経済学の名著30 (ちくま新書 785)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480064912

感想・レビュー・書評

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  • [ 内容 ]
    市場経済はいかにして驚異的な経済成長を可能にするのか。
    そうして社会が豊かになっても貧富の格差が拡大するのはなぜだろうか。
    また、資本主義が不可避的にバブルや不況を繰り返す原因はどこにあるのか―。
    スミス、マルクスから、ケインズ、ハイエクを経てセンまで、本書は厳選された30冊の核心を明快に解きほぐすブックガイドである。
    それぞれの時代の経済問題に真っ直ぐ対峙することで生まれた古典は、私たちが直面する現下の危機を考えるうえで豊穣な知見に満ちていよう。

    [ 目次 ]
    1 (ロック『統治論』―私的所有権がもたらす自由とその限界;ヒューム『経済論集』―奢侈と技術が文明社会を築く;スミス『道徳感情論』―共和主義と商業主義をつなぐ「同感」 ほか)
    2 (マルクス『資本論』―貨幣と労働の神話を解く;ワルラス『純粋経済学要論』―一般均衡理論が実現する社会主義;ヴェブレン『有閑階級の理論』―大企業と見せびらかしが生み出す野蛮な文明 ほか)
    3 (バーリ=ミーンズ『近代株式会社と私有財産』―株式会社は誰のものか;ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』―貨幣経済を動かす確信と不安;ポラニー『大転換』―経済自由化は「悪魔の挽き臼」だ! ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 古今の経済学の名著を簡潔にまとめつつ、筆者の新たな視点を加えて書かれた新書。経済学は門外漢だが、奥深い名著の世界の入り口に立てた気がする。知的好奇心を掻き立てられた一冊。

  • 経済学の歴史を彩る30の著作を時代に沿って論評したもの。よくまとまっていて良い本だったと思う。心に引っかかったところだけコメントしたい。スミスの「自然な資本投下の順序」についての指摘は興味深かった。スミスですらも、自由意思に任せた結果としての投資の帰結について自信が持てなかったと言うことだろうか?リカードについては、彼の問題意識が地代のみの増加を緩和するために貿易自由化で穀物価格を下げる、ということにあったにもかかわらず、その問題意識を飛ばして都合良く理想化されて使われているということがわかったのは成果だった。マルクスの主要論点に「貨幣の謎」というものがあるということがわかったのは成果だった。確かにこれを見出したことは他の人にとっては魅力的だったのかもしれない。マルクスが受け入れられた謎の一角がやっと融けたような気がした。いずれにしても、共産主義がそれに対して何らかの解決法を見いだしているようには見えないが。ワルラスの社会主義的傾向の話は面白かった。一般均衡理論こそが社会主義経済の描写だという指摘はまさにその通りだと思う。マーシャルも一般均衡理論で新古典派の祖のような理解だったが、収穫逓増にこだわったということからちょっとイメージが変わった。一般均衡理論というのは市場経済の分析であり、その中には資本主義の分析は含まれていない。収穫逓増というのはまさに資本主義の分析であり、そこにこだわったことからより大きな資本主義市場経済の分析の構想を描いていたのだろう、という気がした。ケインズのゲゼル批判はどうなのか、という気がした。貨幣から流動性打歩を取り去れば、複数資産の間で流動性選好が起き、その結果として流動性の罠から抜け出せるのではないのだろうか?なぜ貨幣が他資産にとってかわることが悪いことなのかの説明が全くできていないような気がする。その代替こそがまさに流動性の罠から抜け出すことではないだろうか?ハイエクは、根っからの市場経済主義者だけに市場経済の動きを観察することが極めて社会主義的な手法であるということがなかなか受け入れられなかったのかな、と感じた。市場を管理することはできないにしても、それを観察する手法というのは、考え方としては社会主義的な手法なのだろう。ハイエクはその管理と観察の区別に苦しんだのではないだろうか。「自由への条件」の方は、彼が管理と観察の区別のために持ち出した考えが「法の支配」という考えなのだろうと感じた。しかしまあ、法というのはきわめて主観的、恣意的なものであるので、市場経済を信奉する人がそれを言うと、どうにも首尾一貫しない話になってしまうのが残念だ。要するに私の正義は正しいが、他の人の正義はそうではない、という話にならざるを得ないからだ。彼は観察者の立場に徹するべき人であったと思う。フリードマンは、人間価値にとって貨幣が唯一絶対のものであるのならば、たぶんうまく行ったのだろうが、現実はそうではなかったということが証明された、ということなのではないだろうか。理屈としては彼の言っていることは正しいのかもしれないが、世の中にはカネよりも大事なものがあったということなのではないか。ドラッカーは、知識の時代は素晴らしいとは思うが、それって中世のギルド社会とあんまり変わんないんじゃないの、という気もした。ロールズを経済学的に見るというのはどうも違和感がある。正義とかって、経済学の分析対象ではないのではないだろうか?その意味で、センの読み方もちょっと違うのではないか、という気がした。全体としては多くの示唆をもらえるとても良い本だったと思う。

  • 経済学の名著30冊を、自説などに影響されずに客観的に紹介する本。
    バイアスがかかっていないブックガイドは本当に少ないので助かると思う。

    入門書ではないので、経済史の基本と流れがわかったうえで、より深く知りたい人が本を読む前に選ぶ時に参考にするような使い方が一番よいと思う。多くの経済学の原著・名著があるなかで、どのような本が読むに値するかを、先人に学び、書籍を選ぶ眼をもつことも大切だと思う。

    しかし、評者は大学でも一般教養で経済学は学んでおらず、独学で経済学を学んでいて、本書の内容にはついていけない部分があった。ある程度の高度な素養をもつと、良い本にみえると思う。その意味では自分にとっては★3つだが、★5つになる人も多いと思った。

  • 現代に至るまでの膨大な量にわたる古典の中から、著者お勧めのものをピックアップして紹介する、という形式のもの。
    正直私も古典と言われてもどれから読んでいいのか皆目見当がつかなかったために、このようなブックガイドを参考にしようと思っていました。各先人の著作と思想が数ページにまとめられていたため読みやすく感じました。
    一つ難点を言うと、これはどうしても仕方がないことですが、著者の個人的視点から書かれたものであるため、紹介されている著作の真に強調したい箇所が多少ずれている可能性があることです。

  • 経済学の古典三十冊を要約して紹介するもの。
    著者が自負するとおり自説に関係なくその古典の著者の意思をバイアスなしで紹介していて感心。
    そうゆう意味で今まで誤解され批判を受けてきた古典や考えに新しく光をあてていて、「あ、そうだったんか…」と唸る事が多かった。
    加えて経済思想史に関する本を読むのはこれが初めてだったので、今までどれだけの知の巨人がいたのかとゆうことでも驚かされた。
    今大学で学んでいる経済学はミクロってのもあって新古典派経済学と言える。それ自体には不満はないがおれが個人的に強い関心を持つのは経済思想史とかだったりする。「経済思想史の変遷」とゆうクラスがあるらしいけど実際教えられているのか不明だしでちょっと腐りかけてたところにこの本は知的な喜びを与えてくれた。

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著者プロフィール

松原隆一郎(まつばら・りゅういちろう)
昭和31(1956)年神戸市出身、放送大学教授、東京大学名誉教授。灘高校・東京大学工学部都市工学科卒、同大学院経済学研究科単位取得退学。専攻は社会経済学・経済思想。著書は『頼介伝』(苦楽堂)、『経済政策』(放送大学教育振興会)、『ケインズとハイエク』(講談社現代新書)、『経済思想入門』(ちくま学芸文庫)、堀部安嗣との共著『書庫を建てる』(新潮社)他、多数。

「2020年 『荘直温伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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