成熟日本への進路 「成長論」から「分配論」へ (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480065568

作品紹介・あらすじ

日本はこれからどの方向に進んでいくのか。政治は迷走し、国民は困惑している。既に成熟フェーズに入った日本は必然的に国家ヴィジョンを差し替えなければならない。そして、経済政策や政治の仕組みを再構築しなければ、社会は一層暗く沈滞していくだけである。国民が「自分は幸せだ」と思える社会の姿と、そうした社会を目指す政策、およびその政策を実行するための戦略と新しい社会のしくみを明快に示す。

感想・レビュー・書評

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  • 「バカにできない精神論」
    『成熟日本への進路』読み終わり[1月9冊目]

    お勧めいただいた本。

    日本に競争力がないのは、

    産業構造をシフトさせられないから。

    その理由は、

    チャレンジが失敗した時の恐れだと考えてる筆者は、

    最低限の所得を保障することで、

    新分野へのチャレンジも、起業も積極的になるのではないかという。

    色々思うところはあるけど、とりあえず。


    最後は精神論になるのは仕方ない。

    再チャレンジのために、

    「給料ゼロでも、生活できるようにお金あげます!」と言われても、

    再チャレンジの意思がなくてはただの"ヒモ"量産機になり下がる。

    それに、企業の重役さんとか、もしいまの生活水準が高かったら、

    その生活を投げうってまで挑戦したいという気持ちが出てくるかはわからない。

    本当、最後は、自らの信念と、名誉欲に賭けるしかない。

    精神論とか言われてバカにされるけど、

    社会保障見たいな物はいろんな面からみられる分、

    特定の面から見てほしかったら、精神論しかない。

  • 戦略とは、その当事者・対象によってレベル感が異なるが、日本の国家戦略はかなりの高次のものだろう。

    また、課題先進国ゆえ、ベンチマークも少なく、難易度が高い。
    色々なところで、見知った内容が多いが、実現されているものは多くないと思う。

    こういう提言を以下に実行するかが、本当に難しいのだと感じる。

    多くの本が、思い込みで問題を定義するなか、何をもって成熟国家と判定するか、
    それは本当なのかから問い直すあたりに、さすがと思わされる。

  • 著者は戦略系コンサルタント。
    日本は成長段階から成熟した社会へとなった、という事実から「国民の誰もが医・食・住を保障される国をめざす」というビジョンを掲げ、その実現のための政策を具体的に提示した本。成長論から分配論へ、高福祉高負担への社会構想を提示している。

    著者のデータと数字を元に非常に論理的かつクリアに議論を進めていく様はさすがコンサルだな、と思った。

    ビジョンの実現のための具体的な方法はまず経済政策を成長論から分配論へ換えるというもの。
    無駄な公共事業の削減と増税(消費税、金融資産課税、相続税のアップ)を原資にした手厚い社会保障を国民全員に提供すること。
    そして産業構造のシフト(医療・介護といった内需型の産業と高付加価値型の輸出産業の育成をしていくこと)をすすめ、規制改革(雇用と解雇の自由度の高い柔軟な労働市場の実現など)を行い経済の生産性を高める。教育への投資を拡大していくこと。


    ビジョンや政策に特に目新たらしさはないんだけど、社会保障と市場メカニズムの両立をめざす「高福祉だからこそ自由経済」という考えには大いに賛成だ。企業の自由度を上げて効率と生産性を高め経済のパイを大きくし、それを元手に手厚い社会保障を継続的に支える。非常にわかりやすいクリアな議論だ。


    ただ、このビジョンの実現のためのしくみの改革=行政改革は一筋縄にはいかないと思う。これは官僚と闘うということだし。著者は本の中で改革のポイントは官僚の人事権を内閣が把握することと、特別会計を透明化・解消することを挙げている。でも官僚もバカじゃないからそこを攻めてくるのはわかっているんじゃないだろうか。それに、行財政改革をやろうとする意思と気概と頭のよさをもった政治家はいまの日本にいるのかと、考えてしまう。うーん。

  • 成熟フェーズに入った社会においては強引に経済成長を促進するために公共事業を繰り出すのは老人に霜降りステーキを無理やり食べさせるようなもの。いまさら背が伸びたり筋肉がついたりはしない。1990年代後半から明らかにGDPはゼロ成長。成熟化フェーズに入ったといってよい。一人あたりGDPについては1995年、日本が先進国の中でダントツのトップであったのが1995年以降まったく振るわず、現在は米独英仏すべてに抜かれてしまった。麻生内閣が行った75兆円という大判振る舞いによって日本が経済成長路線に乗れたかというと今も後遺症の真っ只中。結局は経済成長を目的にした政策を実行しても産業構造のバランスを崩し財政赤字ばかりを積み上げるだけであった。最大の失敗は、経済成長を促進する役割を果たしてきた土木建設業が経済を支援する機能を喪失したにもかかわらず90年代以降も経済政策の中での主役の座を降りなかったことである。コンクリートからヒトへはその意味で完全に正しい。但し、効果のない経済政策をとるくらいであれば、成長戦略はいらないとした方がまだましである。これからは成熟化社会を認識したうえで、外貨を稼ぐ国際競争力をもつ高付加価値型輸出産業の育成することが肝要である。外貨を稼げる産業としてはハイテク型環境関連が本命である。他方、成熟化社会の主力産業となりうる内需産業として医療介護産業も育成する。内需型産業は輸出産業にくらべ需要が安定しており、大量の雇用を創出する。平成2年から始まった日本の好景気は企業の収益は好調であっても失業者を減少させていない。企業は無駄を省くことによって競争力を高めたが、省かれた無駄とは実は労働者である。ところで、自分は幸せであると回答した人の割合が世界で最も高いデンマークは手厚い社会保障と市場メカニズムの効率を上手く両立させることで高いパフォーマンスを実現させている。高福祉だからこそ自由経済を実現している。日本はデンマークから目指す政策、そして政策を実行するための戦略と新しい社会のしくみを模索していくべきである。終章では政策断行のため、まず乗り越えなければならない官僚機構改革について述べている。自分たちのやりたいことに対する凄まじい実行力と執着心にはただただ震えあがるばかりである。大政翼賛体制で各メディアをプロパガンダ機関化し、都合の悪い言論者や政治家に対しては封殺・静粛することさえ辞さない。何があっても自分たちの無謬性を信じ、障害を排除する。レクチャー、リーク、サボタージュといったやり口で大臣まで自分たちの意向に沿った方向性でしか仕事をさせない。データを独占し、メディアを掌握し、国会の立法権すら骨抜きにして自らの思惑のままに政策を決定していく官僚。著者は、人事権の掌握、特別会計の解消と、官僚機構改革のための2つのポイントをあげている。残念ながら、民主党はいずれも全くできなかった。はたしてこの国はこれからどうなっていくのであろう。

  • そこそこ厚い本ですが、サラリと読みやすさがあります。成長するとこで成り立つ社会ではなくなったとし、成熟した中で日本人がより良く暮らす提案書です。
    一番ためになったのは、官僚に対する記述です。官僚の粘り強さや賢さ、どのように国民が犠牲になったのか、特別会計の不透明さは読む価値あります。
    官僚がいる限り、誰が政治をやっても同じということだなー。

  • 流石の名著。内容、理論構成全てが勉強になります。

    Think!等で良く見かける戦略コンサルタントの波頭亮さんの本。
    Twitterでは結構前からフォローさせていただいていたが、本はかなり積読状態になっていた。(結果、後悔中)
    ちなみに、アイコンも背表紙の写真もモノクロで手を組んで振り向いているような写真ですが、僕の中で「コンサルタント」という呼称の第一想起がこの姿です。

    現在日本に対する社会論で、かなり広範囲を扱っているが、基本的には「現在の各社会システムは経済成長を前提にしてるけれど、もう成熟期に入るから合理性を失っているので、改めてビジョンからしくみまで作り直そう」といった内容と理解しました。

    成長期が終わった事を前提にしながら、現在の経済政策は成長期と成熟期の丁度潮目にあたり、その為個別の施策どうしがぶつかったり、打ち消しあったりしている事を丁寧に説明。
    例えば、以前のような経済効率改善効果や乗数効果が見込めない公共事業であれば、直接給付の方が目的に対して合理的では?といった形で、現在のしくみが出来るに至った背景と何故合わないのかをファクトを元に説明しています。

    一番凄いと思ったのは、反証を視野に入れながらの説明の丁寧さと、分かりやすさの両立。大体どんな本にも、「ここは突っ込まれたくないから飛ばし気味だなー」と感じる部分が一読目からあるものですが、この本はそれを感じる箇所はありませんでした。

    難しい事を簡単に伝える、というのはこういう事なのかと思わされる一冊です。

  • 日本は成長フェーズが終わり、成熟フェーズに入った。だから、経済成長を求めるのではなく、「国民全員に医・食・住を保障する」という分配論を国のビジョンに設定する。そのために、産業構造の変化から官僚組織の構造改革までこの本では提言しています。

    やり方の方法論は、私自身ももっと考えたいと思いますが、著者が提唱する国のビジョンや「成長フェーズが終わり、成熟フェーズに入った」という多大なデータを元にした主張は唸るものがありました。

    そして、今この国を変えるのは、誰でもない国民一人一人の意識であるというまとめもたまらなく好きです(笑)

    もっと多くの人に読んでほしい本です。

  • 至極まっとうで、バランスの取れた主張だと思う。著者が目論んだように、総括的な日本社会の構想も分かりやすく示されている。ただし、そのぶんだけ新書というスペースの中では個々の問題の分析や論証は少し甘くなっていると感じる。最も興味深く読んだのは、あとがきにある、著者の社会論が数年前から変化してきたというその内容であった。

  • 政治の本のレビューははっきり言ってかなり勇気がいる。自分より知識のある人たちが喧々諤々してる中で意見を表明すれば、たちまち袋叩きにあるリスクが常があるからだ。

    それでもこの本については一筆書きたいと感じる。それは、この本は強者による弱者の為の本だからだと思う。

    (書きかけ)

  • コンサルタント波頭亮氏が、日本の今、そしてこれからについて
    「成熟」という概念を軸に、膨大なデータを論拠にして
    自身のビジョンと戦略を明快に語っている。

    1章で「国民の誰もが医食住を保障される国」というビジョンを示し、
    2章ではその実現策を語る。
    3章で、その遂行のための仕組みの改革プロセスが述べられる。

    ファクトベースで、そうだったのか!と思わされることがとても多い。
    特にほかのOECD諸国との比較でみると分かる
    経済成長率や1人当たりGDPの停滞・衰退への転落は如実であり、
    これでもかとばかりに「成長神話」を問いただす。

    一方で、事実だからこそ、「これはどうしようもない」と思ってしまう
    ことも多い。
    たとえばp.127で大量に余ることになる工業労働者を介護医療分野に
    吸収していく、という政策が語られる。
    たしかに数値の上ではそうだと思うのだが、現実に工業労働に
    従事していた人が介護医療分野に移っていけるものなのだろうか?
    日本は大胆なキャリア転換を不可避なものとして受け入れることが
    できる文化・メンタリティの育成をほとんどしてきているとは思えず、
    このような転換は極めて難しいと思われる。
    ゆえに、失業者は出る、生活保護はもらう、でも人手不足の産業もたくさん、
    という矛盾状況は、相当な思い切った・かつ粘りっこい政策を
    実施し続けねば困難であろう。

    また、官僚制の強力さと利権を守る力のバカでかさについて
    大変わかりやすく説明してくれており勉強になったのだが、
    その改革についても「特別予算をなくす」「メディアのジャーナリズム魂に期待」
    というのは、あまり実行性がないことのように思われる。
    それができていれば、今のような状況には至らない
    (卵が先か鶏が先かになってしまうような話だが)。

    たとえば私の意見としては、新卒で入庁する官僚たちを全員
    中堅~大手企業経営者の「門下生」にでもすればよいと思う。
    心や思考がメリトクラシーに染まっていない段階で一流の
    ビジネスパーソン、経営者のリアルに触れることができれば、
    きっと日本を良くするために心から業務にまい進してくれる人の
    割合は飛躍的に高まるだろう。
    「今すでに年を食って心が染まった人々」に何か期待するのは
    きわめて非効率でリアリティがない。
    税金をかけてお金を取ることはできるが、そこの志に期待するのは
    おそらく無駄が大きい。

    と、いろいろ書いたが、本書が日本のビジョンに関して
    優れた議論のベースを提供してくれていることは間違いない。
    我々は波頭氏の存在を力強く思う一方で、本当に国の行く末に
    責任を持つべき立場の人々に、波頭氏のような力強さと正確さを
    併せ持った議論のできる人間がいないように感じられることに
    不安を覚えずにはいられない。

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著者プロフィール

経営コンサルタント、(株)XEED代表

「2013年 『経営戦略論入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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