- 本 ・本
- / ISBN・EAN: 9784480057327
感想・レビュー・書評
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・2022年 東京医科歯科大学 医学部 保健衛生学科 看護学専攻 前期
・2019年 愛媛大学 医学部 看護学科 前期詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
かなり前の本でありながら、私に取っては示唆に富む内容だった。
筆者の(多岐にわたる、そしてカタイ)専門分野がありながら、もっと深いライフワークだったり本当に心からの疑問について真摯に向き合っているということ(特に6章とエピローグ)が尊い。
備忘
・冒頭のアインシュタインの話
・私たちは遺伝子の乗り物で過ぎないということ
・生殖を終えた後の寿命が長いから固体が大事で、それは社会性=ケアの中で生まれる。人間はケアする動物。
・日本では今は死に向き合ったこころの拠り所は空白状態。死についてしっかり教わっていない、考えられていない。
・モノ不足の時代が終わったあとは、モノの消費ではなく、商品に込められた情報の消費をしている。
・物質的欠乏や経済的理由が家族を結びつける大きな要因であった時代が終わった今、最後に家族に残られるものは何か。情緒的関係。
・近代西洋科学はユダヤキリスト教文化の延長線。自然と人間は切断されている。神が宇宙に敷かれた法を明らかにし、それを通して神の意図を明らかにするという信仰と結びつく。
・直線的な時間、円環の時間(生まれる前は無であった、死んだ後はそこに戻る)、深層の時間=生と死が交わる時間。
・結果として死者に対するケアも必要。ターミナルケアはその者の死を持って終わるわけではない。
で、ケアは人間をそんな深層の時間につなぐ可能性を秘めているというところに至るわけだけど、それは自分の中のライフワーク的な疑問が一歩前進する新しい視点でした。読んでよかった‼︎
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以前読んだ『死生観を問いなおす』が衝撃的に面白かった、大好きな広井先生の本。面白かったけど、『死生観を問いなおす』ほどの衝撃はなかったかな…
私は政策的な、高齢化社会とケアはどうあるべきか?みたいなことにはほとんど関心がなくて(少なくともこの本を読む動機としては)、「ケアとはなにか」に関心があった。
なので、「第1章 ケアする動物としての人間」と「第5章 ケアの科学とは」、「第6章 〈深層の時間〉とケア」が面白かった。(本の中心を占める2章から4章はあんまり…)
特に1章が興奮。だってケアの話するのに、脳の発達の話から始まるんだぜ?
そしてハイデガーのいう「気遣い」とは、英語では「ケア」と訳されている→『存在と時間』はケアの哲学だ!「ケアが世界に意味を与える」「世界を世界たらしめるのは、ケアである」…
なにがしびれるって、壮大なことを考え、語るのに、言葉は平易で読みやすく、無駄な説明は一切なく、簡潔に、なのに静かな説得力を持っている、この広井先生の筆の運び…
私は「ケア」って言葉が好きで、それは、「世話を焼く」っていう狭義の意味での「ケア」ではなく、I care
というときの、「気にかける」「大切に想う」、心理臨床的な言葉で言うと「まなざす」かな?という意味で、それが本質的な人と人との間に生起する、私の言葉で言うと「愛」だと思うからなんだよね。
そしてその、人を人たらしめるものとしてのケアと、時間(死と老い)、それを支える制度まで、ミクロからマクロまでを語っているという点で、広井先生らしいご本だなと。
この本が書かれてから20年以上が経過するわけだけれど、この本に提案されているような、医療モデル、予防/環境モデル、心理モデル、生活モデルの4つが、それぞれに越境しながら高齢者のケアにあたるという世界は築かれているかしら?
おそらくは、生活モデルを支えるソーシャルワーカーが、このときよりは社会的地位を得てきているのではないかと思われ、それは希望だけど…。制度の上ではまだまだよね。
この本の中で、チラッと触れながらも扱わなかった、「かつてケアは家庭の中で女性たちが担ってきた、だからそれらは無料・無償で当然で、それが外だしされ仕事となった今も“誰にでもできる簡単な仕事”として軽視され、報酬も非人道的なほど低い」(これは引用ではなく私の言葉)という問題点が解消されないと、提供されるケアのレベルには限度がある(個人の努力では超えられない)と、心から思う。
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このことは、先のナイチンゲールの「すべての女性=看護婦」論とも符号する。41頁
今後「死に場所」として増えるのは、
(a) 在宅
(b) ナーシングホーム
(c) デイ・ホスピス
わが国の今後にとって非常に示唆に富むものとなっている。71頁
110 -
前半は、ターミナル・ケアや介護保険について、日本とヨーロッパの制度の比較をおこなった、手堅い内容になっています。その後、サイエンスとケアがどのような関係にあるのかという問題について論じた後、「生者の時間と死者の時間とがクロスする」という言葉で表現される、かなり思弁的な議論が展開されていきます。
ケアの倫理学についての学説史的な解説を期待していたのですが、やや思っていたものと違う内容でした。とくに後半の思弁的な議論は、正直に言って理解できないところもありました。あるいは、本書の中でも参照されている著者の本を読めば、より詳しい議論があるのかもしれませんが、ケアに関する問題を幅広く扱った新書の中で、映画『バウンティフルへの手紙』やフィリッパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』などを参照しながら持ち出すには、やや大きすぎる問題だったのではないかという気がします。 -
良い本でした。
著者の仰るとおり、ケアには越境的な知識や視座が日に日に必要になっていくように思われます。
「深層の時間」についての考察も興味深く読みました。死者と生者の交わる所、それを円環の時間的に捉えれば「深層の時間」となるでしょうし、よりフォークロア的に捉えれば、ゲニウス・ロキとも言えるように思いました。 -
深層の円環的な時間死から来て生まれ一生を生きて死に戻るを前提としたケア もう一冊読むべきか?1997の時点でこれだけ書かれていてる。
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(後で書きます)
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[ 内容 ]
「高齢者ケア」、「ターミナルケア」、「心のケア」など、ケアという言葉を耳にしない日はない。
しかし、そもそもケアとは人間にとっていかなる意味をもつものなのだろうか?
本書は「ケアする動物としての人間」という視点から出発し、高齢化社会におけるケアをめぐる具体的な問題を論じながら、ケアのもつ深い意味へと接近していく。
現代という時代に関心をもつすべての人に贈る一冊。
[ 目次 ]
プロローグ ケアとは何だろうか
第1章 ケアする動物としての人間
第2章 死は医療のものか
第3章 高齢化社会とケア
第4章 ケアの市場化
第5章 ケアの科学とは
第6章 「深層の時間」とケア
エピローグ 生者の時間と死者の時間
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
介護保険の導入が2000年なので、それを睨(にら)んで執筆したものと思われる。発行から既に10年以上経過しており、時期を逸した感もあるが、それでも有益さが損なわれることはない
<a href="http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20090318/p2" target="_blank">http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20090318/p2</a>
著者プロフィール
広井良典の作品





