一億総うつ社会 (ちくま新書 896)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066008

作品紹介・あらすじ

うつが激増している。とりわけ「新型うつ」と呼ばれる、従来とは異なるタイプの患者の増加が、社会現象にまでなりつつある。その背景には、診断マニュアルの改訂による「うつ」概念の拡大や、投与しやすい新しい抗うつ薬の登場がある。同時に、自分の病気を安易に他人のせいにしがちな新型うつ患者の増加現象の深層には、過剰な自己愛と、それを許す社会の変容という問題が潜んでいることも見逃せない。誰もがうつになりうる現代社会の病理を解明し、その処方箋を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 他責的うつの原因となっているものを、薬と判定基準の緩和、社会の変化の両面からえがいて、問題点と改善点をまとめてある。

    頑張ればできるという幻想→現実は出来ない→自分のせいにして傷つきたくない→他責という流れ。
    子どもも親も企業も国も、社会自体が高すぎる理想を掲げて、ミスが許されない体制を築いて、疲弊して閉塞していくというのはおおいにあると思う。
    その過程において、自分への愛と、他社への愛を合わせた「リビドーの総量」を論じた、フロイトの考えを交えながらの解説は分かりやすかった。

    結局、自分も他人もバランスよく愛して、目標を掲げて努力はし続けるけど、適度に妥協したり先送りにしていくのも大切なんだなと。

  • セロトニンが大事。これが出てないから落ち込む。
    悲哀とうつの境界線がむずい。
    抗うつざいを出したがる医者。

  • 新型うつが増加しているという。従来のうつは自分を責めて(自責)うつ状態になっていくのに対して、新型うつは他者を責めて(他責)いく傾向にある。自分のこうなりたいというイメージと現実の自分のギャップに悩んでいるからであろう。子供のころから、将来は無限の可能性がるという風船を膨らませられ、自分探しを素晴らしいことだと賞賛され、自己愛が強く自分のなりたいものになることをあきらめきれなく、それで他者にその責任を求める人が多くなった。それに対する処方箋は、この風船を徐々ににしぼませることであるという。まずは親がこの構造に気づくことが第一である。そして日本の社会が現在衰退期にさしかかっていることを認識し受け入れろ。

  • うつについて医者の立場から綴った一冊。

    従来のうつも仮面うつも、最近言われている新型うつも、全て自己愛に基くものだという指摘は秀逸だった。
    そして、健康な人にも自己愛はあり、同一線上だという指摘も。

    新薬が増えるたびにその病気が増えるというのは、何もうつ病に限った話ではないみたいだが、目から鱗だった。

  • [ 内容 ]
    うつが激増している。
    とりわけ「新型うつ」と呼ばれる、従来とは異なるタイプの患者の増加が、社会現象にまでなりつつある。
    その背景には、診断マニュアルの改訂による「うつ」概念の拡大や、投与しやすい新しい抗うつ薬の登場がある。
    同時に、自分の病気を安易に他人のせいにしがちな新型うつ患者の増加現象の深層には、過剰な自己愛と、それを許す社会の変容という問題が潜んでいることも見逃せない。
    誰もがうつになりうる現代社会の病理を解明し、その処方箋を提示する。

    [ 目次 ]
    はじめに―一億総うつ社会の到来
    第1章 新型うつとは何か―従来型うつとの違い
    第2章 診断と薬がうつをつくり出す
    第3章 他人のせいにしたがるという病理
    第4章 人間はみな自己愛が強い
    第5章 なぜ自己愛の強い人が増えているのか
    第6章 一億総うつ社会への処方箋

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 難しい説明を避けようとしてるせいか、かえって謎が深まることもあった。

  • 現代病の一種として増加の一方である「うつ」であるが、いったいその境界線、診断の基準はどこにあるのだろうか。
    実際、うつ症状であっても、ただの怠けと疑われそうである。
    自己愛や他責の度を超えるのは良くない。
    人気のあるSSRIという薬が処方される事が多いそうだが多用され過ぎても依存症になったりしないのか心配だ。
    ちょっとしたことがきっかけで誰にでも「うつ」になる可能性はある。
    ならないに越したことはないが、いざという時のために読んでおくのもよい。

  • 図書館で借りた。

    新型うつと自己愛について解説されている。

    うつの定義が非常にあいまいで、それが時代とともにどのように変わっていったか、が書かれていた。中でも薬が効けばうつ、という風潮もあるようなのに驚いた。

    自己愛が強く、あきらめられないから他人を責める、という言葉が載っていた。小さなときからお客様扱いされ、夢などをあきらめないことを煽る宣伝が溢れている現代がどのようなものかについて触れていた。

    この現状に対する対策の1つとして、「やればできる」を否定していたのは痛快だった。

  • うつの診断が増加した背景を、抗うつ薬の進化・自己愛・現代社会の変容から考察した内容。
    従来型うつと新型うつの違いを実例パターンで比較したあたりはよかったけど、薬の詳細とかはあんま興味もてなくて中盤以降は流し読み。。

  • 親になる同世代が増えてきたので、こんな、本も読んでみた。勉強になります。

    -----------

    新型うつは、他責的傾向が顕著に見られ、「こうありたい」という自己愛的イメージと「これだけでしかない」現実の自分のギャップを受け入れられず、諦められないから起こる。

    自己愛とはナルシズムのこと。

    普通の人々は、自己愛的イメージと現実の自分のギャップをすり合わせしなければ、この世で生きていくことはできない。


    ①努力して、現実の自分をできるだけ「なりたい自分」に近づける

    ②理想像を下げる

    「幼児性がいつまでも強く残り、母の乳房を求め続け、いい歳になってもそれが与えられないと、国、政治
    会社、学校に対しだだをこねる」人が増えた。

    二人目の母親になっている日本の男たち

    好きこそものの上手なれ

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著者プロフィール

1961年生まれ。大阪大学医学部卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。京都大学博士(人間・環境学)。専門は精神医学、精神分析。フランス政府給費留学生としてパリ第八大学でラカン派の精神分析を学びDEA(専門研究課程修了証書)取得。精神科医として臨床に携わりつつ、精神分析的視点から欲望の構造について研究。日生病院神経科医長、人間環境大学助教授を経て、現在、神戸親和女子大学教授。著書に『オレステス・コ
ンプレックス—青年の心の闇へ』『17歳のこころ—その闇と病理』(共にNHK出版)『分裂病の精神病理と治療7—経過と予後』(共著、星和書店)など、訳書に『フロイト&ラカン事典』(共訳、弘文堂)などがある。

「2005年 『攻撃と殺人の精神分析』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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