伊勢神宮の謎を解く アマテラスと天皇の「発明」 (ちくま新書 895)
- 筑摩書房 (2011年3月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480065995
作品紹介・あらすじ
日本全国の神社の筆頭に君臨する伊勢神宮。しかし、その成立の背景には、さまざまの「謎」がつきまとう。伊勢神宮の誕生は、はたしていつだったのか。大和の王権がなぜ伊勢に最高神をまつるのか。当初そこにまつられた国家神とは何か。皇祖アマテラスはなぜ「発明」される必要があったのか。そして、心の御柱と神鏡という二つの御神体が共存するわけとは…本書では、こうした難問を、列島における神話と神社誕生の根源にまでさかのぼり、あざやかに解き明かす。
感想・レビュー・書評
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工学博士である建築家による、伊勢神宮の謎解き本。
神宮の成立と皇祖神・アマテラスの誕生に焦点を絞り、日本列島における信仰の根源、神話の統合と天皇家の起源を遡ることで、統一国家の形成と存続のための装置としての役割を負った、伊勢神宮の姿が浮かび上がる。
前半の、古来の信仰対象についての分析はやや難しいが、後半に展開されるスピーディな推理はスリリングで、知的好奇心を擽られる。 -
伊勢旅行に先駆けて
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(01)
標題は伊勢神宮が主題,アマテラスが副題とされているが,その逆の構成をもっているようにも読める.
伊勢神宮のかたちや位置にも本書に触れられていないいくつかの謎があるように思われるが,心の御柱という中心に集中するのが本書の論拠であった.柱からタカミムスヒが類推され,伊勢神宮ではタカミムスヒからアマテラスへの交替(*02)があり,その時期や事情が考察されている.
(02)
天武期に交替が必要とされたあたりの事情については,異論も特になく呑み込める.記紀テキストの成立や「都」という方法についても,律令の導入と受容といった制度とからめて整理されており,古代のこの時期の概略を把握するは適している. -
<目次>
序章 神々が名をもつ前は
第1章 自然の神から王権の神へ
第2章 神社の二つの起源
第3章 『日本書紀』が語る伊勢神宮の誕生
第4章 伊勢神宮の誕生の謎を解く
終章 国家神から皇祖神へ
むすび 正殿床下は聖婚の場だった
<内容>
建築家による伊勢神宮の謎解き。建物の話はなくて、皇室を含めて伊勢神宮の当初の神はタカミムスビで、天武天皇がヒルメからアマテラス神に替えたという話。
多少騙されたが、話は筋が通っている。ややまだるっこしい。 -
アマテラスが、皇祖神として「発明」され、伊勢神宮が、再スタートしたのだと説くもの。いや〜、面白かったです。
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天皇制と律令制は原理的に矛盾するが、それを棚上げし、それぞれの正統性を保証するために、古事記と日本書紀は同時代に成立し、それぞれが別個の視点とスタイルで書かれたんだって。
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伊勢神宮の成り立ちや背景を考察した本。
伊勢神宮はアマテラスを祭る日本最高の神社として有名ですが、その歴史的背景には天皇家の成り立ちと覆いかぶさる。皇祖神として、日本をまとめるため、神の血統としての天皇家の権威を高めるために存在するというところでしょうか。
アマテラスと並ぶタカビムスヒの太陽神との関係や壬申の乱、設立当時の大陸と日本の関係など興味深く読めました。
純粋に参拝できれと思います。神社のありようや存在意義は時代時代によって違うと思いますから。 -
最初は少々だるいのだけど、後半はぐいぐい惹き付けられる。なぜ伊勢なのか、何故外来神のタカミムスヒを祭っていた伊勢がアマテラスを祭るようになったのか、なぜイザナギ・イザナミという親がありながら、アマテラスが皇祖になったのか(親があるならその親が皇祖のはず)、そして皇祖神としてのアマテラスがなぜ伊勢にまつられているのか、なぜ一度途絶えた斎宮が天武・持統で再開されるのか、古事記・日本書紀の記載になぜ齟齬があるのか、平易な文で丁寧に検証しながら仮説を展開していく。すっ飛んでてもう少し説明がほしいところもあるが読み物としても面白い。天智、壬申の乱、天武・持統の時代に興味があるひとにもオススメ。天智・天武が同父母兄弟という記載に以前から唱えられていた異論に関連もある。明治維新の廃仏毀釈に通じるところも。神も仏も政治に利用してきた人間のたくましさよ。