建築史的モンダイ (ちくま新書 739)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480064295

作品紹介・あらすじ

近代建築史研究一筋だった著者が中世ヨーロッパ建築、さらに初期キリスト教建築、新石器時代の建築へと歴史を遡るうちに気付いたのは、建築の発祥という大問題だった。何が始まりだろうか?住まいか?それとも神殿か?そもそも建築とは何をもって建築というのだろうか?長い長い年月を経て、石や穴だけとなった遺跡を訪ね、その遺跡のもらすつぶやきに耳をすませて見えてきたものとは?建築の起源、和洋の違い、日本独自の建築の歩み…「建築」にまつわる疑問を縦横無尽に解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 古今東西の建築の歴史を縦横にめぐりながら、著者自身の感じた建築にかんする根源的な問題について論じているです。

    エッセイふうの文章で書かれていますが、冒頭から「人類が最初に造った建築は、神様のための神殿だったのか、それとも自分たちの住まいだったのか」という根源的な問題が提起されています。このばあいの「最初に造った建築」とは、最初の「住まい」ではなく、「美しいこと」あるいは「視覚的な秩序があること」という性格をそなえた建築を意味しており、つづいて旧石器時代の洞窟壁画にまでさかのぼって、人類と建築の根源的な関係へと探求を進めていきます。

    かならずしもしっかりとした論証がおこなわれているわけではなく、むしろ著者の研究のはじまりとなるような発想の芽のようなものが率直に語られています。茶室における炉の問題から、「茶室の核心には火がある」という結論にいたるところなど、どの程度妥当性のある意見なのかわたくしには判断がつかないのですが、興味深く読みました。

  • ところ変われば建築物も変わる。それぞれの時代や、気候などの土地柄に合わせた建築物が作られるのは当然のことなのであろう。そういう意味で、教会建築の「バシリカ式」と「集中式」の違いについての記述は興味深いものであった。

  • まだまだ不勉強な私が建築に関する周辺エッセイとか読んではいけないのではと思いながら、重めのを読む気になれないので、恐縮しつつ読了。軽妙な筆致とはいえ、そこここに藤森先生ならではの洞察があり、多少復習にもなって良かったかなと。最近の、設計を始めてからの藤森本は読んでなかったので心境の変化を知らず、建築の起源を巡ってキリスト教の原始の教会からさらに洞窟壁画に行き着いてみたりと、なかなか刺激的な内容。キリスト教の教会は洗礼を受ける水場を覆ったところから始まったのでは、とか、天井や壁面に描かれた宗教画がステンドグラスになったわけ、とか、が印象に残る。あとは打ちっ放しを最初にやった2人の建築家オーギュスト・ペレ、アントニン・レーモンドについては記憶しておきたい。彼らがいなければ安藤忠雄もいなかった。ほか建築物と火災の関係と日本の家屋が木造であり続けるわけ、屋根の素材のあれこれなど、物事には原因があるということがよく分かる。この発想経路は基本理系の人なのかなと。

  • 1 建築とは何だ??
    2 和洋の深い溝
    3 ニッポンの建築
    4 発明と工夫

    著者:藤森照信(1946-、長野県、建築学)

  • 社会

  • 新書文庫

  • 建築史家、建築家の藤森照信が建築史にあるさまざまなモンダイについて独自理論を展開する一冊だ。
    煎茶の茶室には炉をきらない、とか、コンクリート打ちっぱなしの変遷と歴史とか、コンニャクレンガの話とか、へえ、とか、ふーん、といったちょっと面白い話が集められていて、読んでいて楽しい。
    難しい話はなく、建築史、というタイトルではあるけれども系統だって歴史を学ぶわけではなくて、話はあっちへとんでこっちへとんで、と博識な人の雑談をリラックスしながら聞いて楽しんでいるような親しみやすさがある。
    それにしてもこの人の好奇心の旺盛さとかバイタリティってすごいなぁ。感服。

  • 和洋の建築の在り方についていろいろ考えを巡らせることができた。(図らずも北欧旅行とも共鳴。)

    やはり欧州の建築は「石」でつくられてきたというのが日本との大きな違いだと改めて了解した。そしてこのことゆえに、建築を豪華にしていく術は、とりあえず彫刻に結実されるのである。

    また、街のランドマークたる「高い教会」も日本との違いとして大きなところであり、それが日本の「城」に影響したという説にも合点。

    その他、宗教建築のタテヨコの話、内部だけを木造化することとした内田祥三の準木造の話、など面白かった。

  • 建築の問題を歴史的な観点から指摘した本。もともと複数の書籍や雑誌に掲載されたものを転記、加筆が行われているので一貫して同じ問いを考えているわけではない。屋根について、自然調和について、建築の材質についてなど章が変われば急に話題も変わり読んでいてちょっとびっくりする。建築の世界は長い歴史もあるしかなり完成された領域なのかと勝手に考えていたが以外にも調べていくと生活に密着しすぎて記録が残っていないという点でも分からない部分が多い分野だとわかる。近代建築の調査、研究という点で大変面白い本だと思う。

  • 藤森センセイによる一般向けの建築雑学的散文、決して批判的な意味ではなく。
    藤森センセイらしいくだけた文体。一見思いつくまま(失礼)のように展開する内容。
    本書で読むべきは、藤森センセイが自ら見たりインタビューしたりした事由。ふざけているようで奥が深い。
    個人的に興味深いのは、最終章の柔構造と剛構造についての記述。武藤のD値法の武藤先生に直接インタビューをしている著者が、武藤先生が「五重塔に学んで柔構造を思いついた」と語ったとの新聞記事を俗耳向けの説明、ジャーナリズム上の作り話と言い切っているあたり。自ら見たりインタビューをしたりしてきた藤森センセイだからこその説得力。

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著者プロフィール

1946年長野県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専攻は近代建築、都市計画史。東京大学名誉教授。現在、工学院大学教授。全国各地で近代建築の調査、研究にあたっている。86年、赤瀬川原平や南伸坊らと「路上観察学会」を発足。91年〈神長官守矢史料館〉で建築家としてデビュー。97年には、〈赤瀬川原平邸(ニラ・ハウス)〉で日本芸術大賞、2001年〈熊本県立農業大学校学生寮〉で日本建築学会賞を受賞。著書に『日本の近代建築』(岩波新書)、『建築探偵の冒険・東京篇』『アール・デコの館』(以上、ちくま文庫)、『天下無双の建築入門』『建築史的モンダイ』(以上、ちくま新書)、『人類と建築の歴史』(ちくまプリマー新書)、『藤森照信建築』(TOTO出版)などがある。

「2019年 『増補版 天下無双の建築学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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