転落の歴史に何を見るか―奉天会戦からノモンハン事件へ (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 73
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480059376

作品紹介・あらすじ

一九〇五年の奉天会戦から一九三九年のノモンハン事件に至る三四年間は、国家改造計画から共産主義思想まで、日本が内発的な改革に呻吟した時代だった。しかし結局、軍部の専制を防げず、敗戦という悲しみと汚名の結末を迎えることになる。自己改革が失敗に終わった原因はどこにあったのだろうか。

感想・レビュー・書評

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  • 一文一文が示唆にに富んでいる良著。大変参考になる。
    幕末から現在までの転落にいたる変遷を、冷静に分析。

    指導者となるべきエリート層の英才教育が、何よりも大切。
    幕末までは指導者層として代々続いてきた武士が、英才教育を受けてきた。
    武士階級の知識と矜持により、世界から称賛される国になったが、武士として養育された人から新しい世代に世代交代されるとともに、「道徳的緊張」はゆるみ、日本は転落し敗戦を迎える。そして現在もゆるみっぱなし、転落したまま。

    最後に世代ごとに、どう取り組んだら日本は立ち直るのかを提案している。

  • さすがは現役エリート官僚。設定したテーマから僅かばかりも外れる事なく論を進め、きちんと結論を導いている。頭の良い人ってこう言うものなんだと改めて感心した(何様目線?!)。
    何故日露戦~先の大戦の間に日本軍の能力が転落したのか、その原因は有能なジェネラリストの明治の元勳が表舞台から消え、狭い専門教育を受けたスペシャリストのエリートに世代が替わったから。これはこれで非常に説得力のある論考だが、著者の書き方からは明治元勳が標準で以降の世代の能力が著しく劣っているとの前提に立っているように感じる。でも矮小な無能指導者層が現在まで続いていることをみればむしろ明治のリーダーが突然変異的、例外的に優秀だっただけなのではないか?
    最終章で明治維新と戦後はどちらもゼロベースからの出発だったと言っているが、それは違う。江戸時代に育まれた豊かな文化や精神の基盤がなければ明治維新は成功しなかったし、非常事態のなかで異才が登用された結果だった。その意味で維新元勳は継続的な人材の発掘育成システムの構築には失敗したわけだ。
    そう思うと明治維新のような革命的な動乱が起こらない限り明治のリーダーに相当する人材は(仮にいたとしても)表舞台には出てこないと思われる。世襲ばかりの国会議員を見てりゃすぐわかるけどね。

  • 日露戦争(奉天会戦)からノモンハンまでの30年間で転落していって敗戦したのはなんで、教訓は何でしょうかね。と言うお話。

    ・日本軍が戦略転換できなかったのはなぜか?という問いに元航空参謀の返事が
     「いままで苦労していた水夫さんにわるいから」!!
     (でも、こうやって、なあなあなこと結構あるよな)

    ・いじめや不登校の問題も大事だけど、良質な指導者層(国を率いられるような優秀な人材)をどうやって育てるか、って教育の問題もあるし、そっちのほうが大事かもよ。
     (たしかに。みんなで馬鹿になってもしょうがないな)

    ・モスクワ近郊の日本人捕虜は感化され「インターナショナル」や「スターリン賛歌」を進んで歌い、歌わない者(当然日本人捕虜)は村八分にされ生命の危険(あるいはリンチ)にあった。一方ドイツ人捕虜にそんな人はいなかった(歓喜の歌を歌っていた)!!(「沈黙」に通じる話だな。いかにも日本人らしく、怖い)

    ・「日常の自転」の結果、惰性になり思考停止する。
     (たしかに、つねに何か変化させないとまずい)

    ・戦死、あるいは殉死すると二階級特進というのは、日本だけの制度で、諸外国ではそんなものはなく、論功あれば特進する。日本は死ぬことが論功で、優秀な成績でも特進しない。

    ・官僚の汚職は明治が最も少なかった。
     
    結論は優秀な人材をうまくそだてて活用していくことだよね。育てるシステムがないんだけど。出る杭は打たれるし。あと優秀な人が気持ちよく働けるシステム。

  • 日露戦争で頂点を迎えた明治維新後の日本の組織が、
    なぜ転落していったか
    組織論
    なぜ組織がだめになるのか
    非常に有益だった。

  • 国会質問がラップ調に編集されて人気の、自民党 斉藤健議員が2002年に著したもの。結論は敢えて避けてあったが、多少強引でも良いから筆者なりの結論が見たかった。

  • 日本国家の転落の歴史から今も痛々しいほど残っている教訓。
    ・組織の合理性よりも人間関係優先
    ・異分子を排除し独創性を軽視
    ・日常の自転→思考停止→組織学習不活発
    ・組織の中心が消え、縦割り割拠主義が横行
    ・お題目支配
    ・人事の緩み、悪平等的発想→適材適所、抜擢人事なし
    まさに日本国の大きな問題、課題である。

  • 09/08/12 いろいろと考えさせられるテーマである。行き着くところは組織論か。

    11/02/02 再読。半ば過ぎまでは良い本である。

  • いじめ、汚職、責任転嫁。信じられる対人関係が瓦解し、社会の醜い腐敗が表面化している今だからこそ勧めたい本の一つです。

    今、社会で巻き起こっている組織のあり方は、何もつい最近始まったものではありません。安定や安心に身を任せ、目的志向や事業のプロセス等に綻びが生じても、組織の人間関係を非常に重要視した結果、堕ちる所まで転落した例は、過去にも多数存在しておりました。
    過去を変えることは出来ません。でも、過去を教訓に、現在の、そしてより豊かな未来の世界を作り上げることが出来ます。孔子の『論語』にある『温故知新』の精神ですね。

    かつて日本が経験した転落の歴史を踏まえ、腐敗が露呈した現在の社会をどう復活に導いていくか。組織論、リーダーシップ論の観点で書かれています。
    文量としても多くなく、比較的読みやすい本です。明治維新を担ったリーダーと、その教育を受けたものの、専門的な流れに特化してしまい、コントロールが利かなくなってしまった昭和初期。対する諸外国のリーダーシップ。
    それに対し、今を、そしてこれからをどうすればいいのか、というところについて、具体的な提案等はあまりありませんし、「過去から学ぶのは当然でしょ」と思うことも少なくありません。が、当然のことだからこそ意識して学ばなければならないのも事実。

    「何かおかしい」「現状を変えなければならない」。そう感じた時、普段は埋没されて目に見ることが出来ない歴史の教訓に、もう一度刮目しなければなりません。

  • 賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶという格言があるそうだが、私個人では、学ぶのは歴史と経験の両方でないと、真に学ぶことにはならないのではないかと思っている。歴史は知識だが、それに知を通わせるのは経験ではないかと思うからだ 塩野七生2001

    何が物事の本質か。これを議論し突き詰める組織風土を維持し続けることだ 野中郁次郎
    そしきが20,30年経つと人間関係や過去の経緯など本質的でないところをよりどころとして、重大な判断がなされる。
    武士道 新渡戸稲造

    海軍 山本権兵衛海軍大臣が日露戦争時に東郷平八郎を連合艦隊司令官に、秋山真之を首席参謀とした
    ノモンハンの作戦参謀 辻政信

    奉天の会戦1905からノモンハン1939までの34年間の間で国が変わるほど変化した

    明治維新から奉天の会戦までは、明治維新の立役者がリーダ 明治の元勲
    そのあとは士官学校での人たちがリーダー
    司馬遼太郎 昭和に入って20年間 魔法をかけられて、森の中に迷い込んでしまった。

    次世代を育てる教育、とりわけジェネラリストを育てる教育にもっと多くの現世代の人々が関心をもたなくてはならない

  • 終戦後から現在までは奉天会戦からノモンハン事件の繰り返しにならないには
    日本に真のジェネラリストの育成が重要と力説

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