哲学者の誕生 ソクラテスをめぐる人々 (ちくま新書)

  • 筑摩書房 (2005年8月1日発売)
3.38
  • (2)
  • (3)
  • (10)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 100
感想 : 8
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784480062499

みんなの感想まとめ

哲学の誕生を探求する本書は、ソクラテスを中心にその周辺の人物や出来事を多角的に描き出しています。著者は、プラトンの対話編だけでなく、同時代人の文献やソクラテスと関わりのあった人々の視点から、哲学の始ま...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • (2026/02/8再読分)なぜ日本では「無知の知」として定着したのか、という点に絞ってまとめてみた。◆①ソクラテスの「不知の告白」②ヘレニズム哲学の論争で単純化→第一に、ソクラテスの立場がラテン語の「知る」という動詞を一貫して用いて説明されたことで、プラトンが「ソクラテスの弁明」で区別して語っていた「証す」「認める」といった語のニュアンスを消して一般化され、「知らないということを、知る」と単純に定式化。第二に「知」の対象について、「善]」「美」「正」という大切な事柄について知らないという限定をはずされて、いっさいの限定が外され、全称否定命題として扱われている。その結果、ソクラテスは「何も知らないという、まさにその一つのことを除いて、何も知らない」と主張③ローマ時代のキケロ「何も知らないということを知っている」と理解④キケロを受け継いだニコラウス・クザーヌスは「知ある不知」で「ソクラテスには、不知であるということを除いて、自分は何も知らない、と思われた」⑤近代欧語文献にひきつがれる⑥日本でも「何も知っていないことを、知っている」といった紹介がされる⑦日本では、1929年に東北帝国大学教授高橋里美が「無知の知」と紹介したのが標語として脚光をあびた例◆(ギリシアや西欧、アメリカでは近代や現在、どうとらえられていた/いるんですかね???)◆諸悪の根源はヘレニズム時代な気が…となるとずいぶん長いこと誤解されていたのでは。(2026/01/27読了分)納富信留訳のプラトン「ソクラテスの弁明」(光文社古典新訳文庫)に何度もこの本の言及があったので、こちらも手に取り。19世紀はクセノポン「ソクラテスの文明」の方が”真実の”ソクラテスに近いととらえられていたのが、研究の進展により20世紀には、プラトン「ソクラテスの弁明」のほうが"真実"のソクラテスに近いと考えられるようになったこと。しかし、あくまでプラトンが解釈したソクラテス像であることを踏まえる必要があり、「プラトンやクセノポンらの書き物から窺われる「ソクラテス」は、それぞれ相違なった姿を示しており(略)「歴史的ソクラテス」の復元は、アリストパネス、クセノポン、プラトン、アリストテレスの報告をどう評価するか、という問題として論じられてきた」という視点も必要、と。作中の、◆探求がもたらす成果であり、かつ、探求そのものを成り立たせる基盤となるのが、「知らないことを、知らないと思う」ことであった。◆ソクラテスは元来、「善や美や正といった大切な事柄」に対象を限って「知らない」と表明しており、「何も知らない」という全称否定や、そういった懐疑主義の認識論が引きおこす「嘘つきのパラドクス」のような論理的な困難とは無縁であった。◆ソクラテスはけっして「知らない」と言って開き直ったり、そこに安住したわけではなく、生涯人々と対話し、自らが「知らない」ということを確かめ続けた。◆といったあたりは、特に大事な点と思われた。◆それにしても、「クセノポンのソクラテスは、プラトンが前面に出す「不知」とは縁遠い知者なのである」と語られるように、ソクラテス像は著者により一様でないようであり、クセノポンのソクラテス像にも興味がひかれる。

  • 私には難しすぎた。

  • NN3a

  • 最初は興味深い。

  • ソクラテスについて、プラトンの対話編だけめなく、同時代人の文献、いわゆるソクラテス文学、ソクラテスと関わりのあった人物の横顔など、さまざまな角度から、ソクラテスその人と、哲学の誕生を見つめていこうとする迫力のある一冊。我が国で「無知の知」が定着した経緯を検討し、これがどうして、誤りなのかも読み解いていきます。

  • 夏期休暇中に読んだ4冊のうちの1冊。プラトン研究の第一人者でありながら、サントリー学芸賞を受賞するなど生活者の啓蒙にも意識的な著者を敬愛する友人がいるので、1冊ぐらいは読んでおかなければと思い、久々に「哲学史」という分野の本を手に取った。本書は、哲学の始まりとしてソクラテスをめぐる人々の活動を追う入門書。大学時代に思想史に籍を置いていた人間の言うことではないけれど、僕は多和田葉子の言うところの「歴史の縦軸よりも横軸」に関心があり、歴史学の資質に欠けるところがあるので、本書との関係性は難しい。そもそも『新たな知的状況が生み出される様を追うことは、探偵小説のようにスリリングで、歴史小説のように心躍るものとなるはずである』(まえがき)という、「歴史小説」に「心躍」らないのだから困ったものだ。『最初の哲学者は、ソクラテス(あるいは、タレスやピュタゴラス)というよりも、彼と対話し、その記憶から今、哲学を始める私たち自身でなければならない』とある。著者の手腕は伝わってきたし、『彼らの哲学は、何よりも彼らが生きた時代の緊張のなかで形作られ、始まったのである』というのもわかるけれど、本書はどうしたって「哲学史」のもの。僕には、動詞としての「哲学」の始まりに触れるものではなかった。

  • ソクラテスの周辺の出来事をわかりやすく解説。プラトンのソクラテス対話篇を読むのに好著。

全7件中 1 - 7件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

納富 信留(のうとみ・のぶる):1965年生まれ。東京大学大学院教授。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。ケンブリッジ大学大学院古典学部博士号取得。専門は西洋古代哲学。著書『ギリシア哲学史』(筑摩書房)、『ソフィストとは誰か?』『哲学の誕生――ソクラテスとは何者か』『新版 プラトン 理想国の現在』(以上、ちくま学芸文庫)、『プラトンとの哲学――対話篇をよむ』(岩波新書)、『世界哲学史』全8巻+別巻(共編著、ちくま新書)など。

「2024年 『世界哲学のすすめ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

納富信留の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×