- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480063120
感想・レビュー・書評
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それと気づかれないまま、人を特定の方向に誘導するマインド・マネジメント。脳科学の知見を取り入れた「心脳マーケティング」が、人を思考停止に追い込んで、いまや人々は政府やマスコミのおもうがままに操られているのだと説く。
んだけどさぁ。あまりにも古典的なアジテーション……とおもた。
まず、「脳科学」の知見について、自分の都合のいいところだけつまみ食いしすぎ。たとえば「怒りは動物の脳で生じる」として、大脳辺縁系の説明などをひとくさりやって、「感情をあおり立てる情報」は「人間としての言語的思考を停止させ、動物的な反応、快・不快の単純化された二項対立の二者択一を、気分感情で行うような状態に人間を追い込んでしまう」と糾弾する。でも、「大脳辺縁系がどーのこーの」というレベルで話をするのであれば、「すべての情報は、感情の助けがなければ記憶に残らない」のである。ようするにこれは、感情を刺激するようなアオリとパンチの効いた情報のほうが記憶に残りやすい、ということを言うてるにすぎないのだ。まるで「クルマはガソリンを爆発させて走るから危険だ」というかのごとし。
次に。脳科学の話と、フロイト・ユング流の臨床心理学の話を安易にミックスしてしまうところ。木に竹を接いだよう。たんにイドやエスが大脳辺縁系から出てきて、超自我が前頭葉の産物だという話を、より大仰に言ってるだけの虚仮威し。
マスメディア批判も小泉政権批判も、ある種の紋切り型に強引に「心脳」をアテコミで入れているだけに感じる。一時期、なんでもかんでもフロイトやらユングを嬉々としてあてはめていろんなものを「批判」したような気になる人が多かったが……。道具を「心脳」というコトバに変えただけで、やることはあまり変わってない。
この本の結論はメディアや政治家にだまされないよう「我、疑うゆえに我有り」という自我観を持て、というコトバで結ばれる。しかし、脳科学の知見とかいうのであれば、フロイトから便利に持ってきた「自我」という概念から疑うべきだと思う。
「心脳マーケティングに警戒せよ」という主張を、「心脳」的に論じるというアイロニー……著者が「ねらって」やっているとしたら、すごいと思うが。詳細をみるコメント0件をすべて表示