保守思想のための39章 (ちくま新書 366)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480059666

作品紹介・あらすじ

バブル崩壊と冷戦の終焉から十年すぎた。しかし今なお、経済の立て直しから有事への対処などに至るまで、依然として議論だけが続いている。しかも、その空疎な対立と不毛な論争の蔭で、学級崩壊、官民を問わない不正行為の続出、各種犯罪の増加など、日常の社会そのものは緩慢な自死の過程をたどりつつある。そして、資本主義の挫折と帝国主義の再来、それが世界の大状況となっている。この危機に、私たちはどう臨めばよいのだろうか。単なる郷愁やかたくなな復古ではなく、美徳と良識にもとづいて公共空間を再建するため保守思想の真髄をさぐる。

感想・レビュー・書評

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  • 先生。所有している御本半分以上未読です。
    先に逝かれるとは思いませんでしたよ。
    著者の方って死んでしまった気持ちになりません。
    まだ何処かで存命されているような気持ちになります。
    渡邉昇一氏に続いて今年度は重たい年です。

  • 「保守思想のための39章」西部邁著、ちくま新書、2002.09.20
    238p ¥756 C0231 (2023.01.26読了)(2007.11.01購入)

    【目次】
    1章 地球の危機―帝国主義が蔓延する
    2章 情報の空虚―ITが空回りする
    3章 「戦後」の完成―アプレゲールの末路
    4章 感情の優位―合理の前提はどこにあるのか
    5章 葛藤の遍在―感性は錯綜している
    6章 平衡の必要―健全な精神は精神の曲芸を要求する
    7章 幻覚の不可避―精神のはたらきはすべて仮想である
    8章 持続の意義―リアリティの根拠を求めて
    9章 成熟の希求―常識という「死者の書」
    10章 愛着の必然―手段へのこだわりが生をゆたかにする
    11章 伝統の由来
    12章 「自分」の成り立ち
    13章 無政府の秩序
    14章 家族の神聖
    15章 祖国の愉悦
    16章 死生の重量
    17章 虚無の深淵
    18章 道徳の微妙
    19章 知恵の探求
    20章 議論の不可欠
    21章 寛容の限界
    22章 進歩の逆説
    23章 漸進の知恵
    24章 実験の狂気
    25章 権利の暴走
    26章 輿論の変質
    27章 議会の不倒
    28章 自治の危うさ
    29章 法律の濫用
    30章 信頼の危機
    31章 市場の蹉跌
    32章 公共性の時代
    33章 組織への愛憎
    34章 官民の協調
    35章 大衆人の病理
    36章 大衆の反逆
    (1)大衆の定義
    (2)大衆人の無残
    37章 象徴の帝国
    38章 儀式の体系
    39章 有事の発生
    人名一覧

    ☆関連図書(既読)
    「国家と歴史」西部邁著、秀明出版会、1998.04.10
    「ナショナリズムの仁・義」西部邁著、PHP研究所、2000.12.25
    「エコノミストの犯罪」西部邁著、PHP研究所、2002.04.30
    「愛国心」田原総一朗・西部邁・姜尚中著、講談社、2003.06.25
    「アホ腰抜けビョーキの親米保守」小林よしのり・西部邁著、飛鳥新社、2003.07.05
    「核武装論」西部邁著、講談社現代新書、2007.03.20
    「小沢一郎は背広を着たゴロツキである。」西部邁著、飛鳥新社、2010.07.29
    (「BOOK」データベースより)amazon
    バブル崩壊と冷戦の終焉から十年すぎた。しかし今なお、経済の立て直しから有事への対処などに至るまで、依然として議論だけが続いている。しかも、その空疎な対立と不毛な論争の蔭で、学級崩壊、官民を問わない不正行為の続出、各種犯罪の増加など、日常の社会そのものは緩慢な自死の過程をたどりつつある。そして、資本主義の挫折と帝国主義の再来、それが世界の大状況となっている。この危機に、私たちはどう臨めばよいのだろうか。単なる郷愁やかたくなな復古ではなく、美徳と良識にもとづいて公共空間を再建するため保守思想の真髄をさぐる。

  • 著者の考える保守主義について、原理的な考察をおこなった本です。

    著者によれば、保守主義はただ伝統を形式的に墨守するだけの立場とは異なります。保守主義とは、伝統や慣習のうちに、現在の生の活動にとって重要な平衡の基準を見いだそうとする立場でなければなりません。

    人間は、現在の状況の中で自由に決断することを迫られています。保守主義は実存主義とともにこのことを認め、しかしそうした決断に際して私たちを支えてくれる良心を伝統の知恵の中に見ようとする点で、単なる決断主義的な実存思想とは区別されることになります。

    また、保守主義は正統と異端のせめぎ合いが存在することを認めます。しかも、自分自身が伝統の正統な継承者であるかどうかということに関して、健全な懐疑を忘れることもありません。この点で保守主義は、正当と異端の区別そのものを廃棄し、いっさいの伝統から離れてしまおうとする急進主義とは区別されますが、同時につねに自分自身を疑ってみる謙虚さとユーモアの精神を忘れることはないとされます。

    さらに著者は、チェスタトンの「死者の民主主義」という言葉を紹介して、伝統の知恵に基づきながら現在の状況に適切に対応する姿勢が、保守主義のあるべき姿だと述べています。

    保守の思想の精髄を哲学的に掘り下げており、単なる状況論を超えた保守主義の魅力が語られています。

  • [ 内容 ]
    バブル崩壊と冷戦の終焉から十年すぎた。
    しかし今なお、経済の立て直しから有事への対処などに至るまで、依然として議論だけが続いている。
    しかも、その空疎な対立と不毛な論争の蔭で、学級崩壊、官民を問わない不正行為の続出、各種犯罪の増加など、日常の社会そのものは緩慢な自死の過程をたどりつつある。
    そして、資本主義の挫折と帝国主義の再来、それが世界の大状況となっている。
    この危機に、私たちはどう臨めばよいのだろうか。
    単なる郷愁やかたくなな復古ではなく、美徳と良識にもとづいて公共空間を再建するため保守思想の真髄をさぐる。

    [ 目次 ]
    地球の危機―帝国主義が蔓延する
    情報の空虚―ITが空回りする
    「戦後」の完成―アプレゲールの末路
    感情の優位―合理の前提はどこにあるのか
    葛藤の遍在―感性は錯綜している
    平衡の必要―健全な精神は精神の曲芸を要求する
    幻覚の不可避―精神のはたらきはすべて仮想である
    持続の意義―リアリティの根拠を求めて
    成熟の希求―常識という「死者の書」
    愛着の必然―手段へのこだわりが生をゆたかにする〔ほか〕

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 「葛藤の遍在」を述べた章が印象的です。

    「自分がとくに打ち込んでいる狭い領域の外にある一切のことを知らないのを美徳だと公言するに至り、全体的知識にたいする好奇心をディレッタンティズムとよんでいる」とオルテガは専門家を批判しますが、そこには葛藤の遍在がないからです。

  •  古いものを好む、という性格が私にはあったりする。
     そういうのもあってなのだろう、こういう本に惹かれたりするのは。
     そしてその性格は今でもあまり変わりようは無い。
     そこで思う事を述べれば、
     表層にあるものに囚われる事無く、
     深層にこだわろうとし、それを見出す事、
     その作業に従事する事、さすれば人は自然に保守化していくのではないかと思う。
     単なる懐古趣味を気取るのが保守ではない...いや保守であったとしてもよいにしても、その場合、保守は信用できる概念であると私は考えない。
     ともかくそうした態度を有していれば、流行・新奇なるものを嫌おうと意識的に努める事はなく、無意識的に流行・新奇なるものを退ける構えが熟成されていくのではないかと私は考える。
     そしてそれは、気づけば歴史・文化・慣習・伝統といったものへの愛着へとなり、むやみやたらに文明に流さない生を確保し、精神の安定へと導くのではないか。
     その橋頭堡を築くための参考になる一冊ではないかと思う。〔平成22(2010)年2月14日〕

  • 【本書を買ったきっかけ】西部邁氏の著書「国民の道徳」に影響を受け、保守思想というものに興味があったので買ってみた。
    【著者プロフィール 発売日時】1939年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業。東京大学教養学部教授を経て、現在、『発言者』主幹、秀明大学教授。著書として、『経済倫理学序説』(中央公論新社、吉野作造賞)、『生まじめな戯れ』(筑摩書房、サントリー学芸賞)。93年、正論大賞を受賞。第一刷発行 二〇〇二年九月二十日(アマゾン、著書から引用)。【感想】西部邁氏の著書のいつもながらの特徴だけども、容易に理解はできない。だが、繰り返し読むうちにだんだん理解できるようにはなってくる。内容は深いので、私には損の無い一冊。保守思想に興味のある人には良いと思う。

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著者プロフィール

西部邁(にしべ・すすむ)
評論家。横浜国立大学助教授、東京大学教授、放送大学客員教授、鈴鹿国際大学客員教授、秀明大学学頭を歴任。雑誌「表現者」顧問。1983年『経済倫理学序説』で吉野作造賞、84年『気まぐれな戯れ』でサントリー学芸賞、92年評論活動により正論大賞、2010年『サンチョ・キホーテの旅』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。『ソシオ・エコノミクス』『大衆への反逆』『知性の構造』『友情』『ケインズ』など著書多数。

「2012年 『西部邁の経済思想入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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