博徒の幕末維新 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480061546

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  • 幕末、伊豆の新島から流人が島抜けをした。
    清水の次郎長の敵役として有名な竹居安五郎。
    彼の島抜けを手伝った大場久八は、翌年のペリーの再来に向けて大急ぎで建造しなければならないお台場のために、石や人手を差配し、韮山の代官・江川英龍のもとに送り届けた。
    そのため、竹居安五郎の島抜けを見逃さざるを得なかったのだという。
    実際忙しくて、それどころじゃなかったのだろう。

    実はこの竹居安五郎や大場久八などの関東甲信越の博徒たちの抗争については、今年の2月頃に読んだ時代小説のシリーズの基本設定になっていたので、読んでいて「お久しぶり」感が湧いてくる。

    損得よりも義理と人情、そして体面を大事にする任侠の世界。
    彼らの生き様を民間に残されていた古文書を紐解きながら解き明かしていく過程は、わくわくするほど面白いのだけど、やっぱり小説の方が楽しいのだ。
    事実は必ずしもカタルシスを与えてくれないしね。
    先にこちらを読んでおけばよかったのかもしれない。

  • 幕末の博徒の姿を可能な限り一次史料で追いかけてみた一冊。
    竹居安五郎や黒駒勝蔵といった、ともすれば脇役敵役になる人物の活動と顛末を追っている。史料上の制約もあるんだろうけど、駒蔵の幕末維新の活動のところは推測が多いのが気になった。
    ただ全体としては、こういう世界もあるのか、と素直に面白い。

    関八州が舞台なので、富士川舟運や五街道の話もちらほらでてくる。交通史・流通史に関心がある身としては、彼らの活動によって交通や物流にどんな影響がでるのか興味でた。

  • 時代劇や小説ではなく、文献史学としての稗史。
    流刑の島である新島から、名主を殺害して島抜けした博徒竹居安五郎から始まる。黒船がやってきたあわただしい当時の時代背景、安五郎の家族、連鎖する血で血を洗う抗争、そして天敵である関東取締出役との関係。
    全部繋がってるんだなーと感心しきり。後半の方はやや駆け足で、著者様は理解できてるかもしれないが読んでる方は「ん?」と思う場面もあったけれど、素直に面白かった。
    芝居や小説は読んだ事がなかったので、これを機に読んでみたい。

  • [ 内容 ]
    嘉永六年(一八五三)六月八日深夜、伊豆七島の流刑の島新島から、七人の流人が島の名主を殺し、漁船を盗み、島抜けを敢行した。
    そのリーダーが、清水次郎長の敵方として知られる甲州博徒の巨魁、竹居安五郎である。
    奇しくもペリー提督率いる黒船が伊豆近海にあらわれた直後であり、韮山代官江川英龍も島抜けを見逃すしかなかった。
    この黒船来航をきっかけに、歴史の表に躍り出た博徒侠客たち。
    錦絵や講談・浪曲、大衆小説等でおなじみの竹居安五郎、勢力富五郎、武州石原村幸次郎、国定忠治、黒駒勝蔵、水野弥三郎らのアウトロー群像を、歴史学の手法にのっとって幕末維新史に位置付け直す、記念碑的労作。

    [ 目次 ]
    第1章 黒船と博徒竹居安五郎―嘉永六年六月八日夜(竹居安五郎新島を抜ける;流刑の島新島 ほか)
    第2章 博徒の家と村―博徒はいかに生まれしか(甲州八代郡竹居村;水論と山論の村―外に向かう竹居村 ほか)
    第3章 嘉永水滸伝(水滸伝の近世;勢力富五郎関東取締出役を翻弄す ほか)
    第4章 博徒の明治維新―黒駒勝蔵と水野弥三郎(竹居安五郎の復活と謀殺;草莽の博徒黒駒勝蔵 ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 分類=幕末維新・博徒。04年2月。歴博の企画展示「民衆文化とつくられたヒーローたち」(04年3〜6月)と連動。(参考)国立歴史民俗博物館→http://www.rekihaku.ac.jp/

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著者プロフィール

1940年静岡県生まれ。国立歴史民俗博物館名誉教授。東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。群馬大学教育学部教授、国立歴史民俗博物館教授、総合研究大学院大学教授を歴任。文学博士。専門は近世教育・社会史、アウトロー研究。著書に、『日本民衆教育史研究』(未来社)、『国定忠治の時代』(ちくま文庫)、『江戸の教育力』(ちくま新書)、『江戸の訴訟』『清水次郎長』『一茶の相続争い』(岩波新書)、『清水次郎長と幕末維新』(岩波書店)、他多数。

「2020年 『江戸のコレラ騒動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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