群衆-モンスターの誕生 (ちくま新書 56)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480056566

作品紹介・あらすじ

群衆とは何か。近代資本主義の誕生とともに、歴史と社会の表舞台に主役として登場してきた群衆。二十世紀のナチズムもスターリニズムも群衆社会がつくりだした全体主義の脅威であったことは記憶にあたらしい。一体われわれは、激流のような群衆化傾向に対して抵抗できるのだろうか。ポー、ボードレールやニーチェ、メアリー・シェリーらの群衆への驚き、カネッティやモスコヴィッシの群衆分析、トクヴィルの民主主義論、ルボン、タルド、フロイトらの心理学的考察など、さまざまな視点からその怪物的性格を明らかにし、現代人の存在のあり方を根源から鋭く問う群衆社会批判。

感想・レビュー・書評

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  • 近代以降「群衆」が思想的な問題となった経緯と理由について論じている本です。

    著者は、近代資本主義が市民社会の理念をも飲み込んでいくことで、寄る辺のないまま個人として投げ出されてしまった人びとが「群衆」を形成したという考えを提示しています。そのうえで、マルクスはこうした群衆が「階級的自覚」を獲得することで革命が実現すると考え、ニーチェは群衆への呪詛とともにその「超人思想」を立ち上げたことをとりあげ、近代から現代にいたる思想のなかで「群衆」というテーマが成立したことを明らかにしています。

    後半は、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を群衆についての寓話として読み解く試みが示されるとともに、トクヴィル、ルボン、タルドといった思想家たちが群衆についてどのように論じていたのかを解説しています。

    本書は、思想家たちが群衆の登場に驚き、それを論じるべきテーマとして認識したこと自体が、思想史上の大きな問題であったという視座に立って、思想としての「群衆」論の形成について考察しています。こうした著者の視座そのものにおもしろさをおぼえました。

  • 「群衆-モンスターの誕生」今村仁司著、ちくま新書、1996.01.20
    202p ¥680 C0210 (2019.04.25読了)(2015.01.16購入)

    【目次】
    プロローグ 群衆への問い
    第1部 群衆の本質
    1 群衆の本質
    2 群衆一般
    3 群衆の類型
    4 近代群衆
    5 都市と群衆
    6 群衆と理性
    第2部 群衆の分析
    はじめに
    1 恐怖と魅惑―『フランケンシュタイン』
    2 多数者の専制
    3 群衆の精神
    エピローグ 批判と抵抗
    あとがき
    文献案内

    ☆関連図書(既読)
    「群衆心理」ギュスターヴ・ル・ボン著・桜井成夫訳、角川文庫、1956.03.05
    「フランケンシュタイン」シェリー夫人著・山本政喜訳、角川文庫、1953.09.30
    「メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』」廣野由美子著、NHK出版、2015.02.01
    「ツァラツストラかく語りき 上・下」ニーチェ著、竹山 道雄訳、新潮文庫、1953.01.10
    「ニーチェ『ツァラトゥストラ』」西研著、NHK出版、2011.04.01
    「共産党宣言」マルクス・エンゲルス著、岩波文庫、1951.12.10
    「オルテガ『大衆の反逆』」中島岳志著、NHK出版、2019.02.01
    「大衆への反逆」西部邁著、文芸春秋、1983.07.01
    (「BOOK」データベースより)amazon
    群衆とは何か。近代資本主義の誕生とともに、歴史と社会の表舞台に主役として登場してきた群衆。二十世紀のナチズムもスターリニズムも群衆社会がつくりだした全体主義の脅威であったことは記憶にあたらしい。一体われわれは、激流のような群衆化傾向に対して抵抗できるのだろうか。ポー、ボードレールやニーチェ、メアリー・シェリーらの群衆への驚き、カネッティやモスコヴィッシの群衆分析、トクヴィルの民主主義論、ルボン、タルド、フロイトらの心理学的考察など、さまざまな視点からその怪物的性格を明らかにし、現代人の存在のあり方を根源から鋭く問う群衆社会批判。

  • 大衆批判本。

    2部構成。

    第1部は群衆のの理論的考察から始っており,
    少々(?)難解です。

    第2部から読み,群衆の具体的イメージを作ってから,
    第1部を読むとよい――あとがきにも,そのように書かれている。

    第2部のトクヴィルの民主主義論を読むだけでも,
    得るものは多いと思う。

  • 群衆研究の案内書。
    といっても、中身はさほどやさしくなく、過去の群衆研究を踏襲したうえで近代資本主義社会における群衆を捉えようとする好著。
    前半はカネッティの『群衆と権力』を引用しながら、理論的な解説・考察がつづきます。
    後半はポーやマルクス、シェリーの著作から、当時彼らの観たであろう群衆性を読み取ろうというもの。
    とくに群衆性と無縁に思える『フランケンシュタイン』の読解は圧巻でした。
    近代的・科学的啓蒙主義の粋ともいえる、産業革命(フランケンシュタイン)とともに、都市には、貧しい労働者階級の群集(怪物)があふれかえる。

    群衆化しやすい下層民対思慮深い知識人というステレオタイプを斥けて、近代資本主義社会は誰もが群衆化を免れない時代であるという主張はもっと浸透してほしいと思います(誰もが危機感をもつという意味で・・・)。
    現代を知るうえで、群衆に着目してみるのはかなり有益だと思います。

  • 自前購入希望

  • [ 内容 ]
    群衆とは何か。
    近代資本主義の誕生とともに、歴史と社会の表舞台に主役として登場してきた群衆。
    二十世紀のナチズムもスターリニズムも群衆社会がつくりだした全体主義の脅威であったことは記憶にあたらしい。
    一体われわれは、激流のような群衆化傾向に対して抵抗できるのだろうか。
    ポー、ボードレールやニーチェ、メアリー・シェリーらの群衆への驚き、カネッティやモスコヴィッシの群衆分析、トクヴィルの民主主義論、ルボン、タルド、フロイトらの心理学的考察など、さまざまな視点からその怪物的性格を明らかにし、現代人の存在のあり方を根源から鋭く問う群衆社会批判。

    [ 目次 ]
    第1部 群衆の本質
    第2部 群衆の分析

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 十九世紀に、「労働貧民」として知識人に発見された群衆が、その後どんなふうにして近代社会の主役にまで上り詰めたのかを、わかりやすく説く。ただし、今村の多くの本がそうであるように、説明が現代にまで十分に届いていない、と僕は思う。もっとも、今村は意識的に守備範囲を近代に限定しているようだ。(石原千秋『教養としての大学受験国語』192頁で推薦)

  • 群衆化してモンスターになる人間、バッタと同じか。ブッシュは民主主義的デスポニズムの典型的デスポットだ。

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著者プロフィール

今村 仁司(いまむら・ひとし):1942-2007年。岐阜県生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。元東京経済大学教授。専攻は社会思想史、社会哲学。

「2024年 『資本論 第一巻 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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