神国日本 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 83
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480062956

作品紹介・あらすじ

日本は神国である。-誰もが耳にしたことのあるこの言説。しかし、われわれは、「神国日本」がいったい何を意味するのか、本当に知っているのだろうか?その展開を実証的にたどってみると意外な事実が見えてくる。たとえば、「ナショナリズム」を高揚させるイデオロギーと思われがちなこの思想も、中世においては、必ずしも、他国に対する日本の優越を説くものではなかったのだ。その他、天皇・仏教的世界観など、さまざまな観点より、古代から中世、そして近世・近代に至る神国言説を読み解く。一千年の精神史。

感想・レビュー・書評

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  • 紙では絶版なのがあまりに残念。

    手垢のまみれた「神国日本」という概念を、文献を元に考察を加え、議論の土台を与えることに成功している。

    神国ならびにその一部である天皇について「右」も「左」も無知な人も必読の文献。

    ・P33.天皇号の採用は今日では、天武・持統朝説が定説。
    ・P44.の伊勢の神様の昇天と日蓮の神天上の法門の類似性。
    ・P084.アマテラスオオノカミを頂点とする強固で固定的な上下の序列が古代的な神々の世界であるとすれば、中性的なそれは横一線にしのぎを削る有力神が、仏教的な世界観に組み入れられ、その理念を紐帯としてゆるやかに結び会わされたものだった。P096.本地垂迹
    ・P095.日本古代において国家という言葉は通常天皇個人の身体を意味した。
    ・P115.鴨長明作『発心集』に末法で日本が辺土小国辺鄙にあることが示されている。だから仏は本地垂迹した。
    ・法然、日蓮だけでなく、栄西、道元も迫害を受けている。P140
    ・日蓮は法然批判に神国日本を持ち出している。P142
    ・古代から中世の転換期に、天皇に仮借なき批判が。P180。国家と国王の分離が。ここから日蓮の立証暗黒思想も。P182
    ・公武政権は垂迹の力に支えられている荘園制を守るために、念仏や題目は認められなかった。P190。キリシタンも。P203。彼岸へ直接結びつくようなのは全部ダメ。
    ・P217.神国思想は一種の選民思想でありながら一見正反対な普遍主義への指向をも内包し、さまざまに形を変えながら古代から現代までの歴史を生き延びてきた。

  •  日本のナショナリズムに関する議論をする上で、一つの大きな視座となる内容。

    この本の目的はあくまで「神国」というものの意味とその変遷を解き明かすことなのだが、内容はそれだけにとどまらない。必然的に天皇観や神道、日本における社会背景等の変遷にも時代ごとに言及しており、「神国」という一つの視点から体系的に“狭義”の日本史を纏めあげている。
     タイトルは一見物騒であるが、特に戦前日本中を跋扈した「神国」やそれを巡る思想の数々について極めて客観的に著者は記述している。正しい歴史認識を持つためにも、左な人こそ読むべきなものではないだろうか。

  • しばし議論を巻き起こす「日本=神国」という理念。しかし我々はそもそもこの「神国」というものを正しく認識していると言い切れるだろうか。「神国」思想の変遷を当時の日本の社会構造、歴史、また当時の仏教などの関わりを踏まえた観点からたどったのが本書である。
    若干、同じフレーズが多く構造がくどい気がしないでもないけれど一冊でとても濃い内容ではないだろうか。
    我々には近代で劇的な変化を遂げたものであっても、それが昔からそうであったかのように錯覚し、そのまま肯定するか否定するかの態度をとってしまう癖の様ながあるが、それはこの神国思想に限らず非常に残念なことであると思った。この本が広く読まれることを願う。

  • [ 内容 ]
    日本は神国である。
    ―誰もが耳にしたことのあるこの言説。
    しかし、われわれは、「神国日本」がいったい何を意味するのか、本当に知っているのだろうか?
    その展開を実証的にたどってみると意外な事実が見えてくる。
    たとえば、「ナショナリズム」を高揚させるイデオロギーと思われがちなこの思想も、中世においては、必ずしも、他国に対する日本の優越を説くものではなかったのだ。
    その他、天皇・仏教的世界観など、さまざまな観点より、古代から中世、そして近世・近代に至る神国言説を読み解く。
    一千年の精神史。

    [ 目次 ]
    序章 神国思想・再考への道
    第1章 変動する神々の世界
    第2章 神と仏との交渉
    第3章 神国思想の成立と変容
    第4章 神国思想の歴史的意義
    第5章 疎外される天皇
    終章 神国の行方

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    [ 参考となる書評 ]

  • 先に佐藤弘夫の『死者のゆくえ』を読んで、「そんな本地垂迹説は聞いたことがない!」と驚いたので、それが詳しく書かれているらしいこの本を読んだ。


    少なくともふたつ学んだ。

    ひとつめ。本地=仏、垂迹=神というこれまでの理解は修正されるべきであること。本地は、この世(当時の日本)の住人には届かない世界の存在で、それがこの世に現れたのが垂迹。なので、仏陀も垂迹、聖徳太子も垂迹。(これまでの本地垂迹説の理解だと、仏陀が垂迹であるのがなぜかわからなかった)

    ふたつめ。ひとつめと関連するが、本地垂迹説が持っている世界観は仏教のそれであるので、「神国」というアイデンティティは仏教と相反するどころか、それとぴったり整合するものであること。


    近代日本の「神国」アイデンティティはそういう伝統を忘れたところで成立するのかもしれない。

  • 時間かけて読んだ。大学で薦められて、どうしても読まなきゃ!と思って。
    内容はおもしろかったです。

  • 2006年五月に起こった森喜朗首相(当時)の「神の国」発言は多くの批判を受け、今でも嘲笑の対象となっている。しかし日本の「神国思想」の歴史的、現代的実像を正しく把握している人間がどこまでいるのだろうか。
    「神の国」発言には天皇を存在を基盤とした選民思想(「天皇」と「ナショナリズム」)が垣間見えた。しかしこの著書に沿って、日本の神国思想を歴史的実証的に見ていくと、国内外の多彩な思想との影響において様々な変遷をしてきたことが分かる。特に中世の特色として「現実世界に化現した神・仏・聖人への信仰を通じて、私たちはだれもが最終的には彼岸の理想世界に到達することができる」という「ナショナリズム」を越えた普遍的真理への探求であったという。そして「天皇」においても常にこの神国の中心的存在であった訳ではないこと実証される。明治維新以降の国民国家形成において、日本は天皇を中心とし「伝統的な」神々が守護するという国家であるという現代にも通じる思想が形成されていった。しかしそれは少しも「伝統的」なものでもなんでもなかったのである。

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著者プロフィール

1953年生まれ。東北大学大学院文学研究科博士前期課程修了。東北大学大学院文学研究科教授。専門は、日本思想史。主な著書に『神・仏・王権の中世』(法藏館)、『「神国」日本』(講談社学術文庫)、『死者の花嫁』(幻戯書房)などがある。

「2020年 『アマテラスの変貌 中世神仏交渉史の視座』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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