民俗学への招待 (ちくま新書 64)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480056641

作品紹介・あらすじ

なぜ私たちは正月に門松をたて雑煮を食べ、晴れ着を着るのだろうか。雛祭りやクリスマスなどの年中行事。富士講などの民間信仰。震災とユートピア。真夏の夜を賑わせる幽霊や妖怪たち。「トイレの花子さん」や「メリーさん」と呼ばれる老婆など、超高層ビルの片隅で生まれては消える都市のフォークロア。民俗学のまなざしから見えてくるものはいったい何か。柳田国男、南方熊楠、折口信夫、渋谷敬三などの民俗学研究の豊かな遺産を受け継ぎながら、世相の根っこから掘り起こされた日本人の文化の深層を探る、現代人のための民俗学入門。

感想・レビュー・書評

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  • ・民俗学は、現代の人々の意識・行動を律するもの、「ささら」でいうところの持ち手部分を、伝承から明らかにしていくというユニークで興味深い学問分野。本書は様々な民間伝承がとりあげられ、読み物として面白い。
    ・一方、伝承の列挙の印象が否めず、この“持ち手”の部分はなんなのか、それが今日にどう影響しているのかといった踏み込んだ記述はみられなかった。また、タイトルが示す入門書としての期待に照らせば、この学問分野の目的、体系、主要な理論と到達点、研究手法、他の学問分野との異同、今後の研究領域なども触れられていない。
    ・民間伝承という研究史料はどんどん失われていく。この分野で必要なのは研究手法のイノベーションではないか。古文書や音声データの大量解析など?

  • 民俗学が明らかにしてきたさまざまな事例を紹介しながら、そこにかいま見られる心性が、現代の日本の生活文化にまでつながっていることを論じた本です。

    1996年に刊行された本ということもあって、前年に起こった阪神大震災やオウム真理教事件などに言及しながら、大地震と世直しをめぐる過去の人びとの思考のありかたや、富士講、ミロク信仰などを例に「日本のメシア」ともいうべき発想が存在したことが紹介されています。また、学校の怪談に代表される現代のフォークロアについても言及がなされており、現代社会について民俗学的な観点からの考察がなされるべきであるという主張が展開されています。

    雑多なテーマがあつかわれているという印象で、本書によって民俗学についての体系的な理解を得ることはむずかしいように思いますが、民俗学的な思考の実例がさまざまなかたちで示されており、読者の興味を引こうとする著者の努力はうかがうことができるように感じました。

  • 「物言う魚」が人に対して警告などを伝えにくるという伝承も為になったけれど、阪神淡路大震災の1ヶ月前に大アナゴ?か何かが釣れたという話がもしかしたら何かを伝えにきてたのかも、という話がずっと頭に残ってる

  • 前回読んだ島田恭則さんの新書に続いて、民俗学の入門的読物。この2つを読んで自分自身の生活とそこに密着している民俗学的な視点がわかるようになってきた。

    私の場合、祖母がお小遣いやお年玉をくれる時は仏壇に供えてからくれる。感謝のお祈りもする。また、家族旅行する時は仏壇にお祈りしてから出かけて、帰ってきたら無事帰った感謝と報告をする。
    学校で、汚いものや嫌なもの「○○菌」のようなものを触ったら、他の人にタッチすればその人へ菌が移る。あとバリアを言えばうつらない。タッチしても無効。(ケガレとか禊のような考え?)
    …などを今は思い出している。

    印象に残ったこと
    近所の祠に二十三夜の月待ちを偲んだ説明書きがあるのだが、十五夜だけでなく13-26まで集まる機会があり、月が出るのが遅いので夜を徹して待つならわしがあったとのこと。そのような風習が他にもあるようだ。

    南方熊楠が、魂の入れ替わりについて書いていて、寝ている時などに魂が抜けること、入れ替わることは不思議なことではない、といった記述があるらしい。
    魂の入れ替わりアニメ、ドラマ、マンガで出てくる定番というイメージがあるが、このテーマが古くからあるものとは思わなかった。外国の事例はわからないが、日本の風土の中ではぐくまれた話であるようだ。

    民俗学とは無縁と思っていたサブカルチャー分野に昔話や民俗学的要素があるという、わかりやすい一例と思った。

    ここでは親が子供に「お前は橋の下から拾ってきた子だ」という話について書かれていたが、宮田は理由はわからないが、橋は異界との境界の役割なのでそこに意味があるのではないかと述べている。一方犯罪の民俗学では口減らしのために子供を橋の下に捨てることがあったと考えていた。なお、ここでも橋が境界であることに触れていたように思う。

    宗教観について 日本人は仏教でも神道でもなく、民間信仰の力が1番強いという。今も仏教行事の中に位置付けられている先祖祭りについて、柳田國男は念仏供養の功徳によって必ず極楽浄土にいけると請け合っておきながら、なお毎年毎年この世に戻ってきて棚経を読んでもらわぬと浮かばれないように思わせるという考えは仏教以前の固有の民間信仰からきていたと言っている。
    仏教の極楽浄土のようにあの世は遠い存在ではなく、生活に密着した隠り世がすぐ近くにあるというのが日本人の民間信仰だった。
    私が好んで読む、田舎の怖い話の源流はこういうところから来ていると感じた。

  •  民俗学の入門書といってよいのだろうか。民俗・風俗にまつわるあれこれを描いた軽めのエッセイ(第一部)と、民俗学者の簡単な評伝(第二部)。

    【版元】
    『民俗学への招待』
    著者:宮田 登(1936-2000)書
    定価:本体800円+税
    Cコード:0239
    整理番号:64
    刊行日: 1996/03/19
    判型:新書判
    ページ数:224
    ISBN:978-4-480-05664-1
    JANコード:9784480056641

    なぜ私たちは正月に門松をたて雑煮を食べ、晴れ着を着るのだろうか。雛祭りやクリスマスなどの年中行事。富士講などの民間信仰。震災とユートピア。真夏の夜を賑わせる幽霊や妖怪たち。「トイレの花子さん」や「メリーさん」と呼ばれる老婆など、超高層ビルの片隅で生まれては消える都市のフォークロア。民俗学のまなざしから見えてくるものはいったい何か。柳田国男、南方熊楠、折口信夫、渋谷敬三などの民俗学研究の豊かな遺産を受け継ぎながら、世相の根っこから掘り起こされた日本人の文化の深層を探る、現代人のための民俗学入門。
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480056641/


    【簡易目次】
    目次 [003-005]

    第I部 民俗学のまなざし 007
    第一章 正月の神々――睦月・如月 009
    第二章 震災とユートピア――弥生・卯月 045
    第三章 富士信仰――皐月・水無月 087
    第四章 幽霊と妖怪――文月・葉月 121
    第五章 都市のフォークロア――長月・神無月 145
    第六章 民俗学と世相史――霜月・師走 177

    第II部 日本文化へのアプローチ 203
    一、柳田民俗学の視点 204
    二、南方熊楠の視点 209
    三、折口民俗学の視点 212
    四、日本文化の多元論的観点 214

    あとがき(一九九六年二月 宮田 登) [218-219]
    事項索引 [220-222]

  • 「マレビト」「異人」「漂着した神」などをキーワードに我々に馴染の深いテーマを論じるという本。
    「ゴジラ」とか「学校の怪談」とかキャッチーなテーマが割と多くて読みやすいです。

  • 引用、感想省略。

  • 『ミステリー民俗学者 八雲樹』を読んで民俗学に少し興味が出たのでこの本を手にとってみた。


    鬼ごっこでつかわれる「タイム」とは英語のTIMEではなく、江戸時代の税の伝馬(てんま)役がなまったもの。
    伝馬とは公用の書状などを人馬を交替して運ぶ伝馬制のこと。お上の命であれば、鬼役も追求を止めざるを得ない、ということ。

    「毒」というのは、祭事に携わる巫女が髪飾りなどつけ厚化粧する様子を示す。その飾りつけが仰々しいことを毒々しいとすることから、すべてに濃厚すぎるというのが毒の原義という。

    厄年の者は、二月一日に正月をやってもう一歳年を加えと自己暗示をかけた。

    「不思議」とは仏教用語「不可思議」の略。仏典にある「不可思議七種」という表現が、七不思議というフォークロアの下敷きにある。


    民俗とはそこに住む人々のルーツである。なかなか興味を持ちながら読めた。

  • 年中行事や民間信仰から、学校の怪談等にも触れ、興味深いテーマが多数取り扱われている。が、新聞記事のまとめが中心になっているせいか、ほぼさわりのみ。個人的には、ハレとケ、第4章の幽霊と妖怪が面白かった。
    招待、という軽めの本なので、興味を持ったら次へ進むと良いでしょう。

  • お葬式に関連して食事会が開かれるのはなぜか、疑問に思って読んだ。疑問は解決。さらに、意外にも、地震や原発事故についての反応等にも民俗学的観点が応用できることが分かり、満足。

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著者プロフィール

宮田 登(みやた・のぼる):1936?2000年。神奈川県生まれ。東京教育大学文学部卒業。同大学大学院修了。筑波大学教授、神奈川大学教授を務める。著書として『ミロク信仰の研究』『都市民俗論の課題』『江戸のはやり神』『妖怪の民俗学』『ケガレの民俗誌』『はじめての民俗学』など多数。その関心は民俗学から日本史学、人類学等、周辺諸学におよび、研究の成果は国内外で評価された。

「2023年 『霊魂の民俗学 日本人の霊的世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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