- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480065797
感想・レビュー・書評
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著者は、古事記と日本書紀を「記紀神話」と一括し、両者をともに律令国家を支えるために編纂されたとする通説を批判し、古事記の「語り」に滅びゆく者へのレクイエムを聴きとろうとしています。
その際に著者がまず注目しているのが「出雲神話」にかんする叙述です。大和政権の正統性をあきらかにする意図で書かれた日本書紀には、古事記に含まれている出雲にかんする記事の多くが存在していないことを著者は指摘します。このことは、天皇家の歴史を叙述するためには出雲神話を無視してもさしつかえがないということを意味しており、それゆえ古事記における出雲神話に関する記事に、律令国家における正史として編纂された日本書紀とは異なる「語り」が響いていると論じられます。
古事記におけるポリフォニックな「語り」に焦点をあてた本で、スリリングなおもしろさがあります。ただし「あとがき」で、「わたしの古事記成立論に反論する人がいると、あなたの論理では古事記を国家に親和させるだけですよ、それでいいのですか、といささか挑発的に切り返すことにしている」ということばは、おそらくなかば冗談なのでしょうが、古事記のポリフォニーに「国譲り」に見られる日本民族の寛容性を見ようとする論者もいるくらいですから、あまりおもしろい冗談にも思えません。 -
学説論争的に真面目に記述されている点は、評価できるが、新書なのだから大胆に自説を物語風に展開しても良かったのではと読後に感じた。
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おもしろい