教養としての大学受験国語 (ちくま新書 253)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480058539

作品紹介・あらすじ

高校・大学生の学力低下が社会的に問題になっているが、憂うべきなのは知識量の低下よりも、自ら考えるための思考力の低下である。大学受験国語は、限られた条件の下での出題とはいえ、高校の「国語」よりもはるかにバラエティに富む。心ある出題者が、思考の最前線に幾分かでも触れてほしいと願っているからだ。数ある受験問題の中から良問のみを厳選した本書は、たくまずして現代思想のすぐれたアンソロジーとなった。それらを解いてゆくことで、受験生、大学生、ひいては社会人にも、思考力が身につく、明快な一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 【星:2,0】
    今ひとつだった、というのが率直な感想。

    大学受験の現代文の問題を用いて、「近代」とか「大衆」など、大学受験国語によく出てくるテーマを「教養」として学んでいこう、ということなんだと思う。

    本の趣旨が上記のようなため、一般の現代文参考書のように読解力や問題回答力養成には力を入れていない。
    では、各文章のテーマ自体の説明が分かりやすく、詳しいかというとそうでもない。

    読み終わってみって「なんだったんだろう?」という中途半端感しか残らなかった。

    まあ、テーマ自体を解説した本としてはまあまあ珍しいし、著者は大学教授で国語の入試問題を作成する立場の人物なので、問題作成者の視点を知ることができたのは、少ないながらも収穫であった。

  • 本書では、大学受験の国語は現代思想を問うものであり、その思想を知り思考する方法を身につけることで問題を正確に読み解けると述べている。
    思想の解説が非常に分かりやすく、紹介されている問題にも積極的に取り組めた。


    自分は大学受験のとき現代文に意義が見いだせず、あまり好きではなかった。
    しかし本書を読み基本的な思想を知ることで、国語は問題を通していろいろなことを語っている面白いものだと思うことが出来た。

  • ーーー高校・大学生の学力低下が社会的に問題になっているが、憂うべきなのは知識量の低下よりも、自ら考えるための思考力の低下である。大学受験国語は、限られた条件の下での出題とはいえ、高校の「国語」よりもはるかにバラエティに富む。心ある出題者が、思考の最前線に幾分かでも触れてほしいと願っているからだ。数ある受験問題の中から良問のみを厳選した本書は、たくまずして現代思想のすぐれたアンソロジーとなった。それらを解いてゆくことで、受験生、大学生、ひいては社会人にも、思考力が身につく、明快な一冊。ーー

    舌鋒鋭い文芸評論家としても有名な作者が、大学入試に出てきた過去の良問をピックアップして解説したもの。受験国語の回答テクニックよりも、解答までに至るプロセス重視の内容のため、即効力を求める受験生向けではない。

  • 大学受験問題を元にして出題の意図や解説
    社会的背景から あるべき 社会人の教養を考えるもの
    教育者としての見方
    解答に関する項目はない

  • 大学受験中に国語教師の親父に手渡されて、
    そんとき反抗期だった僕は「知るかよ」と思って
    パラっと読んで「へっ」って感じだったが、

    大学卒業して、再度真面目に読んだら


    メッチャおもろいやんけ!


    そして悔しい。
    大学で何をやっていたんだ俺は。

    ということで後悔しないために、
    20歳までに読んでおく本。
    国語の大学試験問題を解きながら
    ゲーム感覚で現代(この本の書かれた2000年
    の問題は、今なおまだ引きずっていると思う)
    の文系諸問題―例えば

    ・世界を「よい」と「わるい」の2つに
    分けてとらえると、どういったことになるのか

    ・現代の「自分」とは?

    ・情報って一体どうしたらええんや!わからん!

    ・「日本国」ってマボロシでしょ?


    みたいなことについて、
    考えさせられる仕組みになっています。


    また、国語学習における最終目標の1つである
    「てめえの言葉で、てめえの考えをもつ」
    についても、自然に身に付くよう
    うまいこと色んなトラップが仕掛けられてる。

  • 著者が、自分好みの問題(というか、自分好みの課題文を扱っている大学入試問題)を取り上げて、「俺ならこう読む」という主張をしたかっただけではないだろうか、という印象を持ちました。

    大学入試における国語の課題文のすべてがそうなのかどうかは知らないのですが、少なくとも、この本で取り上げられている本(課題文)については、「世界や社会(あるいはそれらの一部)の捉え方を、二元論に基づいて解釈する」ものばかりです(著者が、そういう意図をもっているので)。

    もちろん、それらの課題文には、ある種の納得性はあるのですが、あくまでも「解釈」であるがゆえに、それらの主張が正しいかどうかとなると、何とも言えないものも多く、この本を読む限りでは、大学入試における国語の存在は、大学受験生にプラスにはなっていないように思います。

    また、著者のいうところの「教養」については、「現代の学問における主な考え方」に近い印象を受けました。
    それを「教養」と言ってよいのかどうか、自分にはわかりませんが、この本を読むときには、「現代の学問における主な考え方(の一部)」を紹介している本である、と思っておくと、この本を客観的・批判的(批評的の方が適切かも)に読むことができ、国語の力が身に付くように思います。

  • 【書誌情報】
    『教養としての大学受験国語』
    著者:石原 千秋
    シリーズ:ちくま新書
    定価:1,012円(税込)
    Cコード:0281
    整理番号:253
    刊行日: 2000/07/18
    判型:新書判
    ページ数:304
    ISBN:978-4-480-05853-9
    JANコード:9784480058539

    高校・大学生の学力低下が社会的に問題になっているが、憂うべきなのは知識量の低下よりも、自ら考えるための思考力の低下である。大学受験国語は、限られた条件の下での出題とはいえ、高校の「国語」よりもはるかにバラエティに富む。心ある出題者が、思考の最前線に幾分かでも触れてほしいと願っているからだ。数ある受験問題の中から良問のみを厳選した本書は、たくまずして現代思想のすぐれたアンソロジーとなった。それらを解いてゆくことで、受験生、大学生、ひいては社会人にも、思考力が身につく、明快な一冊。
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480058539/


    【簡易目次】
    目次 [003-006]
    はじめに [007-016]

    序章 たった一つの方法 017

    第一章 世界を覆うシステム――近代 029
    過去問(1) 抑圧する近代合理主義 031
    過去問(2) 自然と共同体からの解放 043

    第二章 あれかこれか二元論 065
    過去問(3) 脱構築という方法 066
    過去問(4) 子どもの発見と二項対立 082

    第三章 視線の戯れ――自己 095
    過去問(5) 自我を癒す 101
    過去問(6) 近代的自我からの脱却 108

    第四章 鏡だけが知っている――身体 123
    過去問(7) 「身体をもつ」ことと「身体である」こと 126
    過去問(8) 私の欲望は他者の欲望である 138

    第五章 彼らには自分の顔が見えない大衆 149
    過去問(9) いかなる権威をも否定する権威 153
    過去問(10) 小さな差異を生きる「わたし」 167
    過去問(11) 都市が大衆を生み出した 178

    第六章 その価値は誰が決めるのか――情報 197
    過去問(12) 弱者のふりをした権力 203
    過去問(13) 感性の変革の語り方 219

    第七章 引き裂かれた言葉――日本社会 235
    過去問(14) 共同性と公共性 239
    過去問(15) 個人(ホンネ①)と世間(ホンネ②)と社会(タテマエ) 249

    第八章 吉里吉里人になろう――国民国家 269
    過去問(16) 方言は言語に憧れる 278
    過去問(17) 日本語と想像の共同体 283

    おわりに(二〇〇〇年六月 石原千秋) [298-302]

  • 大学受験の問題を解くことを通して、現代文で理解しておくべき内容を学習するというもの。
    二項対立などの論の立て方をテーマとして扱う。
    各文章に出てくるキーワードの理解の他に、本を読むときに本当に理解して読んでいるか、というのを再確認するために効果的なアプローチかも知れない。

  • 現代思想の超・入門書的な位置づけだと勝手に思っている。
    まとめよりもピックアップに近いテーマの選び方。

  • 基本は二元論。

    大学受験国語は、思考の最前線に触れてほしいと出題者が願っている、世界を知るための思考の座標軸、思考のアンソロジー。

    序章
    ◯二元論で読むこと。

    第一章 近代
    ◯「近代」とは「天才」を必要としないシステムを作りだした時代。
    ◯「近代」とは「発見」の時代。
    ◯「近代合理主義」「世俗化」「内面の発見」「労働の発見」「個人/共同体」

    第ニ章 二元論
    ◯「近代」的思考とは、二元論。
    ◯脱構築批評は、「近代」的思考である二項対立を利用しながら、「近代」を批評。
    ◯「他者」を発見することは「自己」を発見することが、二項対立的思考の本質。
    ◯参考:『現代思想の冒険』竹田青嗣

    第三章 自己
    ◯自己の発見は他者の発見と同時でなければならない。

    第四章 身体
    ◯「自己とは身体である」メルロ=ポンティ
    ◯身体はイメージである。
    ◯「身体は他者である」上野千鶴子

    第五章 大衆
    ◯大衆とは他人志向型の人間である。
    ◯他者の視線の内面化。
    ◯大衆の顔は大衆自身にも見えない。
    ◯『民主主義は「権威」ではなく「人気」に支えられている』上野千鶴子
    ◯ポストモダン思想の中心概念は「記号」。世界は記号の集成。
    ◯「言語は現実から自立した差異の体型」ソシュール
    ◯都市は人々を大衆に変容させる装置。

    第六章 情報
    ◯いったい誰が情報としての価値を決めるのか。
    ◯権力は情報を隠すことによって権力たらんとする。

    第七章 日本社会
    ◯「公共性」と「共同性」。
    ◯「建前」と「本音」。
    ◯「社会」と「個人」。
    ◯「社会」と「世間」と「個人」。

    第八章 国民国家
    ◯国民とは、同一の言語を話し、同一の国籍を有し、同一の法の支配のもとにおかれる存在。
    ◯フランス革命は、個人を国民として直接的に国家に結びつける原理を生み出した。
    ◯国民とは、国境を内面化した個人。
    ◯国民とは、国家の原理を体現した個人。
    ◯比喩は人の感性を強力に教育する装置。
    ◯言語統一が成立することが国民国家形成の前提条件。
    ◯文化の画一化が進んでいるからこそ、反発する民族主義や宗教的原理主義者が広がる。

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著者プロフィール

1955年生。早稲田大学教授。著書に『漱石入門』(河出文庫)、『『こころ』で読みなおす漱石文学』(朝日文庫)、『夏目漱石『こころ』をどう読むか』(責任編集、河出書房新社)など。

「2016年 『漱石における〈文学の力〉とは』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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