ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
3.30
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本棚登録 : 424
レビュー : 51
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480063915

作品紹介・あらすじ

ブログやミクシィで、ある人物への非難が燃え上がり、収拾不能になることがある。こうした現象を「炎上」と言う。時に何千もの批判が押し寄せ、個人のプライバシーすら容赦なく暴かれる。有名無名を問わず「炎上」の餌食となるケースが頻発する今、そのメカニズムを明らかにし、そうした集団行動(サイバーカスケード)にはポジティブな側面もあることを指摘する。ウェブという「怪物」の可能性を見据えた、現代の「教養」書。

感想・レビュー・書評

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  • 報道におけるマスコミは法と倫理がある。それは社会的責任があるから。ネットでは私刑がごとく晒しが行われる。これは考えなければならない行為だよねという意見に賛成。

    メディアには独特の法則があり、人の欲望をかなえる為の透明な道具ではなく、それぞれの仕方でアウトプットの屈折や社会への反射を起こします。
    社会への反射=マッサージ

  • 最近、個人的に注目の荻上チキさん。
    テレビとかでたまにお見かけするが、すごく頭が切れる印象。
    ウェブ上で起こる「炎上」についての本。

  • 「サイバーカスケード」というものの成り立ちや、僕らがそれ加担しうる状況はままあるという現実を知り、インターネットに対して、ひとまず距離を置かせてくれるような著書。ネットに慣れてない人は読むといいかも。

  • 最近、いよいよメディアの表舞台に出てきた荻上さんの著作を初読み。

    ・「web2.0」とは、二〇〇五年九月、コンピューター技術書籍の出版や技術のフォローを行っているオライリー社の代表ティム・オライリーが「web2.0とは何か」という論文を発表し、それがきっかけで話題になった言葉です。従来のインターネットで提供されるサービスやユーザー体験を「web1.0」とし、それを超えて台頭しつつある新しいウェブ空間のあり方に対する総称として用いられています。

    ・要するに「2.0」とは、「今までのウェブサービスよりも、さらにすごいウェブサービスたち」を意味する掛け声のようなもの。

    ・ウェブは「みんなの意見」をデータベースに取り込み、履歴を積み重ねていくことで、より上質のサービスを個人に向けて提供してくれるというわけです。
    ・ウェブは、あたかも独自の生態を持った生物のようなものだといえるでしょう。

    ・政治的にリベラルな思想の持ち主はリベラルな本ばかり読み、政治的に保守的な思想の持ち主は保守的な本ばかり読む。両者は互いに論難しあうことが多いにもかかわらず、論敵の本をきちんと読み比べている人はごくわずかで、自分の思想にあった本ばかりを読む人が基本的には多いということです。

    ・「これまではつながっていなかったものがつなげられる」ということは、「ウェブ以前」であれば時間的、空間的条件などによって隔てられていたはずのコミュニケーションが遭遇するということを意味します。例えば、普段であれば出会うはずのないまったく違う意見の持ち主のサイトを閲覧し、普段なら考えないはずの問いと遭遇する。ウェブでは、地理的、物理的、時間的な条件によって拘束されません。そのことが、「ウェブ以前」の社会では想定してこなかったようなコミュニケーションのパターンを生むのです。
    ・ただし、「これまでつながっていなかったものがつなげられる」ことによって、「出会いたかった人」だけでなく、それまで「出会うはずのなかった人」や「出会いたくなかった人」とつながることも起こりえます。

    ・オルポートとポストマンは、「流言の量は問題の重要性と状況のあいまいさの積に比例する」[R(流言 Rumor)=i(重要さ importance)× a(曖昧さ ambiguity)]という有名な公式を提示します。


    スマホの普及とともに、「ネットの中に生活している」といっても言い過ぎではないような今の時代を生きていく上で、リテラシーを身につけるためにも抑えておきたい初歩の一冊という感じ。

  • ツイッターやFacebookなどで一人ひとりが発信者となってしまったここ最近、飲酒運転や誹謗中傷がどこかで取り上げられてしまって炎上になるニュースは枚挙にいとまがありませんね。
    本書ではちょっと前にネットで話題となった事例を多く取り上げてその炎上に至るプロセスを解説するものです。(のまねこ、きんもーっ☆、イラク人質事件など)
    炎上するときは、その中身が本当の場合なら私刑の助長に、本当でない場合でも流言として広がっていきます。仕組みであるサイバーカスケード(ネット上で個々人の自由判断がいつの間にやら一極に傾いていくこと)自体が悪なのではないと言うのは分かるがじゃあどうすればというところはよく分からない感じです。炎上のところはノリノリでチキさんが喋っている姿が目に浮かびますが、結章でトーンダウンしてるのがうーむという感じ。
    2007年の本ですが、今でも通用します。炎上プロセスに興味がある人や2ch歴長い人におすすめですね。

  • これまで集めてきた情報の集合体。丁寧。

    アーキテクチャ/可視化とつながりによってもたらされる過剰性

  • ウェブ上での炎上、いわゆる「サイバーカスケード」について、どうして発生するのか、どのように理解すればいいのか。著者はサイバーカスケードそれ自体については、否定的でも、肯定的でもない。まずは現象を理解すること。これが本書の目的だ。

    で、そのサイバーカスケード発生のメカニズムなんだけど、これが拍子抜けするくらい、旧来の社会学や心理学の見地で説明できちゃう。書名から何となく「これまでにない現象の謎を解き明かす!」的なノリを期待すると、間違いなく肩透かし。「確証バイアス」だの、「予言の自己成就」だの、なんつうか、ほんと「古典的」な理屈で説明しきれてしまうのだ。

    むしろ、新しく、若い読者に身近で、興味の持てる題材を「使って」、大学の一般教養で学べるような社会学を楽しくレクチャーしてくれてると言った方が読後の印象に近い。

    って、こう書くと、新鮮味がなくて悪いと言ってるように見えるかもしんないけど、そうじゃない。逆。インターネットは、とかく新奇なもの、しばしば過度に危険であったり、我々の生活をラディカルに、革命的に、容赦なく変えてしまうものであるかのように、語られがちだ。「インターネット」という言葉を使って良くも悪くも煽られてしまってるところ、なきにしもあらずな現状、「あ、意外と従来の枠組みで説明できちゃうのね」と納得させてくれる本書は、冷静に、上手く、インターネットとそこで生じる現象=炎上、サイバーカスケードに付き合っていく上で、非常に有効なツールを提供してると思う。

    まあ、よくよく考えてみれば、「ネットで世界はこうなる!」系の予言や、「ネットのせいで若者のコミュニケーション能力がゴニョゴニョ」な話って、それ自体が、新奇な対象・現象と遭遇した際に、その不安を解消するために取られる言説受容方法でしかないってところも多分にあって、それって本書の中で取り上げられている「イラク人質事件」サイバーカスケードの現象と、置かれてる状況、基本的にまったく変わらないわけだしな。

    もちろん著者はネット社会になって「何も変わらない」とは言ってない。ネットはコミュニケーションを可視化してしまう、まったく異なった文脈のコミュニケーションをより容易に結び付けてしまう点が、従来とは異なる。こうした点についても著者は注意を促す。この変化が、どんな風に、どこまで影響するのかって分析は本書では、あんまりなされてないけど。

    個人的には、デイリー・ミー(個人が好きなニュースを好き勝手に選択した結果、事前に一定の情報がフィルタリングされてしまう現象)とか、ネットによるタコツボ化、不快経験の事前消去を懸念していたので、自分の懸念するように程度がひどいとは限らない、と、気付かせてくれたことが大きかった。単に自分の好きなものだけ見れば済むのがネット、とばかりも言い切れないんだよね(お隣さんブックマークの存在など)。

    というわけで、身近なトピックで「従来の学的蓄積の成果、実はヤバイんだぜ」「結構使えるツールだぜ」と平易な記述で教えてくれる本書は、非常に良質な新書の鑑だと思う。同じ著者の『社会的身体』はあんまり面白くなかったけど・・・。

  • 炎上の心理がわかりやすく説明されており勉強になった。ネットは収集する情報をカスタマイズしやすく、それゆえに特定の考えに集団で流れていく。しかしこの現象自体はネット以前からあったもの。炎上することではなく、自分のバイアスに無自覚のまま影響されることの危険性を感じた。

  • ネット特有のもの、ネット以前からあるもの、を具体例をあげつつ検証。
    良い悪いの物差しを当てはめずに、丁寧に分析してある。
    新書かくあるべしな一般向けの教養書。オススメ。
    http://takoashiattack.blog8.fc2.com/blog-entry-734.html

  • ネットものの読み物というと、技術者や起業家がネットの明るい未来を喧伝するテクノロジー優位のネット楽観論か、教育者やよくわからない評論家が憶測ベースでネットの有害性を語る感情優位のネット悲観論が多かったのですが、ここ何年かは、社会科学系の知識、理論を背景にネットの分析をする人たち(東浩紀が人文系とよぶところの人たち)も増えてきましたね。やはり、楽観論、悲観論だけでは非常に薄っぺらい議論にならざるをえないので、そうした人たちの分析や発言というのは大変大事なことだと思います。

    この本も、そうした人たちの流れで、炎上をはじめとするネット上の現象をその文脈からひもといています。批判的なコメントや応援のコメントが急に大量に殺到するようなサイバーカスケードを、心理的な側面、技術的な側面など多面的に分析するアプローチはとてもおもしろく、それなりの説得力もあると思います。そうしたサーバーカスケードそれ自体を悪として捉えるのではなくて、それはある種ネット自体の性質であり、その性質がうまい方向にいくようなアーキテクチャの模索も訴えています(同時に、アーキテクチャの危険性も)。

    通常であれば、ネットリテラシーが必要だよね、という話になって教育の必要性が叫ばれるところですが、それをアーキテクチャによりうまく導けないか、というのは非常に建設的な意見だと思います(経済学でいうところの、メカニカル・デザイン論とかマーケット・デザイン論に近いのかもしれない)。ネットだけでなく、現実世界もやはりそうしたアーキテクチャによらないと正常にまわらない状況というのはたくさんありますからね。

    この本だけでは、そうしたネットの現象の分析にとどまっていて、その先の提言まではいっていません。が、今後こうした分析がより深く進んで、どういったアーキテクチャがネット上の人々の意見を良い方向にもっていけるかがわかってくれば、またいろいろな可能性がありそうです。

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著者プロフィール

特定非営利活動法人「ストップいじめ!ナビ」代表理事

「2018年 『ソーシャル・マジョリティ研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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