「考える」ための小論文 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 267
レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480057105

作品紹介・あらすじ

論文は、なりよりも自分のモヤモヤした考えを明確にするため、またそれを他者に伝えるために書かれる。「自分とは何者か」から「人間の生」「現代社会の在り方」まで幅広いテーマを取りあげて、論文の「かたち」と「なかみ」をていねいに解説する。本書は、大学入試小論文を通して、文章技術の基本を身につけるための、最良の実用参考書である。と同時に、「書く」ことによって自分をつかみ、思考を深めていくための哲学の書でもある。

感想・レビュー・書評

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  •  論文とは、他者に自分を知って貰う手段の一つ。他者を説得しようと根拠を示しながら自分なりの意見を表明する。大学に入る為に求められる基礎レベルの教養だ。論文も、読者とのコミュニケーションの一種である。だから、誰もが納得のいくように論を進める必要がある。その際に、把握すべきなのは個人と社会の関係性、具体的事例と抽象的理論の関係性だ。今どんな社会が到来しているのか、そしてそれらが引き起こしている問題状況はどうなっているか等について、個人の生と深く照らし合わせながら論述する。

     そもそも、意見とはどのようにして形成されるのか。著者は、己がまだ認識できぬ隠された段階にある意見は、各人の抱える感覚や感情の中に眠っていると主張する。何かに対して心が動かされる、モヤモヤした感覚に囚われる。その靄の中から本当の自分らしい独自なる意見の芽を掬い取る事が大切だと語る。違和感だったり、怒りだったり、己に生ずる感覚を、まずは適切な言葉に置き換えてみる。感覚の精確な言語表現こそが、論文に書くべき理屈の骨子に変わるのだ。

     感覚は正直だ。嘘や偽りで誤魔化す事が出来ない性質を持つ。そして、一番奥深くに眠っている本当の声を探り当てるように、自分自身を掘り下げていく。そうすると、自分の意見とその根拠の有り様が、見えてくる。大切なのは、己を根本から捉え返す中で、当事者としての問題意識を強く自覚し、自分は何を求めているのかについて、真剣に考え抜く作業である。論文とは、考え続ける作業の過程が、言葉としての論述に置き換わっただけの話だから。

     一番云いたい事を結論に据えるのがベスト。或いは、自分自身が展開する論の主題に据えよう。その際に、社会に対する自分なりの接し方、処理方法を論述に組み入れていく事が望ましい。自分が成長すれば社会も違った角度で見えてくる。他者の存在自体が自分の中でその意味を変えていく。自分の意見の先に他者の声と態度があり、他者の声と態度が自分の意見に組み込まれて共鳴し合う。まずは、社会に向かって行く己の確かな意思表明からスタートしよう。

     他者がありありと他者性を開示してくる事もある。その中で恐怖を感じずに居られなくなる。だが、与えられた恐怖の根源は、社会を包む他者と自分を強固に関係させる相互作用の中で、次第に縮小へと向かうだろう。そのような補完的な関係性を樹立する上でも、コミュニケーションは最大の武器になる。様々な問題が絶え間なく生じ得る社会への関心と、其処への歩み寄りによって、己の生の価値はどんどん豊かな方向へ転じて行くだろう。そもそも、一般論としての解答などは、誰からも求められはしない。つまり、自分自身をより良く知って貰う為に、論文を書くのだから。

  •  「考える力」を身につけたいと思い、その一助となるような本を探していたのだけど、これは良い出会いだった。小論文対策として以上に、一人の人間として物事(人間の生や社会について)を考え、まとめることについて真摯に取り組んでいる本だ。 

     読んでいて思ったのは、「独自性ある文章」は思っている以上に簡単には出てこないし、かといって諦めるほど手の遠いものでもないんだ、ということ。
     普段から、私たちの周りには「もっともらしい正論」がそこら中蔓延していて、すぐに思考がそっちに引きずられてしまいがちだけれど、それは結局は考えた「つもり」でしかない。そうした紋切型の思考の軛から離れるには、素朴な問いに立ち返ること、粘り強く検討を続けて物事と自分を結びつけていくことが必要になる。
     残念ながら試験における論文には制限時間があるので、そんなことを言っていたらすぐにタイムアップが来てしまうが、普段の生活においては、その粘り強い思考こそが何よりも重要なのだろうと思う。その思考の繰り返しが、思考の深み、重みを生むのだと。
     実際にいくつか例を使ってその違いを見せられると、成程と頷くしかない。
     
     その問題についてどう問いを立てるか、抽象的に考えていくか、具体的に見ていくのか、歴史的視点はどうみるか、自分との引き付け方は…。そうやって細かく、慎重に考えを積み重ねていくこと。これは、とても面倒くさいことだ。しかし、この本はそこにある面白さを、伝えてくれる。考えまとめたものが「自分の経験」として確かに肉付けされていくのだと教えてくれる。とても素敵な本だった。
     

  • とうとうやらなくてはいけなくなった小論文のために、とりあえず手に取った一冊。全くの素人だったので読んでいて納得する場面が多く(特に前半)なるほどなあといった感じだった。備忘録的に自分なりだが小論文を書く流れを以下にまとめてみる。

    ①主題を掴む→②「問い」を発する→③主張を打ち出す
      ①出題意図の把握、
      「読む」:筆者意見の絞り込み、
           わからない言葉を考える、
           自分なりに言い換える
      ②問題状況の設定
      ③喚起力・解明力、具体例(自分に引き寄せる)、
       「自分⇔世界、具体的⇔抽象的」をまわす
       言えること、紋切り型(世の中の一般論)×
     ※感情(心の動き)と考え(普遍性、客観性を持つ)は違う

    正直どこまで理解し切れたのかわからないけど小論文を書く際の思考の組み立て方みたいなものはぼんやりと掴めたような気がする。時間は限られているがもっと練習したい。
    ちなみに理系なので、例題(特に後半)がつかみづらく難しかった。けどこの手の文章にももっと慣れて面白さを感じられるようになりたい。

  •  大学受験生向きの本のようだが、結構面白い勉強本。学生時代、このような文章を読むのが本当に苦手で、理系を目指したようなものだった自分にとっては、今、ようようと本書の内容がなんとか理解できるようになった段階。まだ途上だろうが、こういう思考ツールを詳細に書いてもらえると助かる。こんなことは基礎の基礎なのだろうが、中々できないもんであるとあらためて実感。
     それにしても最近読んだハウツー物より、数倍の効果が感じられるものだった。これをただ感じ、で終わらせずに復習、拡張していきたい。

  • 小論文入試を控えているため、

    1.評価される小論文とはどんなものか
    2.それを書くに当たって必要な力は何か
    3.その力をどのように養えばいいか

    について知りたいと考えて読んだ一冊。
    1、2については明確に知ることができた。3についても完璧とは言わないまでも、8割程度の、かなり明確ではあるけれども少しぼんやりしている、といった程度まで知ることができた。残りの部分は他の書籍や、実際に文章を書くことによって明確にできそう。
    自分の読書目的と本書の内容の一致度を考えると、非常に効率の良い読書だった。

    内容については、小論文の文章テクニックとかではなく、書く際の思考の軌跡をメインに据えて論じられていく。そのため、小論文を書く必要がある人以外にも十分役立つ一冊といえる。

  • 四十代のおじさん向けの本ではなかった。ターゲットは高校生かな?

  • 『勉強法が変わる本 心理学からのアドバイス』にて紹介。

  • コラム中の筆者の死生観に共感した。
    小論文は、世間一般で「常識」とされていることを書いてはいけないと分かった。

  • 小論文の基礎を学ぶに良い

  • 読んだのはダイブ前。

    だけど、ボロボロになった本が今、手元にある。

    当時、大学受験で小論文のある学校を受けようとして
    この本をバイブルとして読んでました。
    (結局、その大学を受験はしませんでしたが)


    今、ジブンは面接試験の対策を考えているんだけど
    この本にある、常に「なぜ?」と考える姿勢が大事だと思ったのです。


    また、別の本になるんだけれども、頭がクラクラして
    疲れるまで「真剣に」1つのことを考えたことがあるのか?
    と書いてあって、なんか「似てる」と思って。


    確かに、ジブンは深く考えてなかった。考えが浅かった。
    最近、ちょっと自己嫌悪・・までは行かないけど
    もうちょっと頑張ろうと思って。

    この本は、もちろん、小論文対策にも使えると思うんだけど
    それ以外(自分の場合、面接試験)にも、日常に応用できると思うんです。

    小さくて持ち運びし易いから、暇なときにでも是非。

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著者プロフィール

(にし けん)
1957年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。和光大学現代人間学部教授を経て、現在、東京医科大学教授。哲学者。著書に、『実存からの冒険』『哲学的思考』(ともにちくま学芸文庫)、『ヘーゲル・大人のなりかた』(NHKブックス)、『哲学のモノサシ』(NHK出版)、『完全解読ヘーゲル『精神現象学』』(共著、講談社選書メチエ)などがある。

「2010年 『超解読! はじめてのヘーゲル『精神現象学』』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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