プラトン入門 (ちくま新書 190)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480057907

感想・レビュー・書評

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  • ずっとベッドサイドにありながら読めなかった本。プラトンの著作とニーチェなど近代哲学者の評価を対比しつつ、イデアについて再評価している。フッサールの本質直観との絡みも興味深い。

  • 現代においては、とかく批判の対象となりがちなプラトンの哲学を、筆者なりの視点からとらえ直し、哲学というものの本質に迫ろうとした、たいへんに説得力のある著作。

  • プラトンの思想に賛同する側と反対側の双方の主張を理解した上で、自分の解釈を提示。

    反プラトン主義は、プラトン主義に端を発すると見られる近代としての市民社会の成立が、封建制を否定したとともに帝国主義やファシズムの勃興につながり、世界戦争の惨禍を招いたことを根拠に展開される。

    竹田的に重要な点を以下に列挙する。
    ・プラトンが西洋哲学を創始し、ゲーテが完成させた
    ・哲学は、まずもって、普遍的思考を志向する。「普遍性」の条件とは、誰でも対等の権限でこの言語ゲームに参加できるというありかたのこと。
    ・哲学の普遍的思考とは、さまざまな共同体を超えて共通了解を作り出そうとする思考の不断の努力。一方、思想の「普遍主義」とは、唯一絶対的な認識の観点が存在するという一つの独断的信念に過ぎない
    ・宗教は、物語をもとに世界像を描くので、地域性が高く、普遍性が低い。他方、哲学は、抽象概念をもとに世界像を描くので、普遍性を初めから志向。
    ・プラトンが、主張したこと自体が普遍的な内容だったかはさておき、普遍性を志向した自体は、哲学の創始者と呼ぶにふさわしい

    ・経験世界(事実)と純粋論理の世界は原理的に異なる。これらを取り違えることは現代でもよくあることだが、カントのように分けて考えるべき
    ・事実の世界でも論理の世界でも原因の議論は、ふに落ちるものにはならない。どこまでいっても観点の違いといったことでしかない。ヌゥス=知性=人間のものの見方がすべての原因であるととらえるべきである。(ちなみに、これを定式化したのがゲーテであり、「力」という形で深く表現したのがニーチェ。その前に自覚的に論じたのがヒュームだそうな)。ここから、人間がそもそもなぜ世界の根源を問うかといえば、結局欲望のエロスをくみとりたいからであり、そうした欲望のめざすところは、「最善」とは何かということなのである。


    入口の背景理解を経て実際の著作の説明に入っているが、読書案内としてとらえるべきだろう。

    世の中に、さまざまな「正義」がある中で、いかに共通了解を得るか、がテーマ。皆にとっての「善きもの」を追求する営みが、最重要な愛知。

  • 現象学というイメージの著者だったが、本書を読んでイメージが変わった。
    ちくま新書の哲学入門のシリーズの中でもかなり好きかも。

    今さらプラトンなんて、という気もしないでもないが、こうして現代とつながる形で解説してあると途端に身近に感じらる。もちろん当時の状況を踏まえて読むべきであるという著者の主張はもっともであるのだが、なんだろうかこの「わかった感」というか「スッキリ感」。

    言語ゲームやマルクス主義を絡めてプラトンの哲学を説明してあるだけでこれほどまでにおもしろいとは。

  • 最近の私は、プラトンとアリストテレスが2度目のマイブームを迎えていて、10年以上前に読んだものを引っ張り出して読み直している。世の中のあらゆる理論的対立は、プラトンとアリストテレスの対立と構造的に同型なのではないかと思い始めたのがその理由。これは、演繹的推論に基づく主張と帰納的推論に基づく主張の対立、と置き換えることもできるが、そこまで単純化してしまうのも危ないところ。人間が行う演繹的推論は(意識するか無意識かは別として)帰納的推論なしでは実行不可能だし、そもそも演繹的推論を表す論理モデルは気の遠くなるような帰納的推論を通じて得られたものである。ただ、ありえない理想に向かって演繹的に物を考える人と、客観的な事実のみを信じて帰納的に物を考える人の間には、どうしても埋めがたい溝が存在してしまうし、溝を埋めるのがいいとも思えないし、どうしたものだろう? 半年に1度、社長が全社員の前でラファエロの名画「アテナイの学堂」を見せながら講演するたびにそう思う。

  • オフィス樋口Booksの記事と重複しています。記事のアドレスは次の通りです。
    http://books-officehiguchi.com/archives/3983123.html

    プラトンは紀元前の哲学者であるが、現代でも研究対象となっている哲学者のうちのひとりである。理想としては、ソクラテス→プラトン→アリストテレスの順で読み進めるのがベストかもしれない。

    紀元前の哲学を初めて勉強する人にとって、最適な本である。この本をきっかけに知識の幅を広げてほしい。

  • プラトンの唱えるイデア説。哲学はこうであってほしい。宗教とはちがい、自分の幸福を自分で探索していく姿勢。幸福とはなにかを考えることによって、自らの知を幸福のために使おうとする。学びの楽しさを体験できる。

  • プラトンのわかりやすい入門書。
    教育実習時に読んだ気がするよ

  • 高校時代に買って読んだことを思い出す。当時は全然わからなかった。まぁ、プラトンに入門しにくい本ではあると思う。
    ある程度哲学史的知識を持っている人ならば、かえって読みにくい。入門者には難しい。なにより、竹田青嗣の文体は、結構わかりにくい。
    ……まぁ、これも今だからわかることだ。
    ブラックや藤沢令夫に当たるのがよいと思う。それを手引に、実際にプラトン(翻訳で十分)を読むのがいい。

  • ¥535, Amazon。

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著者プロフィール

1947年生まれ。哲学者、文芸評論家。著書に『「自分」を生きるための思想入門』(ちくま文庫)、『人間的自由の条件ーヘーゲルとポストモダン思想』(講談社)など。

「2007年 『自由は人間を幸福にするか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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