使える!経済学の考え方: みんなをより幸せにするための論理 (ちくま新書 807)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480065094

作品紹介・あらすじ

経済学とは単なる「お金儲け」の学問ではない。「どうすれば、みんなが幸福になれるか」を探究する営みだ-。世の中では、ある人の幸せが他の人の不幸へとつながることがしばしば起こる。では、そうした不可避の困難のもと、あるべき社会の形をどう構想すればよいのか。本書は最先端の確率理論を駆使して、この難題に鋭く切り込む試みである。不確実な世界における人間の行動様式の本質を抽出し、そこから、自由で平等な社会のあり方をロジカルに(しかし熱いハートで)基礎づける。

感想・レビュー・書評

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  • [第1刷]2009年10月10日

  • 経済学部出身のくせになんですが、知らないことばかりだったので新鮮ではありました。しかしまだ経済学のおもしろさは分からんなあ。

  • 分かりやすいだけど、数学に親しければもっと面白いんだろうな…理解するのちょっと大変

  • 経済学の広さ、奥深さ、可能性を感じる。

    自由、平等、正義をロジカルに考える。

    加法性を持たない確率、ショケ期待値

  • 個人的にはかなり気に入りました。
    最近の「経済評論家」の人たちはやたらと心証で物事を語っているので、この様な数学的な説明をしっかりと扱っているのは待っていました、という感じです。
    誤解されがちな概念についても数学のみにとどまらない説明がなされている点も評価できます。

  • ケインズもロールズもセンも短いセンテンスで簡単に紹介してしまいます。

    彼の理論は次のセンテンスにつきますって感じなので、読まないと損なような気になります。

  • [ 内容 ]
    人は不確実性下においていかなる論理と嗜好をもって意思決定するのか。
    人間行動の本質を確率理論を用いて抽出し、「幸福な社会」のあり方をロジカルに基礎づける。

    [ 目次 ]
    まえがき よい社会ってどんな社会
    序章 幸福や平等や自由をどう考えたらいいか
    第1章 幸福をどう考えるかーピグーの理論
    第2章 公平をどう考えるかーハルサーニの定理
    第3章 自由をどう考えるかーセンの理論
    第4章 平等をどう考えるかーギルボアの理論
    第5章 正義をどう考えるかーロールズの理論
    第6章 市場社会の安定をどう考えるかーケインズの貨幣理論
    終章 何が、幸福や平等や自由を阻むのかー社会統合と階級の固着性

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    [ 参考となる書評 ]

  • <目次>
    まえがき――よい社会ってどんな社会

    序 章 幸福や平等や自由をどう考えたらいいか
    人々の幸せを論じる難しさ
    ミルの考え
    「自由」と「分配」の衝突
    「競争」の本当の意義
    本書は、幸福の問題を、数学を使って考える
    ブラウン神父から学ぶこと
    数学の有効性を知る一例

    第1章 幸福をどう考えるか――ピグーの理論
    「幸福」を経済学ではどう考えるか
    「幸福」は「効用」で測る
    効用関数はこのように発見された
    大事なのは、「最後の1単位」が与える効用
    ピグーの厚生経済学
    「最良の社会」は「完全平等の社会」である――ベンサム&ピグーの定理
    ベンサム&ピグーの定理をどう評価するか
    ピグーの論理の弱点
    功利主義とはどんな主義か

    第2章 公平をどう考えるか――ハルサーニの定理
    人が完全に公平であるのはいつの時点か
    ハルサーニの人となり
    賭けについての数学者の基準
    賭けについて、経済学者が導入した期待効用基準
    期待効用はアンケートでわかる
    期待効用基準を生み出す規則とは?
    ハルサーニの発想
    ベンサム&ピグーの定理が再現される
    人間の幸せについての幾何学
    ダイアモンドの強烈な批判
    自由意志の行使の問題

    第3章 自由をどう考えるか――センの理論
    自由という魔物
    民主主義と自由は両立しない
    社会の選択基準を与える関数
    パレート原理とリベラリズム原理
    センの鮮やかな証明
    原体験としてのベンガル飢饉
    どんな選択肢から選ばれたのか
    学校教育は義務か権利か
    選択肢の広さこそが「自由」
    障害者について深く考える
    潜在能力アプローチ
    潜在能力の国際比較

    第4章 平等をどう考えるか――ギルボアの理論
    平等と格差/平等度の計測
    ジニ係数で世界と日本の不平等を見てみる
    ジニ係数のいろいろな計算方法
    ジニ係数で数学の威力を見る
    ジニ係数の意味での平等社会を選好するとは?
    公理をチェックしてみる
    やはり、背後には不確実性についての認識
    「自信のなさ」が関わる確率理論
    別の期待値を定義する
    ショケ期待値の公理系
    ジニ係数とショケ期待値には深いつながりがある

    第5章 正義をどう考えるか――ロールズの理論
    公正な社会とは何だろう
    正義の二原理
    功利主義はどこがダメか
    最も不遇な人たちとは誰か
    原初状態と無知のヴェール
    基本財を使ってマックスミン原理を論証する
    センによるマックスミン原理への批判
    マックスミン原理の公理化の問題
    「自信のなさ」の不確実性理論を再び
    公平無私の観察者によるマックスミン原理
    マックスミン基準と不透明な未来

    第6章 市場社会の安定をどう考えるか――ケインズの貨幣理論
    資本主義の落とし穴
    「欲望」と「安定」のトレードオフ
    ケインズの豊かなアイデア
    ケインズ理論における「不確実性」
    再び、加法性を要請しない確率
    貨幣こそが不況の原因
    貨幣が購買力を吸収し尽くす
    月への欲望
    流動性選好が不況の元凶
    「二股をかけていたい」という欲望
    「曖昧な消費欲」を公理でとらえられる
    不況とは協力が壊れてしまった状態
    経済学の新たな地平へ

    終 章 何が、幸福や平等や自由を阻むのか――社会統合と階級の固着性
    幸福や平等や自由の実現を阻むもの
    学校教育と平等
    教育を投資と見る人的資本理論
    階級は教育によって固着化される
    対応原理とヒエラルキー分業
    数学モデルの重要性を再論する
    アカロフの「情報の非対称性理論」
    忠誠心フィルター
    貧乏人はなぜ金持ちに忠誠心を持つのか
    階級に対する「経験」の影響

    あとがき

    参考文献

  • タイトルはしょぼいけど中身はすごい。今までに読んだ経済学の啓蒙書の中で一番。

    いままでもいい啓蒙書はいくつもあったけれど、経済学の考え方を使えば、こんなことに役立ちますよ、という個別論点への処方箋への話。道具的な扱いだから、価値判断は経済学の外側にあって、経済学自身は価値判断に対して中立的な書き方。だから、経済学は使えない役に立たない、という誤解は解けても、金のことばかり考えている、弱者を顧みない冷たい学問、という誤解は解けないままだった。

    それに対して、この本は、個別の対処療法ではなくて、平等、公平、正義、といった幸福に関わる概念に対して、経済学自体が積極的に関わっていることをいままでに無いくらい前面に出して扱っている。センやロールズを取り上げた啓蒙書なんてほかに見たことが無い。

    ここまで経済学と幸福の関係を描き出せたのは、効用の概念に真正面から取り組んでいるからだと思う。効用は経済学の要になる概念だけど抽象的なだけに、いままでの啓蒙書では巧みに避けてきた。でも、この効用の概念を使わずに経済学的な考え方と社会の幸福とのつながりを説明することはできないから、結果的に対処療法で話を進めるしかない。それを、冒頭から効用を説明することで、経済学と幸福の関係をはっきりと示している。

    さらに、そうした効用や幸福について数学的な説明を積極的にしていくことも、ほかの啓蒙書と大きく違うところ。数学は扱う問題について誤解無く共有できる唯一の言語でもある。明晰にできることは明晰にすることは複雑な問題を扱うためには必要なこと。数学はともすれば非人間的な印象を与えかねないけど、人や社会の幸福という人間的な問題だからこそ数学を使う。だから、数学を多用することは、経済学の真摯さの表れでもあると思う。

    効用について説明したり、数学を使ったり、結果的に啓蒙書としてはかなり難しいものにはなっている。一見難しそうな問題を経済学で簡単解決、という爽快さもない。それでも、丹念に読めば経済学が数学で何を考えてきたかがわかるし、著者自身の問題意識もばしばし伝わる。学問て言うのは熱い問題意識と真摯な探究心で進歩していくんだということが実感できる。

  • 前半は先人の数学モデルの紹介となっているが、詳細説明を文献参照としているところが多く素人にちょっとむずかしい。私にはちょっと「使えない」って感じだった。

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著者プロフィール

小島 寛之(こじま ひろゆき)
1958年東京都生まれ。東京大学理学部数学科卒業。同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。
現在、帝京大学経済学部経済学科教授。専攻は数理経済学、意志決定理論。
数学エッセイストとしても多方面で活躍しており、そのわかりやすい語り口には文系・理系の読者を問わず定評がある。
主な著書に『使える!経済学の考え方』『数学入門』(以上、ちくま新書)、『天才ガロアの発想力』『ナゾ解き算数事件ノート』『21世紀の新しい数学』『証明と論理に強くなる』『【完全版】天才ガロアの発想力』(以上、技術評論社 )、『無限を読みとく数学入門』(角川ソフィア文庫)、『数学的推論が世界を変える』(NHK出版新書)など多数。

「2021年 『素数ほどステキな数はない  ~素数定理のからくりからゼータ関数まで~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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