法然入門 (ちくま新書 918)

著者 :
  • 筑摩書房
3.11
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本棚登録 : 85
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066220

作品紹介・あらすじ

この世を生きる意味はどこにあるのか。私たちは、人生の「意味」を求め「物語」を必要とする存在である。とはいえ現実は、不条理と不安に満ちた人生の大海を漂いながら、答えのないままに、そのときどきの欲望に引きずられて生きてゆくしかない私。法然は、そうした自己愛、愚かさ、無知にこそ人間の本質があると認め、まさに「極悪最下」の者こそ救われる物語を用意した。悪人が善人になる必要はない、ただ生まれつきのままに、ありのままに念仏せよ-日本史上最大の衝撃を仏教界にもたらした易にして奥深い思想を、やわらかに解きほぐす入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 「専修念仏」の立場を説いた法然の思想について、著者がみずからの解釈を提示している本です。

    著者は、親鸞にくらべて徹底性を欠くと評価されることのある法然のことばを検討し、「対機説法」という観点からその解釈を試みています。また、武内義範や田村圓澄らの解釈を参照しつつ、法然が世俗的倫理とは異なる立場における倫理を示していたと主張しています。著者は、念仏を唱えることにおいて阿弥陀仏が私のなかで働くことになると考えており、そのうえで「念仏に出逢う」ということが、みずからの悪業に気づき懺悔をおこなうことによって開始されると述べます。「出家」とは、そうした念仏と出逢い阿弥陀仏の悲願がみずからにおいて実現されることの「シンボル」であると主張しています。

    宗教への関心が希薄になってしまった現代に生きる人びとにとって専修念仏の教えがもつ意味をわかりやすく解説することが、本書のねらいだといってよいでしょう。そうした著者のねらいは十分に果たされていると考えますが、その一方で、法然の思想を彼の生きた時代のなかで解釈するという立場からは、やや逸脱している叙述があるのではないかという印象もいなめないように思います。

  • 筆者の薄っぺらな自己主張がなければ良書だったのに…

  • 親鸞よりも史料が少ないから、いろいろと書きづらいんだろうね。
    法然の言語の一貫性のなさあたりの記述は、「いやいやそれちょっと無理があるのでは?」という解釈が多かった。

  • [ 内容 ]
    この世を生きる意味はどこにあるのか。
    私たちは、人生の「意味」を求め「物語」を必要とする存在である。
    とはいえ現実は、不条理と不安に満ちた人生の大海を漂いながら、答えのないままに、そのときどきの欲望に引きずられて生きてゆくしかない私。
    法然は、そうした自己愛、愚かさ、無知にこそ人間の本質があると認め、まさに「極悪最下」の者こそ救われる物語を用意した。
    悪人が善人になる必要はない、ただ生まれつきのままに、ありのままに念仏せよ―日本史上最大の衝撃を仏教界にもたらした易にして奥深い思想を、やわらかに解きほぐす入門書。

    [ 目次 ]
    第1章 「念仏為先」―すべては念仏のために
    第2章 「念仏」を選ぶ―法然の生きた時代
    第3章 「極悪最下の人のために極善最上の法を説く」―念仏の「力」
    第4章 「おおらかさ」の秘密―専修念仏をどう実践するか
    第5章 現世を生きるための「念仏」とは
    補論 「伝記」から見た法然

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 法然和尚のなりたち、教えの由来とか、興味深い。

  •  法然の説く浄土宗の入門書であるが、宗教そのものにあまり関わる機会がなかった人向けに書かれている。阿満氏は冒頭で、「あの世」の実在を信じなくて久しい現代の文明社会においてなお、なぜ宗教が必要かを述べる。
     曰く、人は物事に「意味」づけを求めるものであり、それは親しい人の死や自らの不治の病という「納得」が容易でない不幸に対しても同様である。そこで、生と死、幸福と不幸といった人間の営みに「納得」を与える「物語」が求められ、宗教がこれにあたっているのだという。この考え方には同意できる。
     浄土宗の与える「物語」のうち私なりに「納得」感が得られたのは、「死後は平等」という浄土の姿と、平等であらんが故に成仏の条件を「為心念仏」という極めて容易な行為に求めた合理性である。
     「念仏さえ唱えれば成仏」という教えは、浄土宗が爆発的に広まる一因となったが、支持を得んがための大衆化(ポピュリズム)とも見られかねない。しかし、念仏をもって死後の平等が約束されることにより、末期としか思えない現世であっても、前を向いて歩いていこうという気持ちを呼び起こす。来世の「物語」が現世の人に生きる「意味」を与えることこそが、法然の教えの魅力であろうと思う。

  • 法然の思想の「謎」を解き明かそうとする野心的な本。だから「入門」ではないかな……。おもしろいのですが。

  • 本人の考えを文字で残さなかった法然には
    多くのひとの法然への思いのこもったものが残されています。
    法然を慕う人との手紙のやり取り
    その思想を受け継いでいった親鸞の言葉。
    ひたむきに念仏のみを薦めた革新家の生き様を探る旅は
    永遠の楽しい旅のように感じられました。

  • (2011/9/16読了)

  • 末世の時代に日本に今までの仏教からすると革命的な教えを広めた法然の行動を解りやすく説いた本。

    法然を善き人と仰ぐ親鸞との関係もわかり易い。

    後世において、浄土宗と浄土真宗と分かれてしまったが、法然・親鸞の説いた浄土の教えが一本であることが理解できる。

    文章嫌いであった法然にかかる真実は後世の人間にとっては、あくまでも憶測の域を脱せないが、阿満利麿氏の仮説もこれは一つの考え方であり、理解できるものである。

  • 11/08/15。

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著者プロフィール

阿満利麿(あま・としまろ):1939年生まれ。明治学院大学名誉教授、同人誌「連続無窮」主宰。著書に『法然の衝撃』『親鸞・普遍への道』『歎異抄』『親鸞からの手紙』『柳宗悦』『『歎異抄』講義』(以上、ちくま学芸文庫)、『無宗教からの『歎異抄』読解』『人はなぜ宗教を必要とするのか』(以上、ちくま新書)、『日本精神史』『『往生要集』入門』『『教行信証』入門』(筑摩書房)、『選択本願念仏集』(角川ソフィア文庫)などがある。

「2023年 『唯信鈔文意』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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