ヒトは環境を壊す動物である (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480061522

作品紹介・あらすじ

エアコンを使えば温暖化を招く。洗剤を使えば河川の富栄養化が起こる。肉食はエネルギー的にムダの多い贅沢だ。わかっちゃいるけど、やめられない。かくして環境破壊は、今世紀最大の問題のひとつになった。なぜ私たちは「わかっちゃいるけどやめられない」のだろうか。本書では、進化心理学の立場から、ヒトの認知能力と環境との関わりを検証し、環境破壊は人間の「心の限界」がもたらしたものという視点を提示する。生物学からみた、まったく新しい環境問題の書。

感想・レビュー・書評

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  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA65229215

  • 協力することで環境問題も
    世界中で理解されるように
    なるのかもね。

  • 自然人類学、比較行動学の立場から見た地球環境問題の根源と今後。自然人類学では進化論、そして遺伝子などの最新知識を解り易く解説しており、何の本か?と思いたくなるほどの力説でしたが、要するに人間は本能の動物という主張?!そして「囚人のジレンマ」理論、「タカ・ハト」ゲーム理論、共同分配の進化ゲーム理論などの比較行動学の解りやすい考え方を紹介し、地球環境保護がやめたくてもやめられない、そこに人類全体の心の限界があることを説得力を持って指摘しています。しかし、言われなくても解っていること、ではどうするのか?という問題解決策の提示は著者も告白するように弱点です。「地球に優しい」というスローガンは嘘である、「人類に優しい」というべきだ、人類が滅びてもそれは人類に適応した環境が壊れるだけである、という逆説的・開き直り的な主張は確かにそうかも知れませんが、現実には他の動植物も不幸に巻き込まれているということを著者は無視しているのではないか、と思いました。

  • 著者は自然人類学の研究者。心の進化論、認知心理学、ゲーム理論などの観点から、道徳や倫理のメカニズムについて論じている。

    生態学的に適切な集団のサイズとそのために必要な脳の大きさから、100〜150人程度の集団で考えた方が適切な認識ができるというのは興味深い。そうすると、地球規模の問題も細分化すればいいのかもしれない。その意味では、企業ごとに排出権を割り当てて取引を認めるキャップ&トレードは人間の行動メカニズムに適しているのかもしれない。

    道徳や倫理をゲーム理論で説明できるという研究結果もおもしろい。進化論から考えても、最終的には個々人に有利になるメカニズムでなければ、成り立たないはずである。すると、人類が道徳や倫理という概念を持った理由(=必要性)はなにか?タカ派やエゴイストの存在に対処するためか?誰もが時に持ってしまうエゴの気持ちを抑制するためか?

    本書では、人間が認識できる集団サイズを超えた問題には対処しにくいという人類の宿命を進化論の立場から説明しているだけで、地球環境問題への対応の仕方まではほとんど論じていない。ただ、道徳や倫理という、環境問題に取り組むための足がかりについて科学的に考えなおすには役立った。

    ・脳は体全体のエネルギーの16%を消費する。大きな脳を維持するために得た食物として、屍肉のほか、イモ掘り説が注目されている。
    ・群れることによって捕食される確率が低下するが、食物の取り分が減る。その損得が釣り合うところで集団サイズが決まる。群れが大きいほど脳の相対的なサイズが大きい。
    ・問題となる集団サイズを大きくすると、判断にフレーミング効果が現れる。考えるサイズを小さくすることによって、わかりやすくなる。
    ・道徳は、ゲーム理論における進化的に安定な戦略(ESS)のようなもの。

  • [ 内容 ]
    エアコンを使えば温暖化を招く。
    洗剤を使えば河川の富栄養化が起こる。
    肉食はエネルギー的にムダの多い贅沢だ。
    わかっちゃいるけど、やめられない。
    かくして環境破壊は、今世紀最大の問題のひとつになった。
    なぜ私たちは「わかっちゃいるけどやめられない」のだろうか。
    本書では、進化心理学の立場から、ヒトの認知能力と環境との関わりを検証し、環境破壊は人間の「心の限界」がもたらしたものという視点を提示する。
    生物学からみた、まったく新しい環境問題の書。

    [ 目次 ]
    第1章 「環境」とは何か
    第2章 人間はどのような動物か
    第3章 心の進化
    第4章 環境の認知
    第5章 公共財を巡って
    第6章 進化と環境倫理

    [ POP ]


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    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 霊長類研究のエキスパートからの視点で
    人間という生物が起こす環境問題を論じようという試み。

    第一章:「環境とは何か」
    第二章:人間はどのような動物か
    第三章:心の進化
    第四章:環境の認知
    第五章:公共財を巡って
    第六章:進化と環境倫理




    人間の本能に反する限り、環境対策はうまくいかない。
    また科学技術が環境問題を解決するという可能性も低い。
    リサイクルにはエネルギーを必要とするし、
    人間が活動すれば必ず廃棄物が出る。
    ただ、情報技術の発達には希望を感じる。
    インターネットなどに代表されるテクノロジーによって
    世界が狭く感じられるようになり、
    人類がひとつの社会に属しているという
    意識が共有されることで、
    お互いの共通の利益を守るという本能的な行動が取れるようになり、
    環境問題を解決できるかもしれない。


    「環境問題の解決のためには人間の本性を知ることが大事だ」
    というテーマに沿って、人間の生物としての本質に迫る。
    これはこれで面白い手法だが、肝心の環境問題への関わりが薄いのが残念。

  • すんごいおもしろい。自分が環境の啓蒙活動をする上ですごく参考になった

  • 過去の研究成果(進化・認知・ゲーム理論など)をわかりやすくまとめたという感じ
    です。

    ポイントは「人間は狩猟採取時代から進化していない。心・感情などもその当時の環
    境に適合している。
    その為、劇的に変化している現代の問題にうまく対処できない。」という事でしょう
    か。

  • だれにとっての「環境」かということ。

  • 人類学の立場から人類(人間)の認知能力限界という視点から環境破壊の原因を論じるユニークな作品。こんな視点から環境と人間の関係を考えたことがない人が多いのでは? 人間の集団の認知能力は原始の生活集団ほどであり現在の地球的規模のことは実感として把握できない脳になっているという点がおもしろい。環境問題を考えるなら人間の認知能力をどうするかが課題になると考えさせられた作品。

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著者プロフィール

1954年、新潟県生まれ。成城大学文芸学部教授。専攻は文化人類学。著書に『レヴィ=ストロース入門』(筑摩書房)、『構造人類学のフィールド』(世界思想社)など。

「2005年 『プロレスファンという装置』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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