組織戦略の考え方: 企業経営の健全性のために (ちくま新書 396)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480059963

作品紹介・あらすじ

バブル期には絶賛された日本的経営も、いまや全否定の対象とすらなる。だが大切なのは、日本型組織の本質を維持しつつ、腐った組織に堕さないよう、自ら主体的に思考し実践していくことだ。本書は、流行りのカタカナ組織論とは一線を画し、至極常識的な論理をひとつずつ積み上げて、組織設計をめぐる多くの誤解を解き明かす。また、決断できるトップの不在・「キツネ」の跋扈・ルールの複雑怪奇化等の問題を切り口に、組織の腐り方を分析し対処する指針を示す。自ら考え、自ら担うための組織戦略入門。

感想・レビュー・書評

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  • 職場同僚の推薦図書として読んだ。

    第2部 組織の疲労 第7章 トラの権力、キツネの権力、第3部 組織の腐り方 第9章
    組織腐敗のメカニズム、 が、自分の勤める会社が観察されてたのか、と思うぐらい、グサグサ来た。著者は学者一筋の筈なのに、随分とフィールドワークを熟して来たのだろう。

    特に、「宦官vs武闘派」で、外向きにリスクを取って勝負している武闘派が、安全地帯から批評を述べるだけの宦官に屈するパスを解説する箇所は、当たっているだけに恐怖を感じた。(自分の仕事は、ここでいう宦官にかなり近いのでは?と。。)

    あと、マトリクス型組織を、ミドルに権限ではなく「悩み」を委譲する形態、と断じる分析が秀逸だった。(P73-76)

    組織は生き物であり、破壊と創造、新陳代謝を絶え間なく続けて行かない限り腐敗していくものだ、と肝に銘じたい。

  • 第一部
    組織の基本

    組織の基本は第一に官僚制であり、下からロワー、ミドル、トップに分けられる。ロワーが基本的なルーチンを行い、マニュアルに載っていないような例外事項はヒエラルキーの上へと登っていき処理される。トップは、例外への対応はせず、長期的なスパンにたった経営計画など戦略思考が求められる業務を行い、ミドルは両者の中間として業務を行う。ここで、例えば、例外事項が多くなってしまい、トップが必要な意思決定をできないくらいそれへの対応に追われてしまうと組織は正常ではなくなってしまう。第二ボトルネックへの注目と対処である。第三に組織はヒトが運営するものということである。これは当たり前のことかもしれないが、基本的に組織構造を変えたから全てハッピーとなるわけではない。組織構造以前にヒトに問題がないかをボトルネックを考慮して考えることが重要であり、この筆者の主張は非常に的を得ているものであると考えられる。そして、ヒトが組織を運営する以上ヒトのことを考えなくてはならない。そこでマズローが挙げられているが、日本では自己実現欲求が重視され、所属・承認欲求が軽視されていると筆者は言う。自身は承認欲求が強い方であるので、あまり新鮮さは感じなかったが日本企業全般の空気として頭の片隅に入れておくことは損でないと考えられる。


    第二・三部

    ヒトが運営する以上ヒトの心理が絡んでくる。個人としてのヒトと組織の中でのヒトの行動は必ずしも一致しない。組織の疲労・腐敗原因として筆者はフリーライダーの存在や厄介者、ルールの複雑怪奇さ、そして成熟事業部の暇を挙げている。外に向いて利益を稼いでくるヒトが、内向き調整役・社内政治家(宦官)のヒトに食われてしまうということは古来よりあったことであろう。(中国の官僚・外戚・宦官の話は格好の例。)本来利益を出すために外に出て行くヒトが、内向きな政争ばかりに気を取られていくと会社はダメになっていってしまう。そうさせないためにも上層部は敏感に腐敗の臭いを感じ取らなければいけない。



    全体の論調としてもっともなことを筆者は言っていると思う。そして、筆者の主張とともに、野党的ではいけないという筆者の姿勢に大いに賛同した。会社の上層部があいまいを決め込み、決断をしなかったり、建設的な意見を出せない人が多いようでは成長は見込めない。

    組織論の著書であるが、組織論のみにフォーカスせず、日本の組織のなかでの自分を鑑みることができる本であると思う。







    組織論を考えるということはヒトを考えることと同値であると考えさせられた。




    ※本書でいう組織は日本の組織のことである。また、海外発の組織論では雇用が流動的であるという前提が置かれているが、日本ではそうでない傾向が未だに強いということを頭に入れておく必要がある。

  • 日本型組織の本質を維持しつつ機能不全の組織に堕さないよう、自ら主体的に思考し実践していくことの重要性を説いた書籍です。特に組織運営において陥りやすい過ちについて的確に指南されています。推薦者:『人事課』

  • 組織の問題を解決するには?

    →まず仕事の多くをプログラム化し、そのプログラムで対応できない例外をヒエラルキーによってその都度上司が考えて解決するのが基本中の基本
    短期的には分業が効果的だが、長期的には緩やかなオーバーラップ型の分業が効果的
    ボトルネックは短期と長期では異なる
    何らかの判断を下して最終的に問題解決をするのはヒトであり、組織構造それ自体ではない

  • ・日本企業には日本企業なりの組織戦略がある。安易に欧米に右に倣えをし、中途採用・解雇をスタンダードにしてもうまくいかないだろう。
    ・組織の基本は官僚制。官僚制はよく槍玉にあがるが、基本を押さえてこそ、アレンジが機能する。守破離。
    ・優秀な人間が根回しなどの内部政治に奔走されないようなマネジメントが必要。
    ・会社の何かがうまくいっていないとき、組織がスケープゴートとして挙げられるが、それは結局組織を槍玉に挙げれば誰も責任を背負わないから。組織を構成するのは人で、人が変わらなければ組織は変わらない。
    ・マズローの欲求階層説は誤解され、生理的欲求から自己実現欲求に飛躍しがち。低位の階層の欲求が満たされることで、次の欲求が生じるというもので、自己実現の前に現代は承認・尊厳欲求を満たすべき。
    ・従って、褒める、ということが最も安く最も価値のある報酬。これを忘れがち。
    ・経営者とは、決断することが仕事。たとえ皆にとって痛みを伴う決断であっても、皆のためになることを自分で考え決断しなければならないのが経営者。
    ・キツネの権力が現れたら、トラに直接会いにいく。その勇気が必要。

    →結論、どんなことがあっても表に出て闘えるだけの能力と勇気を持ち合わせていなければ組織をよくしていくことはできない。その勇気を裏付けるものとして、いつでも転職して食べるのに困らないスキルやネットワークを作り続けることが大切だと再認識した。

  • 「「うちの会社は腐ってる!」と、お嘆きのあなた。まず裏面の項目をチェック。そのページを読んでみる。そして自分の頭で考える。」という帯のコピーにしたがい、裏面をチェックしたところ8割方当てはまっていると感じたので、読んでみることにしました。とくに160ページや180ページなどはまさしくその通りと合点がいく内容でしたし、142ページなどもやや当てはまるかな、と感じました。もちろん、この感じ方は個人的なもので、わが社(うちの大学)がそのようであるという事実を言っているのではないので、ご注意ください。

    しかし、「経営組織論」というのはこういう話が主なのでしょうかね? まったく経営組織論を学んだことがないので、何とも言いがたいのですが……。

  • 組織を様々な角度から論じられていて非常に面白かった。
    色々な組織論があるが、ボトルネックへの対処が必要、人の威を借りたマネージャーが束ねる組織は危険、折衝型の人が昇進していく組織はやがて廃れるなど、20年以上前の本だが十分今に通ず売るものだった。
    また仕事が内向きになることへの警鐘を鳴らしている。内部に対して、ごますりしたり、組織と組織の間を潤滑にさせるひとが優秀のように捉えられがちだが、その時間を外に向けるべきということは説得力を持って語られる。
    組織を考える機会が出てきたときに読み返したいと思う。

  • 意外と読みやすかった。日本人が書く本は読みやすいね。
    3時間弱で読了。
    腐っている組織の特徴が前職や前職の時の自分を言っているようでグサッときた。自分を振り返って健全な状態なのかを考えたい。

  • 斬新さはないが、サラリーマンからすると、なるほどと思える内部が多かった。
    学者の立場ながら、企業内部のこうした事情に精通できている点が興味深い。

  • 全般的に読みやすい。
    あー、なるほどなーという事実と解釈が書かれており理解しやすい。
    自分の会社に例えるとなお頭に入ってきやすいかと思う。

    62-64
    組織は仕事の邪魔はできても、自動的に仕事を処理してくれるわけではない
    組織変革でいい人がすぐに出てくると勘違いしている
    組織変更後に実るのは数年後でしかない

    82
    マズローの欲求階層説
    人は自己実現よりも承認欲求が潜在的にある。
    カネもポストもあげれなくても、褒めることが大事
    平等感という意味がわからないものに縛られて、差をつけすぎないで、なにを満たすことができるのか

    102 第5章
    フリーライド(人の貢献に乗っかる人)
    コア人材の少数エリートに対して賃金格差を設けると、ノンエリートから社内野党が増えてくる
    なにも言わずに成果をあげる中間層にいかにして、生産性をあげつつ、仕事してもらうのか

    139 第7章
    トラの権力 キツネの権力
    厄介者の存在。
    顧客や上層部からのメッセンジャーとしての立ち位置を利用して、誇張表現する。
    自分の立場を利用して、権力を行使する人、たしかにいる!

    178,204 第9章、10章
    組織腐敗は成熟化の部分が面白い。
    優秀ゆえに効率化していき、同じ仕事をこなしていても暇になっていく。
    その暇を潰すために無駄に指摘を増やし、無駄な仕事を増やす。
    なるほどと思った。
    また社内の雑談の質からも腐敗しているかわかるとのこと。
    社内の内向きの話(誰それと誰それが仲が悪いだの)よりも、外向きの話(なぜあの事業は失敗したのか)という高質な雑談をしているかどうか。
    なるほど、前職では内向きな話が最後は多いようであったと実感。

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著者プロフィール

早稲田大学教授

「2023年 『わかりやすいマーケティング戦略〔第3版〕<2色>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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