仕事と日本人 (ちくま新書 698)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 163
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480064066

作品紹介・あらすじ

資本主義であれ社会主義であれ、近代以降のあらゆる国家は「労働」を賛美してきた。しかし、こうした仕事観が常識となったのは、それほど昔のことではない。私たちの御先祖様は、金回りがよくなると、仕事を勝手に休んでいた。彼らは「労働の主人」たりえたのだ。それに比べて、現代の労働のなんと窮屈なことか。仕事の姿は、「会社」の誕生によって大きく変わったのである-。江戸時代から現代までの仕事のあり方をたどり、近代的な労働観を超える道を探る「仕事」の日本史200年。

感想・レビュー・書評

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  • 2017年10月8日に紹介されました!

  • 日本での労働観の形成を追った本。
    労働が時間の概念と密接にかかわっていることがわかる。
    また、昔は労働と非労働が分けられていなかった。
    近代になって工場などの発展により区別が生まれたことが分かる。
    最終的に金銭目的の労働だけでなく、やりがいや生きがい、つながりが労働で実現されるべきと説く。
    その意見に賛同はできないが、金のための労働が経済学的観点の話だという意見は面白いと思った。

  • 本書のはしがきで引用される「働きマン」のなかのセリフ「私は仕事したな、と思って死にたい」。
    このセリフは、幸せな職業人生を送った(または現に送りつつある)、極限られた人々にしか勝ち取れない言葉では、本来はないはずだ。人生の最も活動的な時代、睡眠以上の時間を費やす
    「仕事」に賃金という対価を得るため以上の意味を見出せない現実に、満足せねばならないいわれはない。
    本書は「働くこと」が即「生きること」であった時代から日本における「労働」観の変遷をたどり、労働=生産管理の必要上生じた「就労時間」や「賃金」、「残業」といった近代的諸概念が、「働くこと」の本質的意味を見失わせているのではないか、と問いかける。もちろんその答えは読者一人一人の考え次第。「飯の種」として割り切って働くことを否定するわけではない。
    どんな結論に至るにせよ、管理職も新入社員も、定年間近の方も非正規の方も、時にはこんな本を読んで、「自分が何のために働いているか」について考えてみることも大事だと思う。

  • 【閲覧係より】
    --------------------------------------
    所在番号:新書||366||タケ
    資料番号:10182805
    --------------------------------------

  • 現代社会人必読の書にしよう。

    仕事に命かけたくないです!!!
    仕事にもやりがいは勿論持ちたいけど、
    それだけがやりがいなのはきつい。

  • 第2週 1/18(水)~1/24(火)
    テーマ「学ぶ」こと・「働く」こと

    ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00172142

  • 書名の通り仕事と日本人について、またその周辺について様々な観点から語られているため一概にレビューするのは難しいが、主題としては「近代的な労働観」をどのように超克していくかという点にあるだろう。なぜ私たちの多くは往々にして「労働」という言葉に対して、忌避すべき対象として、またネガティブな対象として捉えることがあるのか。

    著者は、それは近世から近代にかけて、農業主体の生活から工業主体のそれへと変貌を遂げていく中で、西欧的「時間」概念が導入されたこと、また生活と仕事の場が分離せざるを得なくなるなどの「ある種の不自由さ」がもたらした産物であるという(それは労働にかかわる主体性の喪失の過程でもあった)。分業と協業の代償として得られた現代の豊かな社会の功罪を、歴史や豊富な参考文献を紐解きながら客観的に分析しつつ、現状は現状として受け入れ、一方であらゆることに対しての評価基準となりつつある「お金」に縛られ過ぎない生き方、またそうした環境を作り出せるような成熟した社会を模索する姿勢は、落ち着いた筆致も手伝って、非常に共感を持てた。(個人的に今年読んだ中では一番良かったかも)

    余談だが、日本(アメリカも?)の残業が多くなりがちな風土は、やはり日本固有の事情に深く根付くものであり、そうは簡単に変えられないものだと痛感した。孫引きになるが「労働への『自発的』参加、責任の広範な諸相への分散、企業帰属意識の強さは、従業員の『義務の無限定性』とワンセットをなす。」(P182)という箇所は、日本の残業風土を説明する上で非常に重要な示唆をしていると思う。ワークライフバランスって何だっけ?と時々考えることがある。そのたびに少し否定的な気分になったけれど、本書のおかげで少し前向きに考えられるようになった(気がします)。

  • 江戸時代から現代までの日本社会の働くという観念の変遷を「労働」という観念、時間の規律、残業、賃金という切口で。

    時代は移れども一人の人間は変わらないわけだから、自分が働く中身・意味・意義は、結果を切り離して自身の感情で考えてみなきゃいかん。

    忙しく仕事して休みにバーっと給料ばらまく生活に少し違和感を感じるので、実践するしないは置いといてこれを忘れないようにしよう。給料とゆとりを天秤にかける、心のゆとりを持てますように。

    >「労働」という奴隷の時間を耐え忍んで、「余暇」という人間的な生活を暮らす、これが経済学の描く人間の生活だ。

    ふむ。

  • 2011.1.25

  • [ 内容 ]
    資本主義であれ社会主義であれ、近代以降のあらゆる国家は「労働」を賛美してきた。
    しかし、こうした仕事観が常識となったのは、それほど昔のことではない。
    私たちの御先祖様は、金回りがよくなると、仕事を勝手に休んでいた。
    彼らは「労働の主人」たりえたのだ。
    それに比べて、現代の労働のなんと窮屈なことか。
    仕事の姿は、「会社」の誕生によって大きく変わったのである―。
    江戸時代から現代までの仕事のあり方をたどり、近代的な労働観を超える道を探る「仕事」の日本史200年。

    [ 目次 ]
    第1章 豊かな国の今、問われる選択
    第2章 「労働」という言葉
    第3章 「仕事」の世界、「はたらき」の世界
    第4章 「労働」観念の成立
    第5章 時間の規律
    第6章 残業の意味
    第7章 賃金と仕事の評価
    第8章 近代的な労働観の超克

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著者プロフィール

東京大学名誉教授。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、博士(経済学)。主な著作に、『歴史としての高成長東アジアの経験』(共編、京都大学学術出版会、2019年)、『日本経済史』(有斐閣、2019 年)などがある。

「2022年 『企業類型と産業育成 東アジアの高成長史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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