしようとするばあい、そうした脚色された常識を払いのけて、一次史料にもとづいてなにが事実であったのかということをしらべる必要があります。

    ところが著者は、この事件を記した一次史料のなかにも、それぞれの立場からの先入観が入り込んでおり、ばあいによってはたがいに矛盾する点が存在していると指摘します。そして、まさしくそのようなところに、この事件の「生々しい灰色のリアリティ」を読みとることができると著者は考えています。

    こうした観点から、事実そのものだけでなく、事件についての史料を記した人びとの肉声にせまることが、本書の目的とされています。

  • 赤穂浪士の討ち入り事件を、ことの発端となった刃傷事件から討ち入り後の沙汰に至るまで、どちらか一方に肩入れすることもなく数々の文献を基に、その背景や関係者達の思惑を分析している。

    刃傷事件→四十七士達の葛藤と結束→討ち入り→切腹、で赤穂浪士達は本懐を遂げた、というのが一般的なイメージになるが、戦国時代を終えて太平の世になって久しい時期に起きた血生臭い事件だ。吉良上野介が「襲われて死ぬまで、何故自分が狙われなければならないのか理解できなかったのでは」という分析が興味深かった。

    どの立場でこの一連の事件を見るかによって解釈がだいぶ異なってくる。映画とTVドラマで忠臣蔵をしっかり見たことがないので、一度くらい見ておき、その作品はどんな解釈で描くのかを確認してみたいと思った。

  • 1994年刊。著者は神戸大学文学部教授。「仮名手本忠臣蔵」であまりにも著名になりすぎ、その後、文学作品として数多くの小説、劇、映画、テレビドラマなどで描かれた「赤穂浪士吉良邸討入事件」。その現実の模様を、信頼できる文書で複合的に解読しようとするもの。面白い書かと言われれば迷うが、忠臣蔵のドラマなどを見ていれば、興味深いかもしれない。本書にあるごとく、吉良邸討入自体ではなく、事件後、上杉が何等の反駁・仇討のための行動を起こさなかったことが「戦国の終焉」「文治主義の浸透」を雄弁に語っているのは言い得て妙。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

野口武彦(のぐち・たけひこ)
1937年東京生まれ。文芸評論家。早稲田大学第一文学部卒業。東京大学大学院博士課程中退。神戸大学文学部教授を退官後、著述に専念する。日本文学・日本思想史専攻。1973年、『谷崎潤一郎論』(中央公論社)で亀井勝一郎賞、1980年、『江戸の歴史家─歴史という名の毒』(ちくま学芸文庫)でサントリー学芸賞受賞。1986年、『「源氏物語」を江戸から読む』(講談社学術文庫)で芸術選奨文部大臣賞、1992年、『江戸の兵学思想』(中公文庫)で和辻哲郎文化賞、2003年、『幕末気分』(講談社文庫)で読売文学賞、2021年に兵庫県文化賞を受賞。著書多数。最近の作品に『元禄六花撰』『元禄五芒星』(いずれも講談社)などがある。


「2022年 『開化奇譚集 明治伏魔殿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

野口武彦の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×