バカのための読書術 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
3.22
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本棚登録 : 448
レビュー : 68
  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480058805

作品紹介・あらすじ

現在、「知」は混迷状態に陥っている。インテリたちはかつてないほど熱心に西洋の新理論の輸入に血道をあげ、難解な言葉と言い回しに身をやつしている。その一方で、有名大学の学生がフランス革命の存在を知らなかったりする。では、この両極の中間に位置する人は、何をどう読めばよいのか。学校は出たけれどもっと勉強したい人、抽象的な議論がどうも苦手だという人。そういう「バカ」たちのために、本書はひたすら「事実」に就くことを指針とし、インチキ現代思想やオカルト学問、一時の流行に惑わされず、本を読み勉強するための羅針盤となるべき一冊である。本邦初「読んではいけない」リスト付き。

感想・レビュー・書評

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  • 本を読まない生徒対策になるだろうかと思ったら、自分向けの内容でした。
    一部の人文科学が不必要に難化している現実と、教養がないばっかりにその現実についていけない、しかしインテリたちにバカと思われたくない人々。どうやって本を読めばいいのかという話。
    難しいと思えば読まなければいい、と言われてほっとした。これが読めなきゃ…って強迫観念を持ってるのは私だけじゃなかったんだなぁ。
    私自身「不純な動機の読書家」ってのはよくやるから、それでいいのかーって。
    まずは、「事実につく」。自分で学ぶときにも、生徒に教えるときにも、忘れないようにしなきゃ。

  • 勉強法とかのハウツー本ではなくて、どっちかというとブックガイド的な本。バカといっても少なくともガチで大学受験した程度の教養はないと、全く役に立たない上に何言ってるか分からないはず。
    まぁ小谷野ファン向けの一冊ですかね。


    100円。

  • 何かを学びたい、という知的好奇心はあるんだけれども、買ってくる思想書は前書きとあとがきしか読まない(読めない)人のための勉強法指南。小谷野が提案するのは「事実」の集積である歴史を学ぶことにより教養を深めていこう、という方法。歴史小説、歴史漫画をとっかかりとして、歴史的な知識を蓄積し、教養を深めていけばいい。思想と違って歴史的事実に関しては「はやりすたり」がないから、学んでソンは絶対ない、と小谷野。思想や文学に接するのはその後でもよいということなのだろう。

     小谷野が歴史の学習を勧める背景には、次のような問題意識がある(と思う)。八十年代のニュー・アカデミズムの流行は相対主義を知の領域に蔓延させた。ニュー・アカデミズムというとフランスの現代思想を核とした学問のスタイルのことだけれども、フランスの現代思想がやって来たことというのは、乱暴な言い方かもしれないが「絶対的真理」とか「客観的事実」という概念の破壊だった。こうした概念の是非を問うことは確かに意味のあることだが、俗世間ではこうした「高尚」な問題について考えてみないままそのスタイルだけが受け入れられてしまい、「ほんとうのこと」をまじめな顔して議論することを恥じる風潮や、歴史に対する無関心を生み出す一因となった。でも、知的な議論というは、たとえそれがカッコ付であっても事実を基盤をせざるをえない。例えば、太平洋戦争について議論する場合、皇国史観であれ、左翼の史観であれ、色が付いていてもひとまず手にとって読まなければ議論さえ成立しないのだ。つまり、小谷野が促しているのは、どんな方法であれまず土俵に上がること、知の現場に足を踏み入れることと言っていいと思う。

     ところで小谷野はこうした文脈とは別に「知的な」書物は、「明晰に」、つまり判り易く書かれるべきであると書いている。こう書くと実に当たり前なことなのだが、近現代の知の領域では必ずしもそうでないんだな。デリダやドゥルーズ、ラカンの書くものはきわめて難解で、非論理的な書かれ方をしており、小谷野自身も「解らなかった」と言う。この本にはこうした思想家に対する批判もある。小谷野の批判する文体とはどのようなものなのか。去年読んだ本から面白い例を紹介しよう。

    「肛門・男根…は価値を奪われた換喩的隣接性の中で機能し、男根状の糞塊という概念は隠喩的代置の領域の中で機能する」(『サイエンス・ウォーズ』 金森修 東京大学出版会 2000)

    これは『サイエンス・ウォーズ』(大変面白い本なのでそのうち内容を紹介します)にある現代フランス思想の文体のパロディの一例なのだが、一体何を言おうとしているか理解できるでしょうか? 

    「肛門とペニスはすぐ隣りにあるのに形は似ていないが、肛門から出てくる大便はペニスと形が似ているときがある」

    …アホらしくなってくるが、思想の領域では実際にこういう文体がまかり通っている。

    小谷野はこうした明晰でない文体、論理を厳しく批判する。こうした発言からも『バカのための…』における小谷野自身の学問観は保守的、あるいは古くさいと批判されうるものかもしれない。だが、僕自身は小谷野の議論はまっとうなものだと思うし、「面白さ」のみを追求するきらびやかでおしゃれな「思想の戯れ」は無内容と紙一重だとさえ僕は思う。 インテリの文体という事に関して付け足し。易しいことを難しく書くことなら誰でも出来るが、難しいことを易しく書くのはインテリの義務だぜ、と僕は思うのだ。だから、上のような文体で書かれた文章がいくらすぐれた内容を持っていたとしても、批判されなければならない、とも思う。だが、わけのわからん文章を書く人にはその人なりの理由はあるらしい。最近こんな文を読んだ。

    なにしろ、文化が「文化財」「文化価値」として商品化され、市場で安易に消費されていく時代、そうした文化のあり方を批判する「文化批判」そのものでさえ、簡単に商品化されかねない。それを拒否しようとするアドルノや、彼の属するフランクフルト学派の人たちの批判の文体は、いやでも安易な理解をはねつける難渋なものにならざるをえない。めったに使われない言葉を選び、文法を無視し、わざと読みにくく分かりにくく書くという戦略がとられる。(『哲学以外』 木田 元 みすず書房 1997)

    アドルノはデリダやラカンとは全く別の思想的文脈に属するドイツの思想家だが、この人の書く文章もきわめて難解で翻訳がちぃともでない。上の引用はアドルノの文章のわからなさを説明してくれているが、本当にアドルノがこう思っていたのだったら、アドルノ間違ってるよなあ… 消費社会と戦うためにはそんな方法しかなかったんかい、と僕は思ってしまいました。


  • 読書術なのか読書論なのかよくわかんない論がうずまいてる本

    目次
    <blockquote>第1章 「難解本」とのつきあい方
    第2章 私の「知的生活の方法」
    第3章 入門書の探し方
    第4章 書評を信用しないこと
    第5章 歴史をどう学ぶか
    第6章 「文学」は無理に勉強しなくていい
    終章 「意見」によって「事実」を捩じ曲げてはならない
    </blockquote>
    ちょっとポイントが絞れないんすけど、まぁ、感想でも。

    <blockquote>バタイユは「エロティシズムとは死にまで至る生の称揚である」というフレーズで有名だ。私もむかしはこれを聞いて、実はよくわからないながらわかったような気がしていたが、やっぱりわからない。この種のアフォリズム、つまり<u>一つの文で何か深遠なことを言っているように思わせるやり方</u>というのは、かっこいいし、<b>何となくわかったような気にさせるけれども、あまり信用しないほうがいい</b>。
    (中略)
    <u>ほとんど文学青年のたわ言のようなもの</u>である。</blockquote>
    その、最後の叩きようが面白かったので載せてみた。
    ワンフレーズで表すときにあまりに凝った文章を書くけれど、それってやっぱり「ええかっこしい」なんだろうね。しかし、学者さんというか、そういう人が批評っぽく書いた文章は手加減を知らずにばっさり斬って捨てるなぁ……。

    これもそうかな
    <blockquote>ユングのすべて……オカルト。</blockquote>
    いや、まあこの前の論旨を見ればそう考える人なのはわかるけど……。

    おっと読書論。
    <blockquote>しかし詮ずるところ、読書術の本が難しいのは、一般人といってもさまざまだということで、<b>結局人それぞれ自分の身の丈に合った読書法があり</b>、<u>誰にでも合う方法とか、誰にでも合うブックガイドとかいうものが作れない</u>からなのである</blockquote>
    とまあ、こう言いつつも男女・25歳前後でばっさりと分けたリストを作ってたりしますが……。
    まぁ、この著者が薦める本リストと思って読めばいいんだろうか?

    こういうとこ、なんか論旨がまっすぐでない感じがして、結局わかったようで、完璧にはわかんなかった。
    あ、俺もバカなのか……。

    まぁ、それだけ、主義主張は暴発するほど強いものがあるんだけど、なんかしっくりこないんだよなぁ……。
    学者さんはどうも難しい言葉を使って説明したがる。事例の紹介にしても、ややマニアックすぎる(「水底の歌」をめぐる論争など)
    こういうの、週刊誌を読んでる年配の方向けすぎて、若者はついてこれないと思うんだけれど。
    ……そういう世界に住んでいるから、バイアスから抜けられないんじゃないのかな?

  • バカのための読書術

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ−評価なし

    [感想]
    余り鮮烈な印象はないが、難しい本を無理に読む必要がないというのは読書の真理だね。
    難しいと感じるということが自分が内容を理解できるレベルに達していないということだから、興味があるならレベルを下げた本を読むことから始めたほうが結果的には近道ななる。
    また、現代国語が面白く無いよいうことは同意できる。現国の授業で習った内容はほとんど覚えていないな。古文は苦手だったけど、興味があるんだよな。現代語訳でもよもうかな

  • 途中まで読んだが上から目線で好きになれなかった。

  • 2009/10/09

  • 久しぶりに良書。モテない男のときより、読んでいて面白い

  • なるほど。「バカ」が嫌いな著者による、「バカ」を減らすための書か~。「バカ」を自認する筆者による、同類に向けた本だと勝手に思ってたから、良い意味で裏切られました。いわゆる”古典”であろうが退屈なものは退屈、っていう切り捨て方は魅力的だし、内容は秀でているけど難解だから「バカ」には向かない、っていう評価も分かりやすい。最後にオススメ本がまとめられているけど、流れに沿って読み進めているうち、そこに上げられている本くらいはせめて読まないと、って気分にさせられる。読み物としても十分に楽しめる、優れたブックガイドだと思いました。

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著者プロフィール

1962年茨城県生まれ。本名読み・あつし。東京大学文学部英文科卒。同大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了。1990-92年、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学に留学。学術博士(超域文化科学)。大阪大学言語文化部助教授、国際日本文化研究センター客員助教授などを経て、文筆業。文芸批評、小説、演劇、歴史、男女論などフィールドは幅広く、独自の「男性論」を展開。また、論壇・文壇のもたれ合いへの鋭い批判も行なっている。著書に『夏目漱石を江戸から読む』(中公新書)、『江戸幻想批判』『リアリズムの擁護』(新曜社)、『〈男の恋〉の文学史』(朝日選書)、『もてない男』『バカのための読書術』(ちくま新書)、『日本売春史』(新潮選書)、『退屈論』(河出文庫)、『聖母のいない国』(河出文庫、サントリー学芸賞受賞)、『恋愛の昭和史』(文春文庫)など多数。小説に『悲望』『童貞放浪記』(幻冬舎)、『美人作家は二度死ぬ』(論創社)。

「2018年 『江藤淳と大江健三郎 戦後日本の政治と文学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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