東大入試に学ぶロジカルライティング (ちくま新書 908)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066107

感想・レビュー・書評

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  • 東大と東大ローの入試問題の解説。
    ロジカルライティングに関しては、MECEとかピラミッドストラクチャーを解説したビジネス書で十分。
    あくまで入試の参考書。

    前半で価値観ではなく、構造を理解し記述せよとあったのに対し、後半のある問題で価値観ばりばりの謎解答があったのだけ気になったが、全体的には至極まっとうな参考書である。

  • 東大の国語入試問題を例に引き、まずはロジカルに「読む」ことがなければ「書く」ことはできないということで、「読む」題材が3つほど続きます。流石に東大の問題は良くできた問題で、引用された問題文の面白さにも惹きつけられました。このように考えながら読むということの重要性を想起しました。目次、各章ごとのまとめは参考になると思います。例えば「論理とは言い換えに過ぎない」「理解できない場合は先送りする」「芋づる式にして理解を助ける」など。「社会的背景から日常を読む」の中で思考パターンはマルクシストだが政治信条は保守という人物の紹介が出てきましたが、確かにそのようなことはありうるということを感じました。

  • 東大入試問題を事例に論理的に問題を解くことで、その論理を解き明かす書。
    実際に問題を解いてみると東大入試なのでもちろん答えを書くのは難しいが、プロセスを学ぶ場なので、文書の読み取り方が見える。
    それを経てタイトルにあるライティングができるということだろうが、
    書き方に注目して読む読者には肩すかしくらうだろう。

  • 数年前の受験の頃に買って全く手につけていなかった本をふと手にとって読んでみました。
    受験参考書みたいな内容か、ビジネス書のような内容かのどちらかだろうと手をつけていなかったわけですが、
    受験参考書のように小手先の受験テクニック指南というわけでもなく、
    ビジネス書のように社会人受けの良いツール言語を並べ立てたような本でもなく、
    正しい議論のあり方について日常言語で書ききっている点に著者の力量を感じます。

  • 東京大学および法科大学院の入試問題を題材に、文章の論理構造を把握し論述するための方法を学ぶことのできる本です。

    一般の読書人向けというよりも、受験参考書に近い内容の本だと感じました。ややテクニカルな側面についての解説がなされており、とりあげられている文章についての解説にも、予備校本的な臭みがあります。

    もうすこし一般的なロジカル・ライティングの本だと思って手に取ったので、やや期待外れに感じてしまいましたが、意欲的な高校生やロースクールの受験生にとっては、良書なのではないかと思います。

  • ・文章の要旨=「問題+解決」の内容を簡潔にまとめる
    ※大変深い内容だが、一読するぐらいではロジカルな文章力は身につかない。自ら書きつつ何度も精読する必要あり

  • 東大の入試問題を題材に、ロジカルな文章を書くとはどういうことか、丁寧に論じてくれる。入試問題だし、東大だし、さらにはロジカルだし、っていうことで、ややこしく感じるところはあった。スラスラ読み飛ばせる感じではない。それでは、そもそも丁寧に、とはいえないしね。一回読んだだけで本書の内容を咀嚼できた、とも思えない。でも、あれこれ刺激にはなったな。本書自体の論に加えて、入試問題として出てきた文章も、けっこう面白く、あれこれ考えさせられた。入試って、もう関係ないと思っていたけど、実はけっこう面白い問題もあるんだね。

  • 内容は決して簡単ではなく、高度。
    でも話の進め方が非常に論理的で「ん?」とつまるところがほとんどないから理解しやすい。
    本書自体が、本書の提言するロジカルライティングを体現したような本。

  • 【手法としての分析と総合】p26
    「分割して統治せよ」は政治の原理だけではない。「問題を分割して、自分の理解できる範囲の次元にまで下げる」という方法は、デカルト以来の原理だ。

    <社会的背景から日常を読む>
    ①社会的背景と日常を結びつける
    ②問題を隠蔽する心理構造に気付く
    ③事実と価値を峻別する
    Cf. 社会モデルの画定:マルクスかデュルケームか

    <難解な表現を仕分けする―論理的・抽象的表現の解読>
    ①論理とは言い換えに過ぎない
    ②理解できない場合は先送りする
    ③芋づる式にして理解を助ける
    Cf. 多木浩二『写真論集成』、大森荘蔵『流れとよどみ』「論理とは冗長である」

    <説得=対話の構造を作る―意見文の仕組みに習熟する>
    ①意見とは問題に対する解決である
    ②他者からのツッコミを予想して対話する
    ③根拠の3点セットを示して説得する(理由・説明・例示)

    <具体的なものがわかりやすいとは限らない―抽象化の意味>
    問題例:2007年東大法科大学院入試問題
    ①具体的な状況を抽象化する
    ②日常言語から離陸し、問題状況を明確化する
    ③条件整理をして、考える要素を決定する
    Cf. ▲メモ:森博嗣『人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか』

    <厳密な証明が論理の要―実用のための三段論法>
    問題例:阪本俊生『ポスト・プライバシー』
    ①「なぜ?」に答える3つの方法
    ②理由は、論理のチェーンを使って構成する
    Cf. 風が吹けば桶屋が儲かる
    ③議論の妥当性は三段論法に分解してから確かめる
    eg. 前提から結論までの「...ならば...である」のしりとりを示す

    <適切な例を出す―論と例の一致で説得力を>
    問題例:岩井克人『会社はこれからどうなるのか』「信任」と「契約」の違い
    ①概念を完全に理解して例示する
    例示の効用:a. 読者への訴求力大、b. 議論の有効性や射程の確認
    ②具体的状況から必要な条件を抽出する
    定義=具体的細部を捨象して、共通する本質だけを抜き出す
    ③概念と例示の一対一対応をつくる

    <有効な仮説で現状を分析せよ―パズル解きの価値>
    問題例:クレイトン・クリステン『イノベーションのジレンマ』「購買階層」の製品進化モデル、「価格プレミアム」
    ①概念を理解して現実に適用する
    ②現象のメカニズムを解明する
    ③データからモデルを作り、将来を予測する

    <明確な基準を立てて判断する―得失を自覚・評価する技術>
    問題例:東大ロースクール2005年入試問題
    ①判断基準自体を明確化する
    ②基準に照らして結果を評価する
    フェアネスにコミットする
    ③他者から批判しやすいオープンネスを実現する
    「どちらが正しいか?」と性急に問うより、何を重要な基準として捉えるかを自覚する

    <批判の妥当性を疑う―ロジカルな議論の穴を見つける>
    問題例:立岩真也『弱くある自由へ』Cf. ミルの「危害原理」、「朝日訴訟」、憲法の「プログラム規定説」、政治学者坂井直樹「憲法の役割は社会問題をつくりだすこと」
    ①相手の議論構造を見極め、やすやすと乗らない
    論理の言い換えだけでは、不十分+現実での妥当性を検証すべき
    ②相手の立場に反する事実を見つける
    ③事実を丹念に吟味して、前提の弱点を突く
    社会的合意のプロセス=具体的状況への判断を迫る→議論の末に実質が決まる

    <対立をスルーする方法―次元を上げて解決するための発想>
    問題例:東大ロースクール08入試問題
    イェーリング「権利の上に眠る者は保護に値しない」『権利のための闘争』:「権利」というものは、絶えずそれを行使していないと有名無実になってしまう。権利は積極的に主張する不断の努力によって守られる。
    ①両者の対立をきちんと性格づける
    ②仲裁者自身もコストを負担する構造にする
    Cf. 次元を下げた解決法:「ケーキの公平な切り分け方」
    仲裁する=不毛なゼロサムゲームを仲裁者も含めた三者の問題に変える
    ③問題の構成要素を変えて、解釈を探る

    <常識を覆す思考―逆説の使い方>
    問題例
    太郎の解釈「法曹は社会の医者」↔花子の解釈「法曹は社会の癌」
    ⇒「紛争を広げるのは大切な仕事」(隠れた問題を顕在化させる→アジェンダ設定→公開と討議→社会的統合の一契機→(結論)隠されていた矛盾を掘り起こし、紛争として顕在化させることで問題として認識させ、そこに法的対話という解決の公共的回路を与える。
    ①定義に戻って根本的に考える
    ②対比を作って敷衍し反常識的な結論につなげる
    ③問題化することでかえって解決につながる

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著者プロフィール

吉岡 友治(よしおか・ゆうじ):1954年宮城県仙台市生まれ。東京大学文学部社会学科卒、シカゴ大学人文学科修士課程修了、比較文学・演劇理論専攻。代々木ゼミナール講師を経て、現在、インターネット講座「VOCABOW 小論術」校長。ロースクール・MBA志望者などを対象に文章、論理の指導を行うほか、企業でもライティング指導を行っている。著書に『東大入試に学ぶロジカルライティング』(ちくま新書)、『だまされない〈議論力〉』(講談社現代新書)、『いい文章には型がある』(PHP新書)、『その言葉だと何も言っていないのと同じです!』(日本実業出版社)『「眼力」をつける読書術』(東洋経済新報社)など多数。著者HPhttp://www.vocabow.com/

「2021年 『ヴィジュアルを読みとく技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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