ファンタジーの冒険 (ちくま新書)

  • 筑摩書房 (1998年9月1日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784480057747

感想・レビュー・書評

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  • モダン・ファンタジーの歴史をたどりながら、ファンタジー作品に秘められた想像力の意義について考察している本。

    前半は、「モダン・ファンタジーの父」G・マクドナルドから、ラブクラフト、トールキンとルイスなど、ファンタジー作品の歴史を、ていねいにたどっていきます。しかし後半に入ると、現代のファンタジー作品の紹介とともに、それらが持つ政治的な意味についてのやや突っ込んだ考察が展開されるようになります。

    著者は「序章」で、D・プリングルによる「ファンタジー」の定義を紹介して、ファンタジーには、「合理的できちんとした現実感とそれに裏打ちされた文学スタイルに対して、おかまいなしにどこでも勝手に侵入し、超自然的現象をもって現実的な秩序を崩壊される機能がある」と語っていました。著者は、このようなファンタジーの持つ想像力に、現実からその外部を見ることが、同時に外部から現実を見ることでもあるという両義性を見いだし、文明/野蛮、男性/女性といった現実の秩序を壊乱するようなおもしろさに読者を誘っています。

    とくに、山田詠美の『アニマル・ロジック』をはじめとする現代日本文学のさまざまな作品に、上で述べたようなファンタジー的な想像力の諸相を論じている箇所には、著者自身「好きなものは書き始めるととまらなくなる」と語っている通り、それらの作品に対する著者の思いが溢れていて、一つひとつの作品を手にとってみたいと感じさせられました。

  • 「日本のファンタジーの光景を念頭に置きながら、そしてプリングルが駆け足でスケッチしたモダン・ファンタジー史を振り返りながら、時代の結節点をいくつかピックアップし、それらを中心にファンタジーの世界への接近を試みるものである。」(序章より)

    粗製濫造はなはだしい昨今のファンタジーから距離を置いて、過去の名作を見ていこうと最近考えている。そこで、ファンタジー作品を概観できる本書他、いくつか読んでみている。
    ただし、本書はかなりの予備知識、海外小説の系譜であったり歴史的背景であったり、を要求されるので、大学院の講義的なイメージを持って、腰を据えて読むべき本。
    だとは思うが、流し読みでも案外楽しめた。覚えていられるかはまた別の話。

    本書で、日本のモダン・ファンタジーの特徴をよく現す作品として泉鏡花「高野聖」、夏目漱石「薤露行」があげられている。両方とも青空文庫で読めるのでトライ予定。

  • ブックガイド的なものを期待して、自分でネット検索とかして見つけた新書。これはでも、ちくま新書って時点で自分の求めるものとは違うかな、と。案の定、ファンタジー初心者には限りなくハードル高し。かろうじて、最後の和モノのところはついていけたけど、世界のファンタジー史については、全く理解が追い付かず。流し読みに近い状態になっちゃいました。かといって、将来またチャレンジ、とも思わず…。

  • この年齢になると割と、分かるぞ!知ってるぞ!!ってのも勿論増えたんですけど、海外ファンタジーなんて分からんのばっかだったな・・・

  • 全体的に悪くないのだが、日本のファンタジー小説を扱う段
    になると、どうもいただけない感じがする。

  • 19世紀中葉の産業革命以来、世界を席巻した合理主義のカウンターカルチャーとして登場した「ファンタジー」・それらは多大な分野に影響を与えながら広がって行き、さまざまなサブジャンルを生み出す。
    トールキンの指輪物語、ラブクラフトのクトゥルー…
    サイエンスフィクションが登場すると、それはペーパーバックとともに広がった。
    また、こうじてはアメリカでは家長主義へのカウンターカルチャーとして魔女、女神信仰を織り込んだものなどを生み出している。
    現代では(書かれた当時は20世紀末)ファンタジーやSFがジャンルを超えそこかしこに繁茂している。ファンタジーは既存の枠を超えた柔軟性のあるジャンルへと変貌している。

     ファンタジーと銘打たれているが、実際はファンタジーとSFの歴史の解説(SFマガジンで連載されていたらしいのでそりゃそうか)。
     著者の専門分野に力が入りがちではあるが、縦断的に歴史を負い、有名どころをチェックするにはいいかも。

  • [ 内容 ]
    一般にファンタジーというとき、それは「フランケンシュタイン」や「妖精物語」のように、新世界の発見と急激な機械化に触発されて十八世紀中頃に生まれた作品を嚆矢とする。
    そして第二次世界体戦後に発表された「ナルニア国物語」や「指輪物語」などによって、一挙に多くのファンを獲得することになった。
    ファミコン・ソフトなどを通して現代人の想像力に意外な影響を及ぼしているファンタジーの魅力を、歴史的な文脈に即して紹介する。

    [ 目次 ]
    序章 ファンタジーへの誘い
    第1章 妖精戦争
    第2章 パルプとインクの物語
    第3章 ファンタジーのニューウェーブ
    第4章 魔女と女神とファンタジー
    第5章 ハイテク革命とファンタジー
    第6章 J・ファンタジーの現在形

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  • 09043

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著者プロフィール

1958年富山県生まれ。薬剤師を経てSF&ファンタジー評論家。日本のコスプレの草分け。
日本SF作家クラブ会員。ジェンダーSF研究会発起人。2003年より日本ペンクラブ女性作家委員会委員長。
『女性状無意識』(勁草書房)で1994年度日本SF大賞受賞。
その他の著書に『聖母エヴァンゲリオン』(マガジンハウス、1997年)、『ファンタジーの冒険』(ちくま新書、1998年)、『おこげノススメ』(青土社、1999年)、『ハリー・ポッターをばっちり読み解く7つの鍵』(平凡社、2002年)、『エイリアン・ベッドフェロウズ』(松柏社、2004年)、『テクノゴシック』(ホーム社、2005年)、『星のカギ、魔法の小箱』(中央公論新社、2005年)など。

「2010年 『リス子の SF、ときどき介護日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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