村からみた日本史 (ちくま新書)

  • 筑摩書房 (2002年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784480059284

感想・レビュー・書評

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  • “歴史を正論という勝者の観念から現実に引き戻す”

    いわゆる通説というものに異を唱え、農民の真実の姿をあぶり出し、江戸時代をとらえなおす。
    そういう本です。
    つまり本筋ではないんですね、歴史のとらえ方が。
    だからどうにも攻撃的で独断的。

    とはいえ、江戸時代の農民がすべて虐げられ、窮乏生活を送っていたというような今までの歴史観は、私も疑問でした。
    何度も幕府が「倹約令」を出したということは、華美にはしる余裕があったことも事実なのでしょう。

    農民一揆が、暴徒が無計画に破壊しまくるものではなく、破壊すべきもの(農民を虐げ私服を肥やす輩)と、手を出してはいけないもの(庶民の味方)をきっちり区別し、文書で回覧しているというのは初めて知りました。
    つまり農民といえども、普通に読み書きできる人が結構いた、ということでもあります。

    直訴、越訴なども、首謀者は死罪になることは知っていましたが、その代わり要求を認められるケースも結構あったと。
    それをきっかけに良い方向に変わった事例が多々あったから、首謀者は死罪になるとしても、直訴という手段は有効だったわけなのですね。

    ただ、そういうところから、農民は結構自由であったという結論に持って行くのは、さすがに無理と思います。
    米=年貢である以上、やはり農民の苦労は相当だったと思います。

    この本で紹介しているの元禄時代の越後の農民は、気候的に安定していた時代のコメどころですから、そりゃあ余裕はあったでしょう。
    でも、米を作るにも水をためるにも土地が足りないような地域で、棚田だ千枚田だと景観こそは素晴らしくても、田んぼとしては無理のある地形を強引に田んぼにしなくては年貢を納められなかった地域が、どれほど多くあったことか。
    冷害に次ぐ冷害で、村がまるまる消滅してしまった地域が、どれほどあったことか。

    宗門人別帳の上では農民と記載されていても、実際は国を抜け出て金回りのいい仕事をしている人がたくさんいた。
    だから、農民=貧乏ではない
    という書きぶりですが、農家としての収入以上のものがあるから抜け出すのでしょう?
    そして、抜け出せない人たちがその分も米を作らないと、村としての年貢は納めきれないわけでしょう?

    やっぱりそこを無視してはいけないんじゃないかと思うのです。

  • いわゆる「近世貧農史観」を明快に否定する著作。
    在地の史料からものを言っているので説得力は非常にある。
    あるけど、引用している研究がすごく古いのが気になる。
    とはいえ「江戸時代の農民は貧乏」という通念はたしかに
    一般的だと思うから、むしろ近世の研究が一般に還元できて
    いない状況のほうが歴史学として問題とすべきことなのかも
    しれない。

    とはいえ、過剰に近世の「近代性」を強調するのもこれまた
    いかがなものかと思われるのである。
    農民には「近代」はなかったのか?
    明治新政府による身分制否定の政策は、人々にとっては
    無意味なものだったのか?
    とてもそうは思えない。僕が近代を研究しているからかもしれないけど。

    ただ近代を単純に「解放」の時代を考えることは危険だな、と
    思わせてくれた点ではとても勉強になった。
    近世の勉強もせんといかんなあ。

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著者プロフィール

1944-2018年。新潟県佐渡郡金井町生まれ。新潟大学人文学部経済学科卒業。高校教諭を経て、67年京都大学国内留学、88年筑波大学教授、94年群馬県立女子大学教授などを歴任。従来の、武士を中心とした「日本近世史」の史観に異議を唱え、当時の一般庶民である百姓こそが時代の主役であったという視点を、村々に残る史料をひもときながら主張しつづけた。著書に『佐渡金銀山の史的研究』(刀水書房、第9回角川源義賞)、『帳箱の中の江戸時代史』(刀水書房、新潟日報文化賞)、『日本の江戸時代』(刀水書房)ほか多数。

「2022年 『百姓の江戸時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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