現代の金融入門 (ちくま新書 93)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480056931

感想・レビュー・書評

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  • 人生で何度も読み返すであろう良書。

  • 金融の勉強を始めようと思い本書を手に取りましたが、「入門」としてはよかったです。ただし「1時間で分かる・・・」シリーズのような、初歩的すぎる内容ではなく、限りなくストレッチして初心者でもギリギリわかるように難しいトピックを説明していると感じました。その意味では全部を読んで咀嚼するとしたらかなりの時間がかかるので中身の濃い入門書という印象です。本書を1冊持っておけば、色々なときに参照できそうなので重宝しそうです。
    金融はITと密接な関係がありますが、ITは指数関数的に機能を拡大している中で、金融はどうなるのか、本書の中でもITとの関係が少し述べられていますが、そのためにはそもそも金融が果たしている役割は何なのか、そして現在進んでいるフィンテックの動きは、金融が果たすべき本質的な役割を進化(深化)させているのか、そのあたりを見極めるためにも、本書のような「金融そもそも論」を改めて勉強すべきと感じました。お勧めです。

  • 入門とあるが、意外と難しい。少し昔の本なので、この内容が現在どうなっているのかを見るのも面白い。

    お金を預かって貸すという単なる金貸しの機能だけでは、銀行はもう成り立たない。もう消費者が銀行にお金を預けるだけでは資産を増やせないのは、ここにあるのかもしれない。銀行は利息で分配できる余剰な利益はない。

    多くの機能を抱え込むほど、外部調整リスクは減るが、内部調整コストは増える。その最適化が経営の一つ。

  •  金融、あるいは金融業界に対する皆様の見方はどういったものでしょうか。例えば、リーマンショックという事件を目にして、金融業界は世の中の経済を不安定にする業界ではないであろうか、あるいは日常の金融業務を鑑みて、資金の余裕がない企業に融資するという言わば公的な役割を持った業界ではないだろうかといった見方もありえるでしょう。結論から申し上げると、その双方とも一部あり、根拠なき見方ではありません。このように金融に対する見方が多様である中で、本書は金融が何であるか、そして金融はどうあるべきかを考えるための一貫した枠組みを提供してくれます。

     著者は、金融の大家である池尾和人(慶大教授)です。理論面での業績のほかにも政府委員などを務めるなど政策の第一線でもご活躍されています。そのような方が、金融の初心者にも分かるように、数式を最小限に抑え、かつ直感的な理解を助けるように説明しています。金融の門外漢であった評者も驚くほど容易に理解でき、金融を専門とする学生と金融についての意見を交わせるレベルになりました。

     内容としては、金融の役割や機能といった基本的な知識から金融政策の概要とその学問的背景、金融と企業との関係、そしてこれからの金融業界の展望などについて書かれています。高校の政治経済のレベルから学術論文に掲載される理論の基本的なロジックまでを説明しており、本書一冊で金融を俯瞰できるようになります。特徴は、専門用語を明確に説明しているだけではなく、素人でも直感的に理解できるようにそれを言い直している点です。真に優れた人の入門書は分かりやすいということを再確認させてくれました。

     著者も多くの学者が述べるよう、経済活動を活発にするという金融の役割を維持しつつ、適切な規制によって金融業界の健全な経営を追求すべきという姿勢を貫いています。なぜなら、限りあるお金をさまざまな企業に融通するという意味で、金融は今の経済活動にとって不可欠である一方で、その金融業務に内在するリスクは適切な規制によってコントロールできると、著者は考えているからです。またその手段として、自己資本規制などをあげています。この手段は、著書が発刊されてから15年経つ今でも議論されているので、本質的な提案であるといえるでしょう。

     このように本書は、きわめて本質的な含蓄をもった本であるだけでなく、現在も進行中のウォール街デモ、あるいはリーマンショックの教訓を踏まえた金融政策のあり方を考えるにあたって、私たち市民に欠かすことのできない視点も与えてくれることでしょう。
    *書き方がいつもと違うのは気にしないでください。

  • いろいろなところで『金融の基本的なことが書かれているから読んでいいんじゃない?』と書かれていたので、かなり前に購入し、やっと読み終わった。

    発行が1996年、
    発行したころ、一次(?)金融危機とかあったころで、今の状況からするとかなり古い情報ではあったが、基本的に金融ってのはこういうことでしょ。ということをお堅く説明をされた感じがした。
    大学時代に読んでいればなるほど!この本すげぇ!って思ったのかもしれない。

    前半は銀行とは。
    後半は今後の金融界の変化(特に自由化とIT化)に関して。
    私が高校1年の時にウェブマネーの話とかって、まだまだ夢物語のようだ。
    でも現状を踏まえて、こういう流れになる、と言っている。


    もっと本を早く読めるようにしないと・・・・。

  • 「入門」となってはいるが、何の予備知識もなくこの本を読むだけでは現代の金融が理解できないかもしれません。『国際金融のしくみ』(http://booklog.jp/users/furusatochan/archives/4641123349)あたりを併読することをおすすめします。文章は論理的ですから誤読の余地はほとんど無いと思います。

  • 変容する銀行業とか時代にそってるのがいいかな。

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著者プロフィール

慶應義塾大学経済学部教授
1953年生まれ。京都大学経済学部卒業、一橋大学大学院博士課程単位取得。岡山大学・京都大学助教授を経て、1995年より現職。著書に、『銀行はなぜ変われないのか』(中央公論新社)『なぜ世界は不況に陥ったのか』(共著、日経BP社)『現代の金融入門』(ちくま新書)など

「2017年 『日本経済再生 25年の計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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