日本人はやさしいのか: 日本精神史入門 (ちくま新書 116)

  • 筑摩書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480057167

感想・レビュー・書評

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  • 本著はタイトルにも副タイトルも答えていない。「やさし」という言葉の解釈学、にもなっていない。

  • 結局、「日本人は「やさしい」のか」の問いには答えてくれません。
    「やさしい」という言葉の変遷を述べ、当時の使われ方からは多義的になっていますよ、ってことですが……、文章がとっちらかっていて、もう少しまとめられたんじゃないのか?と思ったりしました。結局何が言いたかったのか、イマイチ要領を得ませんでした。
    僕の評価はBにします。

  • 伝統的なテクストの中の「やさし」から、現代の流行歌に見られる「やさしい」という言葉に至るまでの用法を取り上げ、そこに含意されている内容を詳しく探求することで、「やさしさ」の倫理学という問題領域を描き出している。

    著者は、現代において「やさしさ」が求められる理由を、「傷け合うこと」を避けようとする態度に求め、村上春樹やよしもとばななの小説にそうした「やさしさ」を読み取っている。その一方で、人の内面に踏み込まず傷つけあわないための社交術としての「やさしさ」は、現代の若者たちの間に広がっているが、そこにはある種の脆弱性が認められることになる。

    ただし著者は、こうした現代的な「やさしさ」を性急に批判しているわけではない。伝統的な用法にまでさかのぼって、日本語の「やさしさ」という言葉の広がりの全貌を見定めたうえで、とくに現代において顕著な「やさしさ」の位置を確定するという作業をおこなっていると言ってよいだろう。

    著者は、自然との有機的一体性から人間の自覚ないし反省をくぐり抜けることで、社会的・歴史的な共生倫理を構築しようとした花崎皋平や、「弱い」がゆえの人一倍の愛おしみを他者にも見いだすことで、他者との結びつきをもたらすような「やさしさ」を希求した太宰治、さらに無常観とのつながりにも説き及んで、「やさしさ」の倫理学が考察の対象とするべき諸問題を概観している。

    「やさしさ」という窓を通して、日本倫理思想史について展望することができることを示した本として、興味深く読んだ。

  • [ 内容 ]
    高度成長が終わった七四年以降、「やさしさ」という言葉が巷に氾濫し出した。
    いまとなってはうそくさくふやけたイメージしかもたないように見える「やさし」は、しかし、万葉集の時代から現代に至るまで、倫理的、美的に重要な場面で繰り返し使われてきた言葉である。
    手垢のついた「やさし」を、もう一度現在において、および歴史的に検証しなおし、現代に生きる倫理として思想的に蘇らせようと試みた渾身の一冊。

    [ 目次 ]
    第1章 「やさしさ」の現在(「やさしさ」の現状分析;傷つくことと「やさしさ」;尾崎豊・太宰治の「やさしさ」)
    第2章 「やさし」の精神史(羞恥としての「やさし」;美的理念としての「やさし」;当座の倫理としての「やさし」;「情け深さ」としての「やさし」)
    第3章 「やさしさ」の倫理学(「やさしさ」の自他認識;共感としての「やさしさ」;原質としての「やさしさ」;無常と「やさしさ」)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 「やさしい」の概念について、現代のヒット曲からはじまりその起源や変遷の考察。途中までは理解できたが、後半から怪しく…。

  • なるほどって感じ。

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著者プロフィール

竹内 整一(たけうち・せいいち):1946年長野県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科倫理学専攻博士課程中退。東京大学名誉教授。専門は倫理学、日本思想史。日本人の精神の歴史を辿りなおしながら、それが現在に生きるわれわれに、どのように繋がっているのかを探求している。主な著書に、『魂と無常』(春秋社)、『花びらは散る 花は散らない』『日本思想の言葉』(角川選書)、『「やさしさ」と日本人』(ちくま学芸文庫)、『ありてなければ』(角川ソフィア文庫)など。

「2023年 『「おのずから」と「みずから」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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