イギリスの政治日本の政治 (ちくま新書 164)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480057648

作品紹介・あらすじ

小選挙区制を導入すれば政治はよくなるというのは幻想だったのだろうか。選挙制度改革は、政党本位、政策本位の選挙を実現し、政権交代が可能な二大政党による政治が確立されるはずであった。だが、現実はいまやほとんど逆の方向へ向かっているのではないか。1997年オックスフォードに滞在した著者は、十八年間続いた保守党政権が総選挙によって敗北し、ブレア首相率いる労働党政権が誕生した歴史的転回点を現地で目撃した。二大政党制がわが国に定着する条件とは。イギリス政党政治の現実を再検討し、日本の新しい政治システムの可能性を探る現代人必読の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • イギリスの二大政党制の仕組みを、サッチャー政権以降の労働党を立てなおしたキノックやブレアらの業績を中心に紹介し、日本の政治改革の方法について考察しています。

    イギリスでは、政党が掲げるマニフェストを中心にして議員が役割を与えられ、政策本位の選挙がおこなわれているのに対し、日本では各候補者がみずから政治資金や票の基盤を固めて当選するという性格が強く、その一方で包括的な政策が官僚主導によって進められているために、国民の声が政策に反映されず利益誘導型の政治に流れてしまいがちだということが論じられています。

    また著者は、サッチャー政権以降の労働党が、旧来の階級対立の考え方に基づく戦略を見なおし、より現実的な中道左派路線を採用したことを紹介し、日本の社会党がイデオロギー的な綱領の見なおしに着手することのないまま、なし崩し的に自民党との野合に流れてしまったことを批判しています。

    民主党政権の失敗を見ても、日本にはまだ、本書で紹介されているイギリスの事例のような、二大政党制が有効に機能するための条件が整っていないという思いが強くなります。

  • あー確かにとか思いつつ、それにしてもやたら古い話がよく出てくるなーと思ったら、もう10年以上前の本。


    でも、その当時と同じく政権交代が起こったいま読んでもたいして変わってない。


    二大政党制というが、そもそもとして制度として明示的に政党政治を肯定していない時点で無理な気がする。あくまでそれは結果論でしかないし。


    政治家が地元への利益誘導のためのパイプでしかないという観点にはまったく共感するし、

    その根源こそ小選挙区制にあると思っていたけど、

    書いてあるイギリスのようなやり方が地に足についたレベルで定着すれば、確かにそれはほんとに変わるかもなという気がした。

  • イギリスの政治制度の利点(財源移譲を伴う地方分権の確立や、時の政権に仕える官僚組織の在り方等)を、ブレア率いる「ニューレーバー」の躍進を切り口としてコンパクトにまとめている良書。後半部分では日本の政治制度の問題点もいろいろと指摘しているが、筆者自身の経験を踏まえての左派・野党批判はなかなか面白かった。

    あとがきでちゃんと自著の限界を吐露しているあたりが良心的w

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著者プロフィール

法政大学法学部教授・行動する政治学者
1958年生まれ。東京大学法学部卒、北海道大学法学部教授、同大学院公共政策学連携研究部教授などを経て、2014年より現職。最初の著作『大蔵官僚支配の終焉』(岩波書店)により、自民党と財務省による政治・行政支配の構造・実態を暴き、1990年代から2000年代に続く政治改革の深い底流のひとつを形作る。2009年の民主党政権成立をめぐっては、小沢一郎、菅直人、仙谷由人各氏らとの交友を通じて政権交代に影響を与える。立憲主義の立場から安倍首相を痛烈に批判、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の結成にかかわる。

「2018年 『圧倒的!リベラリズム宣言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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