自由とは何か: 監視社会と「個人」の消滅 (ちくま新書 680)

著者 :
  • 筑摩書房
3.44
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本棚登録 : 244
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480063809

作品紹介・あらすじ

かつてより快適な暮らしが実現した現代社会。各人の振る舞いは膨大なデータとして蓄積され、"好み"の商品情報が自動的に示される。さらにはさまざまな危険を防ぐため、あらかじめ安全に配慮した設計がなされる。こうして快適で安全な監視社会化が進む。これは私たち自身が望んだことでもある。しかし、ある枠内でしか"自由"に振る舞えず、しかも、そのように制約されていることを知らずにいて、本当に「自由」と言えるのか。「自由」という、古典的かつ重要な思想的問題に新たな視角から鋭く切り込む。

感想・レビュー・書評

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  • 監視社会の問題を手がかりに、自由とは何かというテーマについて論じている本です。

    著者はレッシグのアーキテクチャ論を参照しながら、人びとに支配されているという意識を引き起こすことなく人びとをしたがわせることができるような仕組みが現代の社会に広がっていることを指摘します。われわれの自由が制約されることを知るためには、それによって何かが不可能になったという意識が必要です。しかしアーキテクチャによる支配は、人びとからそうした意識を奪ってしまいます。それゆえわれわれは、アーキテクチャによって自由が制約されていることに気づくことすらできないことになります。そして著者は、こうした仕組みがさまざまな場面において、自発的に責任を引き受けることによって生まれる「自由な個人」という近代独自のフィクションを掘り崩しつつあることに対して警告を投げかけます。

    なお、本書の最後で功利主義の立場を取る安藤馨の議論が参照されています。安藤は、アーキテクチャによる統治が発達することで人びとの効用が増大するのであれば、「個人」という観念の意義が低下していくことを、むしろ肯定的に捉えようとしています。ある時期の東浩紀もこうした立場を標榜し、かなり大胆な未来への提言をおこなっていましたが、著者は「自由な個人」という近代的な観念を擁護する立場を掲げています。

    アーキテクチャに関する議論にはオリジナリティは感じられず、個人という観念のもつ意義についてもあまり明瞭に語られていないように思います。啓蒙的なスタンスに終始しているという印象ですが、そもそも新書とはそういうものであるべきなのかもしれません。解説そのものはていねいで、問題の所在を読者が理解しやすいように書かれています。

  • 【感想】
     (ツイッターでは一言多くなりがちな)法哲学の研究者による入門書。書籍では編集が入るので、必然的にSNS投稿より文章のクオリティが上がるのが通例だが、本書は例外。残念ながら表現も議論も生煮えだった。
     のちに、本書への批判を経て『自由か、さもなくば幸福か?』(筑摩選書、2014年)につながるらしい。

     若い読者ならこの本ではなく、たとえば住吉雅美『危ない法哲学』(講談社現代新書)等からスタートして、徐々に「法哲学における自由の議論」について知識を得ることをオススメします。

  • 自由について語ることは簡単なようで難しいことがわかった。

  • 大本事件→第二次大本事件は共産主義運動を壊滅させる目的をもって施行された治安維持法を宗教団体に適用した最初の案件であった。
    神話・宗教対立(国之常立神、くにのとこたちのかみという神を、大本は重要視。日本神話において、その神は天照大神より上位におかれてる。そのため、国家神道との対立は必至であった。)を踏まえて、対共産主義としての治安維持を宗教団体に適用した事例。つまり、国家権力はいつでもその標的を変更することができる。
    リバタリアニズムは、完全自由主義で、政府の役目は監視のみでよい。ロックの自然状態にたいし、支配的保護会社が神の見えざる手によってできる。
     ギルドは製品管理を行い、罰としてシュップフェンを。現世と彼岸を結ぶ。残し。特許はグーテンベルグが活版を有償提供したことに始まる シュティルナー 個人を属性や概念に押し込めると自由がなくなる、これをエゴイズムといい、自我の唯一性、絶対性を主張した ポル・ポト カンボジアでホロコースト 新宿には50台の監視カメラあり、新宿警察署と本部で監視 
    パノプティコン的分類  
    →功利主義、帰結主義行為や制度の社会的な望ましさは、その結果として生じる効用(功利、有用性、英: utility)によって決定されるとする考え方、のベンサムが設計した刑務所。監視人からすべてが見えるが、収容者からは何も見えない。
    客体
    自由を選び、帰結を受容する。

    監視カメラはつけるべき。行動は監視カメラで、ネットなども監視されている。
    プライバシーはないと思うが、綺麗事をいう段階はもう過ぎたと考える。

  • 新書というパッケージに騙されるな、面白い

  • 2011/04/23 @kappamark

  • 2010 10/19読了。筑波大学中央図書館で借りた。
    アクセスログ分析を行う身として、また図書館の利用ログに基づくリコメンデーションや行動ターゲティングについて扱う上で避けては通れないトピックかな、と思い手に取った本。
    最初の問題設定が単なる監視社会への違反や違和感表明にとどまっていない(詳しくは引用参照)点に期待を持って読み進めた。
    国家のものではない監視の欲望への言及など頷くところ多し。
    アーキテクチャ関連では、あとはやはり『CODE』読まないわけにはいかないかなあ、ということも再確認。

  • [ 内容 ]
    かつてより快適な暮らしが実現した現代社会。
    各人の振る舞いは膨大なデータとして蓄積され、“好み”の商品情報が自動的に示される。
    さらにはさまざまな危険を防ぐため、あらかじめ安全に配慮した設計がなされる。
    こうして快適で安全な監視社会化が進む。
    これは私たち自身が望んだことでもある。
    しかし、ある枠内でしか“自由”に振る舞えず、しかも、そのように制約されていることを知らずにいて、本当に「自由」と言えるのか。
    「自由」という、古典的かつ重要な思想的問題に新たな視角から鋭く切り込む。

    [ 目次 ]
    第1章 規則と自由(「個人」の自己決定と法・政治 自由への障害 二つの自由―バーリンの自由論 交錯する自由)
    第2章 監視と自由(見ることの権力 強化される監視 ヨハネスブルク・自衛・監視 監視と統計と先取り 監視・配慮・権力 「配慮」の意味 衝突する人権? 事前の規制・事後の規制 規制手段とその特質)
    第3章 責任と自由(刑法における責任と自由 自己決定のメカニズム 責任のための闘争―刑法四〇条削除問題 主体と責任)

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    [ 参考となる書評 ]

  • かつてより快適な暮らしが実現した現代社会。各人の振る舞いは膨大なデータとして蓄積され、“好み”の商品情報が自動的に示される。さらにはさまざまな危険を防ぐため、あらかじめ安全に配慮した設計がなされる。こうして快適で安全な監視社会化が進む。これは私たち自身が望んだことでもある。しかし、ある枠内でしか“自由”に振る舞えず、しかも、そのように制約されていることを知らずにいて、本当に「自由」と言えるのか。「自由」という、古典的かつ重要な思想的問題に新たな視角から鋭く切り込む。

  • 「行為とは暗闇の中のジャンプである」(p175)。柄谷行人できたか。

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著者プロフィール

慶應義塾大学教授

「2020年 『AIと社会と法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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