日本のエロティシズム (ちくま新書)

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著者 : 百川敬仁
  • 筑摩書房 (2000年4月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480058430

作品紹介

エロティシズムは、日本ではどのような歴史をたどって形づくられてきたのだろうか。西欧世界のエロティシズムと比較したとき、どのような固有性が見出せるのだろうか。またそれは、現在の性の状況にどのようにつながっているのか。江戸時代に出現した"もののあわれ"とよばれる感情を手がかりに、古代の源氏物語から、中世の軍記物、近世の近松門左衛門、近代の泉鏡花・天皇制などを経て、現代の三島由紀夫、村上春樹までを題材にして、西欧との対比をしながら深層に分け入ってゆくミステリアスな一著。

日本のエロティシズム (ちくま新書)の感想・レビュー・書評

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  • 本書の冒頭で、著者自身の哲学的エロティシズム論が開陳されています。著者は、人間的地平からのエクスタシス、すなわち「小さな死」へと向かって、しだいに熟していく時間の感覚がエロティシズムを生み出すと考えます。こうした立場から、バタイユのエロティシズム論は、エロティシズムの条件と本質をとり違えているという批判がなされています。

    さらに著者は、主として近世以降の日本思想史、文学史をたどりながら、「もののあはれ」とエロティシズムの関係を跡づけていきます。著者によれば、「もののあはれ」とは「ひとは自然や社会からの圧迫ともとで生きていかねばならない弱く悲しい存在である」という自己憐憫の感情であり、これによって同じ境遇にある人びとの連帯の絆が形成されます。著者はとくに近松門左衛門の心中物に、こうした「もののあはれ」に基づく連帯の感情によってしだいに破滅へと熟していく時間意識のエロティシズムが表現されていると論じています。

    しかし近世末期から近代にかけて、こうした「もののあはれ」の感情が弱体化し、かわって『葉隠』的な思考や近代天皇制といった観念の倒錯に基づく連帯が形成されるようになると、エロティシズムは抑圧されるようになります。著者は、このような時代のなかで時熟するエロティシズムというテーマを追究した作家として、泉鏡花、夏目漱石、谷崎潤一郎、三島由紀夫らをとりあげ、彼らの作品について考察をおこなっています。

    あつかわれているテーマが大きいので、新書で展開するのは無理があったのではないか、というのが率直な感想です。エロティシズムについての哲学的考察としても、作家論・作品論としても、興味深い洞察が示されているようにも思えるのですが、十分な裏づけがおこなわれないまま議論が進んでいるように感じてしまいます。

  • [ 内容 ]
    エロティシズムは、日本ではどのような歴史をたどって形づくられてきたのだろうか。
    西欧世界のエロティシズムと比較したとき、どのような固有性が見出せるのだろうか。
    またそれは、現在の性の状況にどのようにつながっているのか。
    江戸時代に出現した“もののあわれ”とよばれる感情を手がかりに、古代の源氏物語から、中世の軍記物、近世の近松門左衛門、近代の泉鏡花・天皇制などを経て、現代の三島由紀夫、村上春樹までを題材にして、西欧との対比をしながら深層に分け入ってゆくミステリアスな一著。

    [ 目次 ]
    第1部 エロティシズムと時間性(文化とエロティシズム 観念としてのエロティシズム 熟してゆく時間 ほか)
    第2部 近世日本のエロティシズム(近世以前 肉体の浮上 観念の反撃 ほか)
    第3部 近現代日本のエロティシズム(近世の遺産 近代天皇制とエロティシズム 性への恐れ-森鴎外ドイツ3部作をめぐって ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 〈もののあはれ)を共同体における共通認識による共感意識、としているのが面白かった。文学論かと思いきや、哲学思想だった。ただ、かなり読みやすいとは思う。著者は本居宣長研究者か?〈2007/08/24)

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