お姫様とジェンダ-: アニメで学ぶ男と女のジェンダ-学入門 (ちくま新書 415)

著者 :
  • 筑摩書房
3.62
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本棚登録 : 1098
感想 : 118
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480061157

作品紹介・あらすじ

コレット・ダウリングの『シンデレラ・コンプレックス』が刊行され、話題をよんだのは一九八二年。すでに二十年以上になるが、その間、「白雪姫」「シンデレラ」「眠り姫」などのプリンセス・ストーリーは、ますます大量に生産され、消費されている。大量に消費されるからその影響力も絶大である。本書では、ディズニーのアニメを題材に、昔話にはどんな意味が隠されているかを読み解く。いつの間にか思い込まされている「男らしさ」「女らしさ」の呪縛から、男も女も自由になり、真の男女共同参画社会を目ざす。

感想・レビュー・書評

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  • ディズニーを代表する映画、「白雪姫」「シンデレラ」「眠れる森の美女」を、ジェンダーの視点から分析する本書は、女子大学での授業実践(受講生のコメント)も紹介されていて、作品に対する「憧れ」や「夢」を持っていた女子の作品への視線が変わってゆく様子が明確に示されているところなど、とても興味深く読みました。

    ディズニーの古典的な「プリンセス物語」は、なんとなく「性別役割分担を補強しそうだな」という認識ではいたものの、根はもっと深く様々な「課題」があることに驚かされましたし、単に女子(女の子)にステレオタイプな性別役割を刷り込むだけではなく、男子(男の子)にも小さくない影響を与えていることもわかり、「大衆文化」として大量生産・大量消費されることの意味を改めて感じさせられました。

    これらの作品はもちろんジェンダーの視点から問題があるということで文学的・文化的に価値が失われるわけではありません。しかし、「どういったメッセージがふくまれているのか」ということを(少なくとも大人は)認識して視聴することが大切なのかなと思います。

    これらの作品を通して、一度でも「お姫様」にあこがれたことがある女性はもちろん、これからなお一層進めるべき男女共同参画社会の担い手となる若者世代、さらには「”古い”男女観を抱き続けている昭和の男たち」にも読んでもらいたいと思います。
    文章も読みやすく、高校生くらいから十分に読めると思います。

    Twitterなどではフェミニストやミソジニストが感情的に怒りをぶつけあう風景も見られますが、建設的な社会を作ってゆくためにも、お互いの「理想」を話し合い、共有してゆくことが必要なのだろうと思います。社会的なシステムをどう変革してゆくか、ということを考える前に、現代の社会がどのような思想のもとで作り上げられてきたのかを冷静に見ることは大切だと思います。

  • ディズニーアニメを見て、感想から ジェンダーを考える
    お姫様へのあこがれ
    自立をさまたげる社会通念
    女子大生の感想には予想を超えるものがあった
    童話の解釈も人それぞれだった
    ジェンダーでは結婚など考えなくとも、サクセスストーリーを求めているようだ

  • 中世から続く家父長制による女性蔑視から脱却するためのジェンダー、という主張はまあいいとして、ノルウェイの例を引き合いに出して(しばしば見られる論ではあるが)、男女共同参画が進んでいる国は出生率が高いと論じてしまっているのはいただけない。
    本当に男女共同参画が必要であるならば(私もそう思うが)、出生率回復と分けて主張すべきだ。出生率回復効果がでなければ、著者がフランス革命以上の革命だと息巻いている男女共同参画が不必要であるという論調が主になりかねない。

    話を主題に戻して、シンデレラに見られるような、見た目が良くて自己主張をせず、王子様を待っていれば結婚という幸せが訪れるのよ、なんていうストーリーが蔓延していることが、家父長制が依然残る社会で、女性の自立心を削ぐ原因だと主張する。

    言いたいことはわかるが、だからと言って全ての女性に、男性から自立した生活ができるように支援すべきだというのは強引ではないだろうか。

    もちろん、自分自身の個性や能力で男性に頼らずとも自立した生活を営める女性は素晴らしいと思うし、どんどん社会で実力を発揮して欲しいと思う。しかし、その一種の女性の生き方を支援することは、男性が迎えにくるのを待つだけと著者や著者の教え子達が断罪した、お姫様的な生活をしている女性を差別しているのではないだろうか。本当はどの生き方を選択しても損をしないような、支援の方法を探すべきだと私は考える。

    ある特定の生き方を奨励すれば、経済も少子高齢化も万事解決だなんて、全くもって賛同できない。

    諸悪の根源はウォルトディズニーといったやり玉の挙げ方には納得できないが、女性蔑視反対・女性の権利向上への論理・意見には納得できた。

  • 未だにプリンセス・ストーリーの申し子のような女性が、たくさんいる現代にこの本は打ってつけ。

    某サイトであまり評価が高くなったので、どんなものかと思って読んでみましたが、少し年代が古いとか、授業を受けている学生のレヴェルが低いとか、そんなの関係なくジェンダー入門編には良書だと思います。

    若桑さんの「人生の先輩」としての学生たちへの期待、そして彼女たちへの将来へのエールを感じました。

    「プリンセスになる」という叶うことのない夢を幼少のころから見させられていた女性たちは、その夢から覚めなければ、本当の人生は姿を現せてはくれないのだ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「将来へのエールを感じました。」
      若桑みどりは買いだけど、アニメんのコトは知らないからなぁ~と言う訳でパスしていた本。
      だけど面白そうですね...
      「将来へのエールを感じました。」
      若桑みどりは買いだけど、アニメんのコトは知らないからなぁ~と言う訳でパスしていた本。
      だけど面白そうですね、、、
      2013/01/25
  • 自分も「結婚がゴール」とか、「結婚できないと不幸、かわいそうだ」という先入観があり、例え結婚したとしても、してないにしても、30年先の自分の目標、どうなっているかのイメージが思い浮かばないことに気付いた。
    運命の王子様が自分の人生を先導してくれることを夢見るのではなく、自分の人生は自分で彩らなければ、と思った。

  • シンデレラは、女の子に対し、誰かが幸せにしてくれるという価値観を押し付けている。
    そして、女の子がプリンセスになれるためにできる努力は外見のみなので、ルッキズムへ走ることとなる。

  • フェミニズムやジェンダーの本は今までに何冊か読んでいるが、この本は特に衝撃が大きかった。ディズニーのプリンセスものが現代の教育にはそぐわないことはぼんやりと知っていたけれど、こんなにも女の子の考えを規定するような要素が詰まっていたとは思わなかった。学生のアニメに対するコメントに、時折はっとするような言葉があった。自分の考え方は割と現代的な考えにアップデートできているのではと思って生きていたけど、まだまだ子供の頃からの刷り込みが多いことに気づき、ぞっとした。また、184ページの「やはり総合的に人間的な価値で女性を評価してもらわないと、女性は永久に自分自身であることと、愛されることの矛盾に引き裂かれたままになってしまう。自立することと、「幸福になること」が矛盾してしまう〜」の点については普段ぼんやりと考えていたことだった。
    とても読みやすい文章で、学部の1年生の時に読みたかったと思った。

  • 2002年にやっていたジェンダーについての大学の講義を纏めたものだった。約20年ほど経って、当時、大学生だった方も、30代後半とか?全然、世の中進歩してなくて泣いた。変わってない、、男女雇用機会均等法とかかなり昔に感じてたけど、人々の価値観も制度もまだまだ変わってないな
    受動的で男性に受け入れられたいだけの女性が、自分に目覚めて「インドの目覚め的な」輝けるように

  • 著者が女子大の講義のなかでディズニーのお姫さまアニメを学生たちに見せ、その感想を書いてもらったものを紹介している。決してジェンダー差別意識が投影されているわけでなく、各時代の普通のスタンスがディズニーアニメであったり、ペローやグリムの作話に反映されているんだけど、それを今の時代のジェンダー論の講義の一環で見ると……という試み。彼と見れば「うふっ」って感じだろうけど、ジェンダー論の講義で見れば印象も変わってくるだろう。
    これ、女子大だからそれとなくまとまったけど、男子学生も混ぜて同じことやったら面白いだろうな。そういうことを男子学生相手にやったりするんだろうか。あまり見聞きしない感じがするんだよね。女子ばかりがジェンダー意識を身につけ、男子は旧態依然って感じがする。

  • 御伽噺におけるジェンダーをテーマにして、分析していくので読みやすい。良く考えたら男子向けの御伽噺と女子向けの御伽噺とでは大いに違いがある。シンデレラシンドロームに始まり、女子が陥りやすい症例を紹介していく。特に女子大生を大別して紹介していくところが面白い。家父長制だけが男女差別の原因になっている訳じゃない。誰にでもお勧めできる名著。(筆者が受けてきた女性差別を恨々と語っているところが、リアルでまたいい。)

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著者プロフィール

若桑みどり (わかくわ・みどり):1935-2007年。東京藝術大学美術学部芸術学専攻科卒業。1961-63年、イタリア政府給費留学生としてローマ大学に留学。専門は西洋美術史、表象文化論、ジェンダー文化論。千葉大学名誉教授。『全集 美術のなかの裸婦 寓意と象徴の女性像』を中心とした業績でサントリー学芸賞、『薔薇のイコノロジー』で芸術選奨文部大臣賞、イタリア共和国カヴァリエレ賞、天正遣欧少年使節を描いた『クアトロ・ラガッツィ』で大佛次郎賞。著書に『戦争がつくる女性像』『イメージを読む』『象徴としての女性像』『お姫様とジェンダー』『イメージの歴史』『聖母像の到来』ほか多数。

「2022年 『絵画を読む イコノロジー入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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