若者はなぜ「決められない」か (ちくま新書 429)

著者 :
  • 筑摩書房
3.20
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本棚登録 : 216
感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480061294

作品紹介・あらすじ

八〇年代以降、フリーターの数は増え続け、今や就業人口のなかで無視できない存在となった。日本の近代史をふり返れば、たとえば「高等遊民」という現象のように、「決められない若者たち」は過去にも存在した。けれども現代のフリーターは、先進国のなかでも特殊な今日的現象である。なぜこうした現象が生じたのだろうか?自らも「オタク」として職業選択に際し違和感を抱いた著者が、労働(仕事)観を切り口に、「決められない」若者たちの気分を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 若者がなぜ「決められないか」という疑問に直接答えるというよりも、働くということに関して様々な面から検討した本という面が強い。様々な面というのも、明治の文豪の小説や戦後の世相、著者自身の体験やフリーターにインタビューした結果までが収められているので、一貫して論理を積み上げていくタイプの展開ではない。そのため、読み終わってからタイトルに立ち戻ると、果たしてこのタイトルの答えは何だったのだろう、と思うことになるかもしれない。

    しかし文豪の小説を使った働くことについての考察はなかなかユニーク。経済学者でも社会学者でも官庁の人間でもない視点から捉えた若者論、仕事論は、専門家の議論とは違った身近さを持っており取っ付きやすいと思う。

  • 見下すこともやたらと擁護することもなく、淡々とフリーターについて指摘していると思いました。何かに所属するもしないもそれぞれに悩みがあり、覚悟がいることなのだと改めて思いました。そして、いずれにしろ、何となく選択するのは危険であり、自分でできる限り根拠や具体的な姿を把握しておくことが大事という冒頭のメッセージに全てが集約されていると感じました。

  • 本棚にあった場所から見て、3年前に読んだ本のはずなんですが、内容にまるで記憶がありません。たぶんよく分からないままに流し読みしたレベルだったのでしょう。というわけで初読扱い。フリーターが問題視されていた頃に、若者の歴史もふまえて書かれた本。フリーターが世間で騒がれているほど現代的で大きな問題でないと同時に、フリーターになるにはそれ相応の覚悟も必要であることが分かります。

  • フリーターに関しての本。なぜフリーターが多くなったのか、当時の仕事観や社会通念を説明し、前半は重点的にフリーターに焦点を当てて面白く読めた。
    でも後半は社会の現状・問題点をただ提示したり、筆者の好きな明治期の作家をあげて「この点はフリーターにも当てはまる」とリンクさせながら話が展開されていくので、少し冗長な文に感じた。後半少しつまらん。

  • 結構納得した。フリーターも派遣も正社員も辛いんですね。
    仕事をしなきゃいけなくなるのが怖くなりました。でもモラトリアムも怖くなりましたけど。

    仕事における給料とやりがいの話が一番面白かったです。「仕事とはなにか」について考察されている本をもっと読みたいと思いました。

  • 現在の若者、特にフリーターに焦点を絞って、
    将来を決められない若者と言ったお話し。
    なぜフリーターがというと、フリーターは通過点であるという認識は
    共通の認識のようだからです。

    フリーターが正規雇用されずにフリーでいる理由は
    決められないことと。決めつけていること。
    によるものである。

    ちょっと前に流行った「自分探し」と言う言葉。ありましたね。
    自分らしい仕事探すという意味だと思うが、
    表現としてはおかしい。今存在しているのが自分であり、
    自分を探すという表現自体、自分ではない、
    イメージ上の他者を探していることになる。
    個人的には、そもそもこの言葉自体、当時の転職ブームを
    後押しするために企業が作ったキャッチーなフレーズに過ぎないと思ってる。
    それなのに自分に合った仕事が見つからないと言って、決めない。
    いい解釈をすれば、真剣に仕事と向き合っているとも言える。

    でもそれは本当に、定職に着かないということを認識してか?
    まず「好きなことを仕事にする」ということはどういうことか?
    「好きなことをし続けながら収入を得られる」という発想になってないか?
    端的な例は「いい音楽」と「売れる音楽」は全然違うのである。
    また社会的立場や収入を考えた上か?
    自営業とサラーリマンじゃ、年金、保険、退職金。全然違う。
    それはカードが作れる作れないとか低レベルな問題ではない。

    逆に「決めるつける」発想。
    サラリーマンは会社の歯車で嫌な人間関係に我慢しながら、
    居酒屋で愚痴る人生。そして休日も仕事の事を考え会社に束縛される毎日。
    そして退職したら、何も残らないつまらない人間。
    う~ん、それは自分次第でもあると思うだがなぁ・・・
    しかも会社だっていつ辞めたっていいんだ。バイトは辞めていいというのは、
    大きな間違いだ。そもそもオンリーワン的な考えが違う。
    社会的な役割の上で取り換えのきかない歯車(人間)なんていない。

    途中夏目漱石の文学作品の登場人物との比較が出てくるけど、
    かなりだれた。何十ページも使ってたけど、3ページぐらいにまとめて欲しかった。

    誰だって漠然とやりたい事や好きなことを仕事にしたいと
    思ったことがあると思う。
    だけどそれって、思うだけで、そうなるだろうと考えたことはない。
    いや、確かに夢のない少年でしたよw

    本の中でアニメのストーリーを作る人を夢見てフリーターを続け、
    親に反対されて歳を取って、それを親と年のせいにしてる人がいるのね。
    その人に対して歳とか親に反対されて駄目ならプロにはなれない。
    ってことが書いてあって激しく同意しました。
    中途半端に才能があると諦めのタイミングが難しいのは確かだけど、
    その世界でやればやるほど通じない、自分が凡人だってわかるでしょ。なんでも。
    まぁ自分がずば抜けて凡人だからってのがあるんだけど。
    だから、やるならそれなりに覚悟でな。ということでした。

    ちなみに自分みたいな優柔不断の人の為の本かと思って借りてきたんだけど(-_-;)

  • 著者の主張は全体的にすこし悲観的な印象を受けましたが、共感するところも数多くありました。
    少子化や社会が衰退をすることを理由に、その人の生き方が制限されるべきではないという見方に賛成です。したがって、著者はフリーターという生き方を否定していません。その一方で、フリーターであり続けることのリスクを示し、若者が自分の希望と向き合って生きてほしいと締めくくっています。

  • 古本屋で購入した本。「わかもの合宿」のテーマの参考資料にならんかと思って読んでみた。途中ちょっと間延びした感はあったが、著者のメッセージは伝わった。
    若者はなぜ決められないのか、また決めつけるのか?興味深い一冊。

  • ちょっと硬い内容かな?と思いつつも、自分に当てはまる部分があるんではないかと、手に取ってみた。
    心の中では前から分かってはいるんだけど、自分の今置かれている状況を真剣に考え直さないといけないと思った。
    最近、自分でも思うことが、冷静に書いてあった。
    オビにあったように、一方的にダメだというわけでなく、かといって擁護するわけでもない。
    でも、そこがとても良かったんだと思う。

    “親世代の普通の生活を普通過ぎると思う一方、そんな普通の生活を手にすることがいかに大変か。。。”

    ちょっとまじめに、でも読みがいがあった本。

    ちなみに夏目漱石の本についてもいろいろ書いてあって、それも面白かった。漱石を読みたくもなった。

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著者プロフィール

長山靖生(ながやま・やすお):1962年生まれ。評論家。鶴見大学歯学部卒業。歯学博士。開業医のかたわら、世相や風俗、サブカルチャーから歴史、思想に至るまで、幅広い著述活動を展開する。著書『日本SF精神史』(河出書房新社、日本SF大賞・星雲賞・日本推理作家協会賞)、『偽史冒険世界』(筑摩書房、大衆文学研究賞)、『帝国化する日本』(ちくま新書)、『日本回帰と文化人』(筑摩選書)、『萩尾望都がいる』(光文社新書)など多数。

「2024年 『SF少女マンガ全史 昭和黄金期を中心に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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