ルポ 餓死現場で生きる (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
4.03
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本棚登録 : 288
レビュー : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066039

作品紹介・あらすじ

飢餓に瀕して、骨と皮だけになった栄養失調の子供たち。外国の貧困地域の象徴としてメディアに描かれる彼らも、ただ死を待っているわけではなく、日々を生き延びている。お腹がふくれた状態でサッカーをしたり、化粧をしたりしているのだ。ストリートチルドレンや子供兵だって恋愛をするし、結婚をするし、子供を生む。「餓死現場」にも人間としての日常生活はある。世界各地のスラムで彼らと寝食を共にした著者が、その体験をもとに、見過ごされてきた現実を克明に綴る。

感想・レビュー・書評

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  •  石井光太の著作の中では、『絶対貧困』と同系列の一冊。つまり、『レンタルチャイルド』のようなワンテーマ・一国に絞った内容ではなく、彼が取材を重ねた最貧国各国の状況を、章ごとのテーマに沿って網羅的に紹介したものなのだ。
     ゆえに、彼の著書を初めて読む人にとっては『絶対貧困』と並んでオススメできる一冊。「光太ワールド」への入門書として好適であり、同時に世界の貧困状況の優れた概説書にもなっている。

     読み終えてみると、書名にいささかの違和感を覚える。この書名だと、餓死寸前で寝たきりの人々を著者が看取っていく内容のように思えてしまうから。
     実際にはそうではなく、餓死と隣り合わせの貧困状況の中でぎりぎりの生を生きる人々を活写した内容である。

     章立ては、以下のとおり。

    第1章 餓死現場での生き方
    第2章 児童労働の裏側
    第3章 無教養が生むもの、奪うもの
    第4章 児童結婚という性生活
    第5章 ストリートチルドレンの下克上
    第6章 子供兵が見ている世界
    第7章 なぜエイズは貧困国で広がるのか

     この章立てからもわかるとおり、貧困の悲惨さがいちばん如実に表れる子どもたち(そして女性たち)の生活にウエートを置いた内容になっている。

     最終章に、「世界は私たちが想像しているよりもはるかに複雑です」という一節がある。私が本書から抱いた感想も、その一言に集約される。
     私たちはとかく、自分の知らない世界を単純化し、善悪二元論にあてはめて捉えがちだ。「児童労働? 児童結婚? まあ、なんておぞましい! そんなことは絶対に許されるべきではありません」というふうに……。

     もちろん、児童労働も児童結婚もないほうがいいに決まっている。しかし、それは現実にあるのだし、それを「させる側」が一方的な悪であるともかぎらない。

     たとえば、著者は次のように言う。

    《地域によっては児童労働それ自体が貧困のセーフティーネットになっています。それを奪ってしまうことは、貧困家庭の命綱を断ってしまうことにもなりかねないのです。》

     また、ムンバイーの売春宿を取材した際に見た、売春組織が幼い売春婦たちに言語教育を施している例が紹介される。
     彼女たちは元ストリートチルドレンであり、多くは文盲である。そのため、客と円滑なコミュニケーションが取れるようにと、ヒンディー語を教えているのだった。

    《売春宿で働くある女の子がこう語っていたのが印象的でした。
    「ストリートチルドレンとして生きていたら、一生そのままだったと思う。けど、こうやって売春宿で働かせてもらえれば、言葉をちゃん理解できるようになれる。そうすればどこへでも行けるし、別の仕事だってやれる。何も知らずに路上でゴミを拾っているよりはずっと良かったと思っている」》

     ストリートチルドレンをさらってきて児童売春をさせる組織――それは、世間的な基準ではまごうかたなき極悪である。しかし、売春させられている当人たちにとっては必ずしも悪ではないのだ。よい悪いはべつにして、そのような現実がある。まさに、「世界は私たちが想像しているよりもはるかに複雑」なのである。

     石井光太の本がつねにそうであるように、彼は最貧国の現実を先進国的正義で裁断するような真似はしない。ただ虚心坦懐に、人々の生の営みを見つめるのだ。そのまなざしを通じて、読者にとっても「世界が変わって見える」好著。

  • 世界の飢餓について、貧しい国の現状について、ただ統計の数字ではなく実態をひとつづつ紹介するもの。
    普段私たちの目に入らない情報がたくさんわかりやすく書いてあります。
    飢餓であってもそれですぐ死に至るという話しではなく、それは彼ら、彼女らには日常で、その状況の中で生きなければならない。
    本書の中にNGOや政府の支援の行き違いについて記述されている部分もありましたが、それでもこうした現状を目の前にした時に、私たちはただかわいそうで終わらせるだけではなく、何かできることをする必要があるのではないか。と考えさせられる一冊でした。
    少しでも世界の貧困の問題に興味のある方にはお勧めします。

  • 石井氏のルポは、いつもいろいろと考えさせられるものがある。
    例えば児童労働の問題。批判するのは簡単だが、なぜ子どもたちはそこで働かなければならないのかということを考えていくと、「児童労働は”悪”」と単純に決めつけてしまうことの怖さが見えてくる。
    石井氏は批判はしない。ただ弱者の横に寄り添ってくれる優しさがある。

  • 久しぶりの石井さんの本。

    貧困についてやけど、その貧困を理由に生じる児童労働・教育・児童結婚と性・ストリートチルドレン・子供兵・エイズについて書かれている。

    それぞれ筆者が出会った人たちの個人のストーリーが紹介されるので、自分が思ってたそれぞれの問題が一概に言えないと痛感。

    とくに児童労働の話が印象的で、ハッとさせられた。
    児童労働と聞くと小さい子供たちが朝から晩まで長時間、低賃金で肉体労働させられて可哀想!と思ってたけど、実際はそうとも言えないなと。
    そこで働けなくなったら、本当に餓死しかない切羽詰まった環境。

    よくよく考えたら分かる事を気付かされた!

  • 2011-4-24

  • 知らないままに いる
    ことと
    知らなかった とは
    ずいぶん 違う

    知らないままに する
    ことと
    知ろうとする のは
    もっと 違う

    石井光太さんの
    「本」に惹かれるのは
    そういうことなのだろう

  • 15.nov.7

    最近読み漁っている石井光太氏の新書。
    絶対貧困の中で餓死や病死が起きるメカニズムや地域差などについて分かりやすく書いてある。
    タイトルからは「レンタルチャイルド」のようなノンフィクションルポ?のような印象を受けるが、そうではなく体系だてて分析・解説されている本だった。

  • 中学生向けくらいの本かな。
    しかし、どうなの?と思うのは、売春や児童労働、児童婚などについて、なにかと「先進国の人間がそれはよくないことだと言って批判するのがいいとは限らない」みたいな書き方が出てくること。確かに他に選択肢がなく、限られた中で彼らが選んだことかもしれないけど、先進国の人間は彼ら自身を非難しているのではなく、彼らにそれらの選択肢以外を用意してあげられない政治や経済を非難しているわけであって、統計の数字が彼らの現場を見ていないわけでもない。
    貧困、とくに国や地域、民族レベルの貧困、その原因や結果となる紛争は、子どもたちから未来を奪う。それはよくないことだというのは自明だと思う。

    「私たちの問題はたいがい問題を直す意志に欠けることではなく、直す方法を知らないことである。」(「資本主義が嫌いな人のための経済学」より)
    これに尽きる。

  • [2014.11]貧困の中で生きる人たちについて複数の視点からまとめられている。児童労働、教育、児童結婚、ストリートチルドレン、子ども兵、エイズといったそれぞれの現状とそれが起きている背景にある要因について、著者が現地で取材した具体的な内容を元に書かれている。
    1つの問題を解決しようと考えても、連鎖的に複数の社会的問題が絡み合っている貧困の現場。
    全ての問題を解決することは出来なくても、1人の孤児あるいは1つの事象と真摯に向き合っていけば、必ず道は開けると感じることが出来る力強いメッセージが込められている。
    世界の貧困、国際協力に興味があるけど、何をすれば良いか分からないと言っている人に超オススメ!

  • <内容>
    本書は実際に餓死が生じている海外の子どもたちの厳しい現状を報告している。先進国の視点から立てば「人権侵害」にあたる事例も、「子供達の生存のため」という視点に立てば必ずしも否定できないのが、なんとも言い難い(例、児童結婚←HIVを避けるためなど)

    <感想>
    しばしば善/悪の論点で書かれるルポ記事が多い中で、本書は中立的な観点から描かれている。それでいて最後に少しでも自体を前進させるために小さい一歩を踏み出すことの大切さを説いている。
    描写がやや厳しいところがあり、気分が悪くなるところもあるがこれが「餓死現場」を取り巻く環境そのものなのだろう。

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著者プロフィール

作家。
1977年東京都生まれ。大学卒業後にアジアの貧しい国々をめぐり、ドキュメンタリー『物乞う仏陀』(文春文庫)でデビュー。その後、海外の貧困から国内の災害や事件まで幅広い執筆活動を続けている。NHK「クローズアップ現代+」などにも出演。
著書に、児童書に『ぼくたちはなぜ、学校に行くのか。』『きみが世界を変えるなら』(共にポプラ社)、『みんなのチャンス』『幸せとまずしさの教室』(共に少年写真新聞社)、『おかえり、またあえたね』(東京書籍)がある。一般書として、「新潮文庫の100冊 2015」に選ばれた『絶対貧困』『遺体』(共に新潮文庫)、『原爆』(集英社)、『43回の殺意』(双葉社)など多数。

「2020年 『地球村の子どもたち 途上国から見たSDGs ③平和』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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